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変異人類の冒険者  作者: らる鳥


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 回収者、テレポーテーションの使い手に連れ戻された私達は、基地での待機を指示される。

 どうやら四則やヤタガラスも、依頼から呼び戻されて基地で待機をしているという。

 だが……、この状況を作る事が、恐らくマシンナーズの狙いだった。


 いや、もちろん私達や、四則やヤタガラスといったチームを、マシンナーズが個別に認識してる訳じゃない。

 ただ今の状況の裏にサイキックがいる可能性を考えて、暫く大人しくしろとの圧を籠めて、海上に切り札を浮かべて見せているのだろう。

 その事は、当然ながら基地の責任者、アキラ司令だってわかってる筈。

 しかしそれでも、マシンナーズの思惑通りに派遣していた冒険者達を手元に引き戻しているのは、仮に脅しであってもコミュニティが危険に晒される可能性があるなら、最優先事項は防衛だから。


 海上に浮かんだ超大型の機械兵、マシンナーズの船が砲撃能力を備えていたら?

 その射程距離は砲撃を行っていた機械兵を上回り、海上からコミュニティへの直接攻撃が可能かもしれなかった。

 コミュニティの正確な位置だって、あんなものを持ち出してきた以上、既に特定されているかもしれない。

 少なくともサイキックの活動範囲から、おおよその位置の推測くらいは付いているだろう。


 もしかしたらの可能性だけで、サイキックは身動きを封じられた。

 これがエイリアンであったなら、可能性を恐れる事はなかった筈だ。

 そもそも、脅しの意味すら理解しなかったかもしれない。

 けれどもサイキックは相手の行動の意味を考え、最悪のケースを想像してしまう知性を持つ。


 マシンナーズが船を持っているだろうとの噂は、実はされていたそうだ。

 サイキックとマシンナーズは密かな取引をしているが、それらの品が運ばれるルートを考えると、船を利用しているとしか思えなかったから。

 ただ今回現れた超大型の機械兵と、交易に使われていた船は恐らく別物である。

 流石にあれだけ大きな船が何度も近くの海上に現れていたら、もっと早くにその存在に気付いていた。


 一朝一夕で完成するような代物じゃないから、今回の為に作った訳じゃないだろう。

 すると普段は別の用途に用いられていた可能性が高い。

 いや、もちろん切り札として隠していたのかもしれないが、そんな事をするくらいなら地上で使える機械兵を増やした方が、戦力としては効率がいい筈。


 あの船が、超大型の機械兵が隠されずに使われていたなら、マシンナーズの活動範囲はかなり広いと予想される。

 サイキックがコミュニティ同士で交易や情報の共有を行っているように、マシンナーズも拠点間の交流があって、それに使われていると考えるのが自然か。

 いずれにしてもあれは、マシンナーズにとっても特別な、他の機械兵のように替えが利く代物ではないと思われた。

 何時までも脅しの為だけにあの場所には張り付けておかないだろうし、危険にだって晒したがらないだろう。


 こちらの動きを止めるには、効率的な一手であった事は間違いない。

 だがもう少し先まで考えると、マシンナーズにとって最良の、サイキックにとって最悪の一手ではなかったと私は感じる。

 私達にとって最悪だったのは、表立ってマシンナーズと戦いだした後に、あの船が現れる事だった。


 何度も繰り返しているけれど、サイキックは不測の事態に弱い種族だ。

 そしてあの船は、その不測を確実に起こせる札である。

 でもそれは一度きりで、私達はあの船の存在をもう知った。


 戦いの最中、選択肢のない状態で起きた不測の事態は、或いは致命的だったかもしれない。

 しかし今回は、脅しという形で不測の事態を突き付けられたから、私達には選択肢がある。

 マシンナーズの脅しに屈する事もできるし、歯向かう事もできるだろう。

 屈する方法も、怯えて引き籠っても良いし、マシンナーズやエイリアンには関わらず、ウッドを標的にしても良い。

 屈せず戦うなら、あの船を狙うか、マシンナーズの拠点を狙うか、結果の善し悪しを問わないなら選べる手段は幾つもあった。

 故に、不測を突かれた動揺は、もう直に静まるだろう。


 もし仮にあの船からコミュニティへの砲撃があっても、ESP能力者がそれを観測し、複数のPK能力者がサイコキネシスを合わせれば、砲弾を防ぐ事は恐らく可能だ。

 アキラ司令なら、もしかすると単独でも砲撃を防ぐかもしれない。

 今の段階なら、私達があの船に対して取れる手立ては幾らでもある。


「アキラ司令は、どういう判断を下すでしょうね」

 基地で出された食事、鹿肉のハンバーグとサラダ、それからライスとスープを食べながら、キサラギがそう口にした。


 さて、それは私にはわからない。

 私は色々と考える性質だが、それでも所詮は単なる冒険者。

 コミュニティの、或いは基地が有する手足の一つに過ぎなかった。

 アキラ司令ならばマシンナーズとの戦いを主張しそうだけれど、コミュニティの指導層との判断がまた食い違う可能性も大いにある。

 しかし一つだけ、ほぼ確実に言えるのは、どんな判断が下されるにせよ、また私達には厄介な依頼が申し付けられるだろうって事。


「何であれ、休める間にしっかり休んで、備えるさ」

 シャワーを借りて睡眠を取って、きちんと疲労を抜いておこう。

 手足の一つとして、己の役割を過不足なく果たせるように。

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