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 コミュニティから幾らか西に行った場所は、近畿と呼ばれた地方の中でも大きく栄えた地域だったらしく、巨大な廃墟や地下街が多く存在してる。

 地下に広いスペースがあるという事は、そういった場所で繁殖するグールも数が多く、コミュニティから西は、グリーン、イエローのエリアも狭かった。

 特に昔の人間達からも迷宮と呼ばれたという巨大な地下街は、入り組んでいる上にグール、及びよくわからない生き物も住み着いていて、大量の遺物が遺されていると目されるのに、攻略の目途が全く立たない難所だ。

 私も、何時かはこの巨大な地下街に挑んで、遺物を漁ってみたいとは思ってるけれど、もちろんそれは今じゃない。


 さて、そのように栄えた痕跡のある場所があるのだが、そこから真っ直ぐ西に進むと河川沿いを行く事となって、やがて海に出る。

 だが海に出ぬようにやや北西へと足を向け、河川を渡って進むと、先程の場所程ではないけれど、比較的だが栄えていたのだろう地域が西に向かって長く続く。

 口にして並べると少しややこしい地理情報だが、この辺り一帯がマシンナーズの勢力圏だった。

 ここから北に行けばエイリアンの勢力圏で、激しく戦闘が行われているのは二つの勢力圏の境界の辺り。


 つまり何が言いたいかというと、マシンナーズの勢力圏には以前に栄えていたのであろう場所が多く、グールの潜伏してそうな地下街がそこかしこにあるだろうって事だ。

 もちろんマシンナーズの勢力圏の奥深くはブラックエリア、未知の領域である為、それも予測に過ぎないのだけれど、上手くグールの群れを見付け出して利用できれば、サイキックの関与を疑われずに戦いを長引かせられるかもしれない。


 ……当たり前のようにブラックエリアに踏み込むって事に関しては、まぁ、もう今更か。

 目であるキサラギを失えば、私は無事に帰れないし、私という足を失えば、キサラギも動けなくなってしまう。

 ブラックエリアはそういう場所で、私達は一蓮托生だ。

 最近はもう、ずっとそんな感じだった。



『ここに広場を囲む廃墟があって、機械兵の部隊が待機してます。昔の地図によると球場?という場所だそうです。……その近くの大型の、商業施設だったと思わしき廃墟の地下一階と地下二階に、かなりの数のグールが潜んでますね』

 私が足となって移動すれば、キサラギは目と耳を使って周囲の情報を収集してくれる。

 地下二階ともなると流石に目では見通せないが、彼女の耳はグールの独特の活動音を、地面の下からでも拾えるらしい。


 マシンナーズの勢力圏での活動は、考えていたよりも困難だ。

 想像した程に機械兵がうろついてる訳ではないんだけれど、ところどころに小型の目、監視カメラという機械が仕掛けられてる。

 それは人間の遺した本によると、遠く離れた場所を見張る為の機械だった。

 もちろん今、その機械を作り出して利用してるのはマシンナーズだが、恐らく機能に変わりはないだろう。


 キサラギの目ならその監視カメラに映る範囲外から、事前に見付け出す事は可能だけれど、何分対象が小さい為、発見には意識を割かねばならぬらしく、何時もよりも周囲の確認に時間が掛かる。

 状況把握に時間が掛かれば、当然ながら移動速度も遅くなった。


『都合がいいな。その廃墟を倒壊させてグールを地上に焙り出せば、物音の確認に来た機械兵とぶつけられる』

 その戦いに紛れて遠距離からサイコキネシスで機械兵を攻撃すれば、サイキックの関与を隠しつつマシンナーズの戦力を削る事ができる。

 戦いで生き残ったグールはそのままにしておけば、マシンナーズも自分達を襲った敵をそのままにはしておかないだろうから、討伐部隊を派遣して、前線に送る戦力が減るかもしれない。


 今回は、本当に都合よく機械兵の部隊とグールの群れが近い場所にいたが、別に遠くても構わなかった。

 地下のグールを地上に焙り出して行けば、勢力圏でのグールの活動が活発化していると考えて、マシンナーズも放置はできなくなるだろう。

 数多くのグールが地上を彷徨えば、前線への戦力の移動も邪魔される。

 マシンナーズが大規模にグールの排除を始めれば、戦いを引き延ばして時間を稼ぐって目的は達成だ。


 これも、相手の目を先に見付け出して避けられるからこそできる芸当だが、……正直に言えば、ここまでしてもある程度はサイキックの関与はマシンナーズに疑われると思う。

 極端な話をすると、マシンナーズから見れば理由のわからぬ不都合な出来事は、全て裏にサイキックがいると思われていてもおかしくない。

 サイキックの持つ超能力というのはそういう力だ。

 同類であるなら感じ取る事ができるが、その他の敵対種族からすれば何をされたのかもわからない。

 あの砲撃を行っていた機械への爆発だって、砲の暴発を装いはしたが、それでも幾らかは疑われている筈だ。

 尤も、仮に何もせずに動かなかったとしても、それはそれで不気味に思われたり、全く関係のない不都合をサイキックのせいだと思われるだろうから、関与の証拠さえ掴まれなければ、多少の疑いは誤差である。


 私はキサラギの目を借りて、遠距離から目的の廃墟の柱に意識を集中し、それを圧し折った。

 廃墟の地上部分を一部倒壊させれば、地下のグール達は危機感を覚え、地上に這い出て来るだろう。

 重要なのは、出入口を倒壊で埋めてしまわない事。

 グールの膂力ならば生き埋めとなっても瓦礫を押しのけて這い出ては来るだろうけれど、機械兵との遭遇には間に合わないかもしれないから。





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