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 空を見上げれば、私の目には見えないけれど、キサラギのテレパシーを通して飛行タイプのエイリアンの姿が共有される。

 その代わりといっては何だが、キサラギの身体を動かすのは私のサイコキネシスだ。


 今は、私達のチームが主となって飛行タイプのエイリアンを追っていた。

 キサラギのESP能力はやはり強力で、離れた飛行タイプのエイリアンや、周辺の状況が逐一共有されていく。

 そして彼女は、やはりサイコキネシスに身を委ねる事にとても慣れている。

 まるで、それが当たり前であるかのように、キサラギの身体には抵抗がない。


 エイリアンは、優雅に空を飛んでいる。

 まぁ、そうしてくれていないと困るんだけれど、同時に少し腹も立つ。

 異形のエイリアンの顔からは、その内心なんて読み取れないが、無駄に暢気に見えてしまうのは気のせいだろうか。


 私は別にエイリアンに深い恨みがある訳じゃないが、それでも何度も戦ってきたから、憎い相手だとくらいは思ってた。

 故にどうしてエイリアンなんかを守らなきゃいけないんだって気持ちは、そりゃあ少なからずある。

 恐らくそれは、私じゃなくても全てのサイキックが、エイリアンだけじゃなくて敵対種族に対して抱く憎しみだ。

 キサラギも、私と同程度には、エイリアンに対しての憎しみが言葉の裏には透けて見えた。

 けれどもそれは、決して異常な程じゃない。


『っ!! サイリさん、南西に機械兵が6体、北に向かって移動中です』

 なのにその報告をしてきたキサラギのテレパシーには、明確に強い憎しみの感情が籠っていた。

 機械兵というのは、マシンナーズが生み出す機械の兵士だ。

 マシンナーズの一種という訳じゃなくて、機械をAIという造られた知能が動かしてるんだとか。

 兵士と言ってもその形は人型に限らず、蜘蛛のような多足だったりとか、その種類は様々だった。

 ただどのような形をしていても、機械兵の多くは銃や、もっと大きな砲を備えている為、飛行タイプのエイリアンにとっても大きな脅威となるだろう。


 コミュニティからずっと西には、マシンナーズの拠点があるそうだけれど、恐らくそこから出てきた機械兵だ。

 シンが、マシンナーズの動きが活発になってると言ってたが、今、このタイミングで遭遇するなんて、本当に運がない。

 これがグールだったなら、空中のエイリアンを脅かせるのは、ほんの僅かな特殊タイプくらいだったのに。


 飛行タイプのエイリアンにとって脅威となる以上、機械兵は放置できない相手だ。

 しかし、今は私達が主となって追跡をしている最中である。

 機械兵を排除しても飛行タイプのエイリアンを見失ってしまっては、意味がなかった。


『基地に報告して、ヤタガラスか四則に対応要請を出して貰ってくれ。私達の役割は、今は飛行タイプの追跡だ』

 舌打ちの一つもしたい気持ちではあったけれど、私は努めて冷静に、キサラギのテレパシーにそう返す。

 彼女はどうやら、マシンナーズに対して恨みを抱いてる様子だったけれど、だからといって依頼を放棄して機械兵を壊しにはいけない。

 そんな事をすればコミュニティに大きな不利益を齎してしまう。


『……はい、基地に対応要請を出しました』

 テレパシーから伝わるキサラギの感情には、少しばかりの不満が混じっていたけれど、それでも彼女は私の言葉に従って、基地に対応の要請を出してくれた。

 まぁ、そうするしかない事は、キサラギだってわかっているのだろう。

 ESP能力に特化したキサラギは、単独じゃ機械兵とは戦えない。

 そもそも今のキサラギは、身体の自由を私に握られているから、たとえそうしたくても勝手に動けやしないのだし。


 もしも強固に機械兵との交戦を求めて来るようだったなら、彼女と組むのもここまでだったが、キサラギはちゃんと自分の恨みを抑えている。

 だったら、私はそれを問題にする心算はなかった。

 彼女が事情を口にするならともかく、そうでないなら私から関わっていく必要はないから。


 基地から指示が出たらしく、私達の後ろから付いて来ていたヤタガラスの三人が、ルートを外れて南西に向かう。

 マシンナーズと遭遇しても話し合いで戦いを回避できるケースもある為、もしかすると基地は戦いを避けようとする可能性もあったのだけれど、どうやら今は話し合いよりも戦いの方が、確実に脅威を排除できると考えたらしい。

 或いは、マシンナーズに今回の件を、エイリアンの情報を握られる可能性を消したかったのか。


 いずれにしてもヤタガラスなら、指揮官としてマシンナーズが混じってるならともかく、単なる機械兵のみで編成された部隊には、余程の事がない限りは遅れを取ったりしないだろう。

 キサラギも、機械兵がほぼ確実に排除されるとわかったからか、少し落ち着いた様子である。


『あの……、私……』

 テレパシーで、彼女が何やら伝えようとしてくるけれど、私は首を横に振り、飛行タイプのエイリアンがいる方角を指差す。

 今は、追跡に集中だ。

 その為に、機械兵の対処にはヤタガラスに行って貰ったのだから。

 もしも飛行タイプのエイリアンを見失ったりすれば、彼らに対してあまりにも不誠実すぎる。


 依頼の遂行の障害になるのは、別に機械兵ばかりじゃなかった。

 他の敵対種族がいるかもしれないし、何よりも、この先に多くうろついているエイリアンにも、見付かってはならない。

 話を聞きたくないって訳じゃないけれど、それは今回の依頼が終わってからでも構わないだろう。


 私達はそこから暫く無言で、……いや、元々喋ったりはしてなかったけれど、ただひたすらに飛行タイプのエイリアンの追跡に集中する。

 次に、テレパシーでキサラギからの言葉が届いたのは、ヤタガラスが機械兵の群れを殲滅したって報告だった。



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