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 テレポーテーションで現地に送られる前に、今回の依頼に参加する二つのチームについて聞かされた。

 一つはヤタガラスという名のチーム。

 なんでもそのヤタガラスというのは、昔の人間の神話に登場する脚が三本ある鳥の事で、彼らは自分達が三人組だから、その名をチームに借りて付けたという。


 ヤタガラスはベテランの冒険者のチームだから、私も彼らの事は少しばかり知っている。

 尤も知ってると言っても直接の面識はないし、当然ながら一緒に外での活動を行った事はないけれど。


 確か聞いた話によると、彼らは三人ともが、PK能力、EPS能力の双方を備えたサイキックで、そのどちらにも突出した力を持ってはいない。

 つまりアキラ司令のような、個人で強力なサイキックだから名が売れているという訳じゃなかった。

 では彼らが何を頼りにここまで生き残り、成果を出して名を売ったのかといえば、それはチームとしての連携である。

 三人のESP能力を繋ぎ合わせてネットワークを築き、死角を補い合い、三人のPK能力を完璧なタイミングで束ねる事で、非常に強い力を発揮させるという。


 余程に互いの相性が良くなければESP能力を繋ぎ合わせてネットワークを築き、そこにPK能力を同期させてタイミングを整えるなんて真似はできないが、ヤタガラスというチームが欠員を出さずに生き残って、尚且つ結果も出しているのは事実だ。

 冒険者として長く生き残るのが決して簡単ではない事は、私もよく知っているから、少なくともチームとしての実力は、疑う余地はない。


 もう一つは、昨日の夜、私達と飛行タイプのエイリアンの追跡を交代した、あの四人組のチームだった。

 彼らのチーム名は四則。

 四則とは、足し算、引き算、掛け算、割り算の、四つの計算法の全てを合わせてそう言うらしい。

 彼らの誰が足し算で、誰が引き算でっていうのはわからないけれど、四則ってチームの名前には聞き覚えがある。


 昨日の夜は気付かなかったが、名前を聞かされれば、あぁ、彼らがあの四則なのかって、ちょっと驚く位には売れた名前だ。

 思い返せば、昨日の夜に会った四人は確かに相当な実力者で、彼らがそうだと言われれば、納得できるだけの雰囲気は纏ってた。


 四則は一人は明らかに強力なESP能力者だったが、後の三人がどうなのかはわからない。

 男女比は、ヤタガラスが三人とも男のサイキックで、四則は二人が男、二人が女って組み合わせだ。

 三チームで合計九人か。

 冒険者としてはかなりの大所帯だし、即席の連携なんて望むべくもないだろう。


 実際、基地側としても派遣した冒険者が連携できるだなんて思ってないようで、昨日の夜から引き続き飛行タイプのエイリアンを追い続けてる四則は当然として、ヤタガラスも既にあちらへと派遣済みなんだそうだ。

 つまり打ち合わせはなしで、個々のチームは自分の力で、他のチームも同じ依頼を受けているという状況を活用しながら、飛行タイプのエイリアンを連中の勢力圏まで送り届けるって目標の達成を目指す事になる。


 まぁ会ったばかりの冒険者が多く集まって動いても目立つだけで利はないし、下手に連携をしようとしても譲り合ったり逆にぶつかったりするだけなので、バラバラに動いた方がマシというのは尤もかもしれない。

 他のチームを動かしたい時は、キサラギのテレパシーで基地に連絡を取って、そちらから指示を出して貰えば事は足りるし。

 問題はエイリアンへの恨みから暴走するチームがないかって点だけれど、……ヤタガラスも四則も、長く生き残った冒険者のチームで、チームの名前から想像できるメンバーの数に欠けもないし、特に心配はなさそうだった。

 いやむしろ、私とキサラギに対して、他のチームが不安を抱く可能性の方が高いか。


 名の売れた二つのベテランチームに混じる、名前も決めない臨時編成のチーム。

 どこに一番不安があるかって言えば、そりゃあ私とキサラギのところだろう。

 更に私の予想が正しければ、キサラギは過去に仲間を失った冒険者だ。

 その仲間を奪ったのがエイリアンでないとは、言い切れない。


 私は昨日の活動を共にしているから、彼女に対する不安はないが……、依頼の引継ぎという形で少しでも関わった四則はともかく、ヤタガラスに関しては私達を不安視する可能性はあると思う。

 尤も、不安視されたところで、その不安を拭ってやる方法はないし、私達にできるのはそれを煽らないように気を付けて行動するくらいなんだけれども。



 昨日に迎えに引き続き、テレポーテーションはシンが担当してくれるという。

 彼を挟むように私とキサラギが彼の肩に手を置く。

 向こうに転移した瞬間、万に一つ何かがあった時に、テレポーテーションの使い手であるシンを身体で庇って守る為に。


 次の瞬間、視界が切り替わって、私は砂の混じった風を顔に感じた。

 目の前にいるのは、昨日の夜にも会ったサイキックの四人組、四則。

 彼らがこの場の安全を、確保してくれていたらしい。


「サイリ、気を付けて行って来いよ」

 友の声に、私は一つ頷いて、その肩から手を離す。

 恐らく今は、ヤタガラスが主となって飛行タイプのエイリアンを追っているのだろう。

 昨日から動き続けている四則の消耗を、少しでも回復させる為に。


 なら情報共有を済ませたら、次は私達がそうするべきか。

 私達が昨日の夜、基地に戻って休めたのは、その間も四則が飛行タイプのエイリアンを追って動いてくれたお陰なのだから。




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