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 飛行タイプのエイリアンは、基本的には東へ向かいつつも、フラフラと左右に飛んでみたり、少し地表に近付いたり、上空で旋回したりしてる。

 その行動から察するに、あの飛行タイプはまだ、巣の候補地を探してる最中なのだろう。

 もしも帰還の途中だったら、真っ直ぐにそちらに向かって飛ぶだけで構わない筈だ。


 だとしたら、大きな巣は西側、或いは北側にある可能性が高いか。

 わざわざ巣を分けようとしている以上、新たな巣は、元の巣から離れた場所に築こうとするのが道理である。

 サイキックのコミュニティだって同じだ。

 仮にコミュニティの人口が十分に増えて、新たな拠点を開拓しようとなった時、元のコミュニティからはある程度の距離を取るだろう。


 もちろん新たな拠点を造る労力自体は、コミュニティから近い場所の方が少なくて済む。

 人員の派遣、資材の運搬、安全確保。

 その全てが、コミュニティに近ければ近い程、容易くなるから。


 ではどうして開拓の労力を増やしてでも、敢えて距離を離すのか。

 それは元のコミュニティと活動の範囲が被る事を避け、サイキック全体の勢力圏を広げる為だ。

 新たに有用な資源を発見したり、眠る遺物を探し出したり、出現する人間性の結晶をより多く確保する目的で、新たな拠点は築かれ、コミュニティへと発展する。

 交易もできない程の遠くになると孤立してしまうが、近くては意味がない。

 まぁサイキックとエイリアンは元を辿れば同じでも、今は全く違う生き物なので、同じ理屈で動く訳じゃないだろうが、……それでも活動範囲を広げて勢力圏を増やすって目的は、恐らく違いはないと思う。


 南側にはコミュニティがあるから、そちら側にエイリアンの巣があったなら、今頃はもっと悲惨な事になってる。

 故に西、或いは北に、エイリアンの大きな巣はあると推察できた。

 最初に飛行タイプのエイリアンを発見した辺りでは、稀にエイリアンの姿を見掛ける事はあった。

 つまり巣分け前の大きな巣は、空を飛ばずとも、歩行でもやって来れる範囲にあるのだろう。


 あぁ、だったらあの飛行タイプは、活動範囲が被るからと、元よりあの付近に巣を築こうって意図は薄かったのかもしれない。

 今向かってる、東側が本命か。

 万が一、東に新たな巣が築かれたとしたら、コミュニティは二つのエイリアンの巣に脅かされ、北での活動は著しく制限される事になる。

 しかし逆に言えば、新たな巣を速やかに潰して、残る大きな巣の位置も今回の情報を元に特定できれば、エイリアンの脅威は大幅に減らせる筈。


 本当に、思いもかけず大きな話に関わる事になってしまった。

 個人的には、エイリアンの巣は西側にあるんじゃないかと思う。

 というのも北側ずっと行くと山地と森にぶつかるから、その付近はウッドの勢力圏になる。

 ウッドの勢力圏は入り込むと生きて帰れるケースは稀なので、当然ながらブラックエリアだ。

 昔の人間が遺した地図に載っているし、遠目にも観察できるから、山地と森が存在してる事はわかってるが、実際にどの程度の範囲にウッドの勢力圏が広がっているのかは謎だった。


 幾らエイリアンでも、流石にウッドの勢力圏に巣は作ってはいないだろうから、そうなると西側の可能性が一番高い。

 もちろん、別に確証がある訳じゃなくて、全ては私の勝手な想像に過ぎないけれど。



『サイリさん、一旦止まって下さい。交代の方々が、来ます』

 飛行タイプのエイリアンを追って移動していた、またキサラギを移動させていた私に、彼女が制止の声、テレパシーを発した。

 どうやら、基地からの指示が下ってから、三時間が経ったらしい。

 既に日は沈んでて、辺りは闇に包まれている。

 キサラギが周辺状況を把握し、共有してくれているから日が沈んだ後も追跡を行えていたけれど、一人ではどうしようもなかっただろう。


 私はキサラギのテレパシーに頷いて、即座に止まるのではなく、近くの廃墟の中へと、身を隠せる場所に移動してから、サイコキネシスを解除した。

 すると超能力の解除と同時に、一気に疲労が押し寄せる。

 今日は、かなりの長時間、サイコキネシスを使い続けているから、無理もない。

 普段の活動は一人で無理なく行い、余力を残していざって時に備えているが、今日は事態が事態なだけに、そんな事は言ってられなかった。

 自分のペースで動くのと、監視対象を追って、向こうのペースで動かされ続けるのでは、疲労度は全く異なる。


 また、自分一人じゃなくて、キサラギを運ぶのにもサイコキネシスは使いっぱなしだ。

 尤もその分、索敵に気を割く必要が殆どなかったから、そちらは寧ろ楽をさせて貰ってるけれども。


 限界が間近って訳じゃないけれど、これ以上の活動は少しずつ無理をしなきゃいけなくなってくる。

 そんな絶妙なタイミングで、交代の人員は現れた。

 数は四人で、見知った顔はない。

 恐らくは四人とも、相当なベテランなのだろう。

 纏った雰囲気が明らかに、普通のサイキックとは異なっている。


「よう、サイリ、随分と活躍してるみたいだな。迎えに来てやったぜ」

 でも私は、そんな事は割とどうでもよくて、彼らを送ってきたテレポーテーションの使い手が、見知った顔だった事に思わず笑みを浮かべてしまう。

 疲れている時に見る友人の顔が、こんなにも安堵するものだとは思わなかった。

 シンが、何故だか妙に得意げにしてるのがほんの少しだけ腹も立つので、口に出しては言わないが。


 四人の一人とキサラギが手の平を合わせて、情報共有を行う。

 あれが終われば、基地へと帰還する。

 大きく、息を吐く。

 まるで三日、いや一週間くらいは外で活動したかのような心持ちだけれど、実は日帰りだ。


 結局、遺物も見付けてないから手ぶらだった。

 もちろん飛行タイプのエイリアンを発見し、追跡した事に対する報酬は出るだろうけれど……。

 そうではなくて、私は今回、のんびりと遺物を探したかったのに、なんというか、本当にこの世界は、儘ならない。




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