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王国の最終兵器。巨大化した公爵令嬢はワイロの力で強くなる!!

「ギャオオオオオオオオオん!」

 その鳴き声を聞いた兵士は、大慌てで警鐘を打ち鳴らした。

 カーンカーンカーン!! という耳障りな音を聞いた民衆は大慌てで貴重品だけ持って逃げ回った。巨大な地竜が唸り声を上げながら近づいてくる!!


 ここの国王もまた、御城から脂汗を流しながら迫りくる地竜を睨んでいた。

「で、でかい……」

「陛下! 一大事ですぞお!」

 王に仕える大臣は、カツラを付けるのも忘れてすっ飛んできた。

「まぶしいぞ大臣」

「も、申し訳……と、そんなことを申している場合ではありませぬ! 地竜です……地竜が襲ってきました」

「見ればわかる!」


 こんなことを言い合っている間に、地竜はどんどん近づいてくる。

「こ、このままでは城下町が……」

「こうなったら、ヤツを呼ぶしかない」

 大臣は脂汗を流した。

「やつとは……まさか!」

「いでよ、悪役公爵令嬢!!」


 国王が王冠を外すと、大臣以上の光を反射して辺りを明るくした。要するにこいつも頭毛が不景気なのである。

「ま、まぶしい……陛下ぁ!」

「黙れ、不敬罪に処すぞ」


 そう言った直後に、ひゃははははは……という品のない笑い声が聞こえてきた。

「王様が頭を光らせてる~ すっげーお寂しい~」

 姿を見せたのは、言葉遣いとは似合わないスタイルの良い女性だった。


 国王はこめかみに血管を浮き上がらせながら笑った。

「そんなお寂しく可哀想な国王から、貴殿にお願いがある」

「え、もしかして……あのギャオオオオオンをやっつけて来いってヤツ?」

「そうだ。やってくれるか?」

 そう答えると、口調と見た目の合っていない女性は言った。

「王様の毛を、ちょっと毟らせてくれたらいいよ~」

 国王は目を剥いて叫んだ。

「お前に、貴婦人の情けというものはないのか!?」


 そう叫んだら女性は、少しがっかりした様子で言った。

「冗談だよ。というか今の王様の顔がおもしろかったからオッケー♪」

「た、頼んだぞ……」

 女性が部屋から去ったときには、王様は恥ずかしさと情けなさで、すっかり血圧もピークに達していた。

「余はもう……引退したい……」

「お世継ぎ様がたくましく成長なさるまで辛抱してください」

「お前は鬼か大臣!?」



「ジャジャジャジャーン!」

 女性の声が聞こえてくると、先ほどの口調と見た目の合っていない女性は巨大化していた。

 先ほどまでは170センチ前後だったが、今の彼女の身長は17メートルほどある。動きやすそうなサンダルに履き替えてはいたが、1歩あゆみを進めるたびにズシンという音が響くため、人々は一斉に道を譲った。

「はいはーい。退いて退いて~ 前に出てくると踏んずけちゃうよ~」


 その姿をみた地竜も、城門から離れて距離を取っていた。

 考えても見れば地竜の大きさは、頭も含めても15メートル前後だ。まさか自分よりも大きな人間が迫ってきたら身構えるのも当然だろう。


「ドラゴン君。ここ……私のお家なんだ。遊びたいならむこうで遊んでね~」

 女性はそういうと、ドラゴンは威嚇するように怒号を響かせた。その表情は、空腹なのだから食事の邪魔をするなと叫んでいるようだ。

「ちょっと、唾が飛んできたんだけど~」

 女性が表情を曇らせると、ドラゴンは城門にタックルを浴びせた。守っている兵士たちが悲鳴を上げながら応戦しているが旗色は悪い。


 女性の声も目に見えて悪くなった。

「ちょっとぉ、聞いてる!? 怒るよ!!」

「グオオオオオオオオオ!!」

 ドラゴンが無視したので、女性は近くにあった兵舎を建物ごと引っこ抜いてドラゴンに投げつけた。中に人……いなかっただろうな!?


 ドラゴンは目を赤々と光らせると、再び城門にタックルをして門をこじ開けた。

 兵士たちはパニックになり逃げ出していくと、ドラゴンは手近な兵を2、3人摘まみ上げては口の中へと放り込んでいく。

 さすがの女性も、これには怒りを露にした。

「ちょっと、うちの兵士に何してんの!?」


 直後にドラゴンの頬に平手打ちが入ると、口の中にいた兵士たちが吐き出された。よだれでグショグショになっているが、とりあえず命に別状はなさそうだ。

 もちろん、ドラゴンは激怒した。


「グオオオオオオオン!」

 ドラゴンのタックルを受けた女性は、悲鳴と共に仰向きにひっくり返され、背中を建物に打ち付けていた。

「げほ……ごほ……」

 女性がむせ返っているところに、ドラゴンは女性の胴へと乗り、牙を光らせて喉元に噛みつこうとした。これは大ピンチだ!


 大臣も焦った様子で国王を見ていた。

「王様ぁ……!」

「案ずるな。奥の手を使う!! むうううううううん!!」

 王様は自分の頭のてっぺんにわずかに残った毛を毟った。すると、太陽の光をより強く反射して遠く離れたドラゴンの目さえくらませる効果があった!


「超高出力……ソーラービームだ! そして、全ての国民に……増税を課すことで……!」

「課すことで!」

「悪徳政治パワーを……公爵令嬢に届ける!」

「おおおおおお!」

「変身せよ! こーしゃーーくーーーれーーーーじょぉぉぉぉぉ!」


 悪徳政治パワーは凄まじく、女性の上に乗っていたドラゴンを持ち上げ、更に無数の黒い手が女性の体を抱きしめるように囲んで衣服となり、そして長い杖となった。

 そして、公爵令嬢となった女性は叫んだ。

「みんなの元気を……そして、ワイロを!」


 城下町の民たちは、次々と懐の中のお金を女性に献上すると、女性の筋肉は見る見る発達していき、まるで筋肉だるまのようなたくましい体つきとなった。

 そのインパクトはあまりにも凄まじく、見ていた地竜も涙目になってドン引きするほどだ!


「くらえ……制裁パンチィィィィ!」

「ぼぐびがへおが!?」

 女性の右ストレートを受けた地竜は、お前喋れたのか……と言いたくなるほどの断末魔を上げながら遥か後方にそびえていた霊峰まで殴り飛ばされた。


 民衆も兵士も皆が女性を称えるなか、彼女は王様へと目を向けた。

「先ほど、増税するとか聞こえたけど……あれは私の聞き違いだよね?」


 王様は脂汗を流しながら笑った。

「も、もちろんだ。ああでも言わないとお前を助けるエネルギーが集まらないと思ったのでな」

「そう……なら、いいんだけど……」


 女性は変身を解いて元の大きさに戻って行くなか、王様と大臣だけは舌打ちをしていた。

 確かに城門が大破し、城門外の畑が地竜に踏み荒らされ、更に城下の建物の一部が崩されているので、彼らがどさくさに紛れて増税をしたかった理由もわかる。



 こうして、女性は元の公爵令嬢に戻り、街の人々も平和に暮らし、王国の財務状況だけが火の車となって騒動は無事解決したのだった。

 おや、大臣の悲鳴が……いいや、何も聞かなかったことにしよう……




ここまで読んでいただきありがとうございます。

おもしろい!


……と感じて頂けたら、広告バーナー下にある【☆☆☆☆☆】に評価をお願い致します。

また『ヲッサン馬、パーティー追放され回復の泉の守り手に! 善人に限り、手厚い支援を行うダンジョンマスターになる模様』も合わせてご覧いただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  戻るんですね!(笑)  おそるべしワイロの力!!  いえ、制裁されるべきはアンタだろ!!!  酷く非道い下衆な会話なのに、王と大臣と令嬢とかいう……  (≧∇≦)bヒドク痛快でした!!…
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