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君は悪魔の成り損ない  作者: ヨダカ
円舞曲
37/53

死、『少女』、『門番』

女の目が開いた。

「あ、起きた!起きたよ灯葉君」

俺は急いで駆け寄った。

「襲ってこないよな」

「怖いこと言わないでよ…いざとなったらよろしく」

んな無責任な。

女はムクリと起き上がると、暫く辺りを見回した。そして、口を開いた。

「ここは…?」

俺はドロイトを見た。

「なんて言えば良いんだ」

「普通にフルセル、で良いんじゃない?」

それを聞くと女は動揺したように立ち上がった。

「そ、それは困る。駄目だ。お前らも死ぬぞ」

「一応、このメリーは止まっているみたいだが」

女はメリーをじっと見つめた。子供のような、純粋な目をしていた。

「本当だ」

「じゃあ、大丈夫だろう」

女は黙って頷いた。そして何故かドロイトに寄った。ドロイトはびっくりしたように女を見つめた。

「?どうしたの」

「…抱き締めてくれたから」

ドロイトはよくわからないと俺に視線を送っていた。

何だか寂しいような悔しいような。俺はブンブンと頭を振ってネガティブな思いを弾き飛ばした。

「まあ、なら良いんだ。名前は、なんていうんだ」

「…ドラセナ」

「帰るところは無いのか」

ドラセナは頷いた。

「…ついていっても良い?」

え、と俺は思った。俺は今国に追われているらしいし、危険かもしれない。ドラセナが危険にさらされる日も来るだろう。

「あ〜、俺達、今追われてるんだ。危ないから、ちょっと無理かもな」 

ドラセナは首を振った。

「私強いから…大丈夫」

…そういえば、俺はこいつに殺されかけたんだ。

「んー、でもなあ」

俺がまだ渋ると、女はきょろきょろと辺りを見回し、近くの岩に手を伸ばした。魔波が岩へ向かって、一直線に歪んだ。

「…あの岩が壊れたら、ついていっても良い?」

「え、まあ良いが」

ドラセナは初めて笑顔を見せた。

「ありがとう」

その瞬間、岩から一本の黒い柱が突き抜け、天へと上っていった。岩は砕け、弾けた。

「…!」

ドラセナはこちらを向いた。俺は衝撃に動けなかった。

「何処に行くの?教えて」

「い、今。今考えてるところなんだ」


ドラセナがドロイトに寄りかかっているのを傍目に、俺は頭を抱えていた。まじでどうすれば良いんだ。

リビアが気になる。もしかしたらドラセナが居れば、なんとかなるのか?

ドラセナは間違いなく強い。ボディーガードでも良いくらいだ。

でも、だからといってリビアに勝てるのか?正直リビアの強さは桁違いだ。俺が、俺が強くならねば…。

取り敢えず、修行でもしていたほうが良いんじゃないか?そうだ、ドラセナに稽古をつけてもらって…

…まず、目的を思い出そう。

俺の目的は「悪魔を殺すこと」と「地球に帰る手掛かりを掴むこと」。

ドロイトは、俺の心をどうこう言っていた。

一応、俺はもう記憶を思い出している。

ドロイトの目的は達成して…否、いない。

色んな心と触れ合いたいと言っていたじゃないか。旅だ、旅をしなければ。

…フルセルで。

リビアが邪魔だなぁ…。

地球に帰る手掛かりは、正直今のところゼロ。全くわからない。リビアなら何か知っているかもしれないが。

悪魔を殺す。

これは一応望みがあるっちゃある。

強くなれば殺せるはずだ。

ああ、ケデロさんは大丈夫だろうか。

ケデロさんは…。

しかし、あの悪魔。老人の悪魔。

奴は一体全体何なんだ。

俺にばかり付き纏う。

あいつがシェブナ街を焼いたし、あいつがドロイトを殺しかけたのだ。

止めなければ…

「灯葉君」

俺は振り向いた。

ドロイトがドラセナに膝枕をしていた。ドラセナはいつの間にか寝ていた。

「どうしたの、そんなに迷って」

「それがな、目的地が無いんだ」

ドロイトは笑った。

「まだ、やることはたくさん残ってるよ」

俺はドロイトの方に歩いていった。

「そういえば、お前はこの世界の秘密を全て知ってるんだろ?」

「人間関係に限ってね」

「イミカとリビア、どんな関係なんだ?」

ドロイトは暗い顔になった。

「いきなり切り込むなあ」

「そんなにか」

「うん。私としては、君に謎を解いてもらいたいんだけど」

俺はドロイトを睨んだ。

「じゃあ、此処に置いていくぞ」

ドロイトは一気にパニックになった。

「え、嘘、分かった教える、教えるから置いてかないで、ごめんなさい」

「じょ、冗談だよ。なにもそんなに焦る必要は…」

ドラセナが目を覚ました。

「…何をしたの」

ゆっくり起き上がった。異常な殺気を纏っていた。

間違いない。やばい。

「ドロイトさんに何をしたの…?」

「何も、何もしてない!誤解なんだ、俺は冗談を言っただけで」

ギシギシと腹から音が鳴った。肋骨が…?

「か…あ」

俺は浮き上がった。掴まれている。肋骨を掴まれている…!

「だ…やめで…」

ドロイトは必死にドラセナに抱きついて止めた。

「ち、違うの!灯葉君はちょっと口が滑っただけで」

「…口が滑った…?」

その言い方は、ちょっとまずいんじゃないかドロイト…!!

肋骨に加わる力が更に強くなった。折れる!もう折れる!

「…!!!」

「違う!冗談!冗談を言ったの!それを私が、真に受けちゃって!」

俺は地面に落とされた。余りにも痛い。

「…そうだったんだ」

ドラセナは再びドロイトの膝を枕代わりにした。

「…」

寝た。確実に寝た。

「恨むぞドロイト…」

「ご、ごめんってば」


「ケデロ様が、死んだ…?」

門番達は『生物』の話を聞いて衝撃を受けた。

あのケデロ様が。誰よりも強い、あの人が。

死んだ…?

門番の一人、鉄槍のガーネットは、泣いた。衝撃を受け止めきることが出来なかった。

大盾のルビーも同様だった。彼は泣きはしなかったが、心の中では最早考えることすら出来なかった。

考えると、自分を失ってしまう気がした。

「…ケデロ様も言っていただろう」

ルビーは内頬を噛み締めた。

「私達に悲しんでいる暇は無い。強くならねば」

『生物』は暫く俯いていた。そして、口を開いた。

「君達」

門番は前を向いた。

「ガリヤ城の、地下倉庫を知っているか」

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