大丈夫ですか?
午前0時23分、Rは布団から起き上がった。
窓ガラスの軋む音、揺れるベッド、散乱したフィギュア。
彼はパジャマのまま、アパートの部屋を飛び出した。夕方に降った雨のせいだろうか、まだ湿っているアスファルトを駆けてゆく。大学生の彼は、”非常時安全確認スタッフ”としてアルバイトをしている。非常時に訪問する顧客の数だけ給料も増えるため、訪問をし、安全確認の契約を結ぶという業務もあり、話し上手なRにとっては天職だった。現在、彼は136人の契約者を持っており、地震や台風などの自然災害が発生した際に、そのすべての家を訪問し、安否を確認しなければならない。
「大丈夫ですか?」
「訪問ありがとう。何も問題はないよ。」
お世辞にもかっこいいとは言えない男がドアから顔を出して言った。男が感謝の言葉を述べるや否や、彼は次の契約者の元へ走り出す。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか?」
...
午前5時52分、ようやく全ての契約者の安全確認を終え、Rは帰路に着く。
「今回の揺れはかなり大きかったから、今後1週間くらいは余震があるかもなあ」
布団の中でRの口角が少し上がった。
読んでくれてありがとう。