サンタなんかいらない
「サンタなんかいらない」
小さな駅で
4つ下の弟と母を待つ
もう2つ
電車が来ては
ふたりでため息をつく
「お母さん、遅いね」
弟が冷たい手に息をかける
私は弟の手を包み込む
「あったかい」
弟がカサカサの頬で微笑む
日曜日の田舎町
もうすぐクリスマス
2つしかない改札口から
白い息を吐きながら
手に手に四角い箱を持つ
大人たち
その傍らでプレゼントを
抱きしめる
笑顔の子供たち
私は弟と冷たい木のベンチに座り
改札口と時計を交互に見ては
弟を抱きしめる
温もりを感じてふと見れば
弟がカーディガンの
ほつれた袖からのぞく
私の手に
息をふきかけていた
「あったかい?」
「うん。ありがとう」
霜焼けの手が温かい
オレンジに染る空
音が遠くなる
滑り込む電車
改札口に人の列
「あっ!お母さんっ」
弟の声の先
青い作業着のお母さん
手には赤い長靴が2つ
「クリスマスプレゼントだっ」
弟が飛びついていく
この家族がいればいい
このままこの幸せな時が
続けばいい
ずぅっーと、ずっと
*フィクションです。