最強の転生者同士による殺し合い
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「はぁ……はぁ……、これで……残り5人」
俺は手にある紋章を確認する。紋章にはさっきまで右側に6つの赤玉があり、左側には3つの青玉があったが、今は右側が5つに変わっている。
これで悪の転生者は残り5人。善の転生者は残り3人。
最初は互いに10人いた転生者も今ではどちらも過半数を下回っている。
「とりあえず……供養しとくか……」
俺は目の前に転がっている死体に向けて火魔法を放つ。
肉の焼ける匂いが一瞬するが、すぐに死体は灰に変わり、風に乗って消え去る。
俺はいつものように手を合わせてなーむーと唱えると、すぐさまその場から離脱するために飛翔魔法をかける。
「俺たち善の転生者は残り3人か……。依然、不利なことに変わりない……」
他の転生者2人の所在にあてはないが、多分そろそろここら辺に来ているだろう。
風魔法の出力を上げ、空を駆ける。しかし突然後ろから魔法の気配を感じると、光の玉が無数に襲ってくる。
「ちっ! 光弾か! 鬱陶しい!」
光弾は中級光魔法で自動追尾してくる。消すには当たるか闇魔法、それか同等の魔法を当てればいいんだが……
「散れ!」
俺は上級無属魔法の魔力霧散を発動させ、光弾に宿った魔力を散らす。魔法は魔力の塊だ。散らせばないのと変わらない。
そして俺は残りの魔力を使い、飛翔魔法を全開にする。
全身にあたる物凄い風を魔法で受け流しながら、光弾を放った奴から全速力で逃げる。
「クソ! もう1人いたのか!」
悪の転生者の1人と戦って魔力の消費が激しい。3分の1くらいしか残っていない。
もしかして今攻撃してきた奴は、俺がもう1人と戦って弱るのを待っていたのか……。となると、悪の転生者側は1枚岩ではない可能性が出てくるが……。いや、そもそも光弾を放った奴が悪の転生者であるかはわからないか。なんにせよ、今のままだと勝ち目がない。
しかしそんなチャンスを相手がみすみす逃すわけがない。俺だって逃さない。
「ふざけるなよ!」
再び光弾が飛んでくる。
「なっ!」
今度は空を埋め尽くすほどの数だ。青かった空が黄色一色に変わってしまっている。
まずい! まずい! まずい!
さすがにこの量の光弾を散らすほどの魔力は残ってない。
なら!
「認識阻害魔法しかないな……」
あまり使いたくないが……。俺は空中で停止し、光弾を迎える準備をする。
転生する前、暇を持て余した酔狂な女神(自分でそう名乗っていた)が20人の転生者それぞれに最強のスキルを与えてくれた。
俺が与えられた最強スキルが「認識阻害魔法」だ。
最初は「なんだこの使えなさそうなスキルは?」と思っていたが、使ってみるとヤバい。何がヤバいって、女の子のスカートをバレずに覗くことができる。いやそれも確かにヤバかったが、それよりもヤバいのが、ありとあらゆる攻撃が当たらなくなる。理由は俺の情報が全てズラされる。だから攻撃自体の認識もズラされ、俺への攻撃という認識が阻害されるからだ。さすが女神の言う最強スキル。
しかし口撃は避けられないのが欠点だ。以前、認識阻害魔法を使ってから、幼馴染の女の子に「キモっ」って言われて胸の辺りに痛みがあった。あれれ〜、おかしいな……。
「はっ! 思考がネガティブに!」
刻一刻と近づいてくる光弾。
俺は間一髪のところで認識阻害魔法を発動する。全ての光弾が俺の横をズレて飛んでいき、目標を見失った光弾は消えて無くなる。
遠くの術者の驚愕が手に取るようにわかる。術者は遠目の魔法を使っていたので俺を見失ったらしい。魔法は発動する際に目的、目標を明確にしないと発動できないというのがこの世界のルールだ。
「今のうちに!」
俺は再び飛行魔法を全開にし光弾から逃げる。悲しいことにこの認識阻害魔法は動いてから5秒すると解けてしまう。5秒間が逃げるチャンスだ。
全力の飛行魔法は3分と持たない。しかし爆発的なスピードでその場から離脱することに成功する。
「はぁ〜……危なかった……」
死ぬほどの危機はこれで3度目。この感覚は慣れない。身体の奥底から死と生存の鬩ぎ合いが起こり、鳥肌が止まらない。この鬩ぎ合いに死が勝つと動けなくなる。1度目の時はヤバかった。あと0.5秒遅かったら死んでいただろうと今更ながら思う。
俺は拠点から10キロ離れたところに降り歩いて帰る。
「光弾の魔術師か……。悪の転生者なのかそれとも野良の冒険者なのか……」
俺は手袋を取り、手に浮かんでいる転生者紋に目を向ける。右側にある赤玉は5つ、左にある青玉は3つ。そして紋章の上には残り701時間40秒と刻まれており、刻一刻と時間は減っている。
「残り約700時間、約1ヶ月で残り5人殺さないと善の転生者は全員死ぬ……。逆にこっちが全員殺されたら向こうが生き残るか……」
15年前、暇を持て余した女神に言われたことを思い出す。地球で死んだ俺は異世界に転生させられ、善の転生者10人と悪の転生者10人による殺し合いバトルを行うと。
赤ちゃんの頃からスタートした殺し合いは壮絶だった。5歳の時に幼馴染を殺した。8歳の時、実の兄を殺した。俺に近しい人間2人が悪の転生者だった。
「はぁ……。くそ! くそ! くそ! なんで! なんでこんなことをしなくちゃいけないんだッ!」
感じる死の感触。俺は今まで3人殺した。仕方がないとはいえ、何回人を殺してもこの感覚は消えないだろう。特に親しいと思っていた人を殺すのは……。
「そろそろ着くか……」
いつの間にか拠点まで1キロを切っていた。
拠点の周囲100キロには人がいない所を選んでいる。悪の転生者がどんな手を使ってくるか分からないからな。
俺は目印となる自分の仕掛けた結界を解く。すると突然目の前に100メートルは優に超える木が現れる。そこの中に俺は拠点を作った。
「はぁ〜……、やっと一息つける〜」
俺は木の根から50メートルほど上に作った部屋に入る。ここからなら遠くの様子が分かり、下の様子は魔力で分かるから大丈夫だ。
「さてと……これからどうするか……」
ベットに横になり、これからのことを考える。
このままだとこっちが負ける可能性は高い。向こうで徒党を組まれたらやばい。完全に詰む。ていうかすでに徒党を組まれてる可能性もある。
「こっちも早く合流しないと。しかし全く当てがない……」
せめて男なのか女なのかが分かればいいのだが。
「それと光弾の魔術師も気になる。あいつが悪の転生者だったのか。あのレベルの規模の魔法を使えるなら転生者である可能性はかなり高いが……」
ふあぁぁあ〜。眠すぎて思考がまとまらない。
「とりあえず今日は寝よう……」
まぶたが重い。思考が止まり、身体を丸める。
明日色々考えよう……。
読んでいただきありがとうございます。
頑張って投稿していきたいです!
試し書きなので評価によっては続きが遅くなったりします。なので高評価をよろしくお願いします!
モチベーションが保つので。。。