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中二病云々  作者: ずんだ
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理屈屋な広志とその友人N


広志は理屈屋だ。そして誰よりも文学を愛している。

ただ、時代は彼をよく思わない。


例えば今日、直近の芥川賞受賞作家の名前を言える人がどれだけいるのか。

『人間失格』以外の太宰作品を知っている人がどれだけいるのか。


だがこれは仕方のないことだ。

漫画、アニメ、動画…、ここ数十年で娯楽の選択肢は恐ろしいほど増えた。

昭和ではない。そしてもはや平成でもない。令和なのだから。


当然、高校生である広志は「少し痛いやつ」である。

そしてもちろん彼もそれを理解しているからこそ、自分を偽り続けた。


好きなアニメのひとつも言えないような人間では息苦しい世の中なのだ。

当然広志も言える。

『機動戦士ガ○ダム』である。


ただ問題が一つあり、広志はガ○ダムが登場するという情報以外を知らないのだ。

友の話に適当にあいづちを打ち、ひたすら相手に喋らせるテクニックだけは身についた。


しかし家に帰ると彼は変わる。

それは家族の存在があるからだ。


生れてこの方ずっと近くにいてくれた人間にまで自分の本性を偽ることは不可能だといっても過言ではない。

「本当は自分のことをよくしゃべる」「ガ○ダムは別に好きじゃない」「下ネタも言う」こんなことは家族であれば当たり前に知っていた。


そして家族以外にもただ一人、これらを知ってくれている人間がいた。

友人の西山である。


ある時西山に聞いてみたことがある。

「こんな二面性のあるやつなのになんで仲良くしてくれんの?腹黒かもよ?」


奴は笑いながら答えた。

「二面とも知ったらお前なんかこわくねぇよ」


ああ、なるほど。

的確過ぎて答えに窮した。


こんな感じに家族にも友達にも理解を得られ、不自由なく思える俺にも一つだけ問題があった。

西山以外に友達がいないことである。


更に言うならこんなやつの友達をやってくれる西山が人気者でないはずがないという点である。

こればかりはどうしようもない。


そんなわけでラノベを読んでいるオタクに扮して今日も文学作品を読み耽っていた。

今日は中島敦の『弟子』


これは「弟子」とかいて「ていし」と読む。

論語を典拠としているからだ。


あぁ、俺にも孔子のような師が欲しい。

子路のような友人も欲しいかもしれない。


いや、待てよ。少し表出の仕方が異なるだけで俺は子路と似ているのかもしれない。

なんてくだらないことに頭を働かせていた。


しかし文学の本質はこういうところにあるのではないか。

難しい論文もよく読んでみれば少しの根拠で論者の妄想空想が繰り広げられていることを俺は既に知っていた。


みんな、文学好きなやつらはこんなのばっかだ。

「ねぇねぇ聞いて、この作品ってこういう読み方もできるんじゃない?だってさぁ~…」


だから俺はラノベも文学の一環だと思っている。

誰がどれだけ否定しようがそれは構わない。


いつも通り、「そういう考え方もあるんだな」と思うだけだ。

考えを押し付けるのにはエネルギーがいる。


その割にたとえ相手に押し付けることが成功しても別に達成感もない。

くだらない。


「へぇ、そうなんだ」

これでいい。


そんな事より…あぁ、西山早くこっちこないかなぁ…。

もう休憩時間終わっちゃうよ。


今日も俺の「ねぇねぇ聞いて」につきあってもらいたかったのになぁ。

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