表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/23

サンタさんはいるんだよ(小学五年生)

「お前まだサンタさんなんて信じてんのかよ。ダッセー」


 今年もこの時期がきてしまった。

 十二月になれば自然と多くなる話題。そう、クリスマスの時期だ。

 年下の男の子の高い声が響く。「ダッセー」なんて言っているけれど、その声色からはウキウキした気持ちが込められていた。

 みんなクリスマスが待ち遠しいのだ。私だってその一人。

 私とトシくんと瞳子ちゃんの家族が集まってやるクリスマス会。今年は私の家ですることになっている。

 いつも楽しいクリスマス会。もちろん今年も楽しみにしている。


「ダメだよ」

「え?」

「サンタさんがいないだなんて、そんな大きい声で言っちゃダメ」


 私は自分よりも年下の男の子に向き合っていた。突然声をかけたからか、彼は顔を赤くして固まっている。

 その男の子はちょっとの間だけ私を見つめていたけれど、目を逸らすと唇を尖らせる。


「だって本当のことじゃん」

「そうだね」


 私が頷くと男の子は目を丸くした。まさか肯定してもらえるとは思ってなかったみたい。


「でもね、わかっていても口に出すものじゃないんだよ。口に出しているうちはまだまだ子供。大人は簡単には言わないの。君はどっちかな?」


 にっこり笑いながらそう言うと、男の子は顔をさらに赤くして「俺は大人だ」と力強く頷いてくれた。わかってくれたみたい。これならもう大きな声でサンタさんのことを言わないだろう。


「お待たせ葵。あれ、どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ」


 ちょうど男の子と別れたところで瞳子ちゃんがやってきた。

 よかった。瞳子ちゃんの耳には入らなかったみたい。ギリギリセーフだね。


 もうすぐクリスマス。私と瞳子ちゃんは家族といっしょにトシくんのクリスマスプレゼントを選びに来たのだ。


「でも、俊成がサンタさんにもらうプレゼントと被ったらどうしようかしら……」


 そう、そうなのだ。瞳子ちゃんは小学五年生になった今でもサンタさんの存在を信じている。

 いつも大人っぽくて、かっこ良い彼女だけど、サンタさんについてだけはとても純粋な面を見せてくれる。

 そんな彼女を守りたい……。私の心の内では強い火が灯っていた。


「大丈夫だよ瞳子ちゃん。絶対に被らせないようにするから!」


 瞳子ちゃんの不安を取り払うように、自信を持って握り拳を作る。

 絶対にトシくんへのプレゼントは被らせない。だってトシくんのお母さんから何を用意するかちゃんと聞いてきたのだから。


「すごい自信なのね葵」


 ふふっと大人っぽく笑う瞳子ちゃん。しかしその心は純粋無垢だった。

 サンタさんを信じている瞳子ちゃん。彼女がそうやって信じている限り、サンタさんは実在しているのだ。

 たとえいつか真実に辿り着いてしまうとしても、それまではこのかわいい幼馴染を守り抜くつもりだ。


「瞳子ちゃん」

「何よ葵? 良い物でも見つかった?」

「瞳子ちゃん、かわいいね」

「へ? な、何よいきなりっ!?」


 お店にはクリスマスソングが流れている。シャンシャンシャンと鈴の音が気持ちを楽しくさせてくれる。

 サンタさんの存在が、私を少しだけ大人にしてくれた。



瞳子ちゃんがサンタの事実に気づくかは、本編の第二部で判明する……かも(予定)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 夜のサンタさん。。
[良い点] 男の子の嗜め方が鮮やかで葵ちゃん凄い。 [気になる点] これだけサンタさんがいると揺るがないのは職業サンタさんを見たことがあるのでは……? [一言] ちらっと調べたら日本人の公認サンタさん…
[良い点] 聖なる夜ですな〜。 [一言] 更新お疲れさまです。こっちを気づいてなかったわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ