表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/23

おねしょしちゃった(三歳児)

小学生だけをやるとは言ってない(キリ) 後半は葵ちゃんのお母さん視点ですー。

 晴れておむつが取れた! この時の感動といったら表現しきれないほどだったね。

 一度おむつを卒業してしまうと何もできない子供じゃないんだという意識が強くなる。こうやって一つずつ自立心ってやつが芽生えるのだろう。俺ってばなんて大人なんだろうか。


 おむつおむつとうるさいかもしれないが、これがあるかないかで行動範囲にも大きく差が出るのだ。おむつを履いたままだったら未だに公園デビューなんてできなかったかもしれない。

 まあ他の子でおむつ履いてない子ばかりってわけじゃないけどね。兄弟なんかがいたら上の子の付き添いで赤ちゃんをつれてくるお母さんがいたりするし。

 うちは一人っ子だからな。母さんが「おむつが取れたら公園に行ってみようか」とか言っていたのをちゃんと聞いていたのだよ。俺基準で考えてくれてありがとうございます。


 つまり、おむつが取れたおかげで葵ちゃんと出会うことができたのだ。おむつないって最高!

 絶対におねしょなんてするものか。俺はおむつ生活に逆戻りすることだけは避けるように努める。それは三歳児にとっての固い誓だったのである。



  ※ ※ ※



「うええええん! うええええぇぇぇぇんっ!!」

「ほらほら葵。もう泣かないの」


 私の娘、葵が力いっぱい泣いている。この泣き方はすぐに止んでくれそうにはなかった。


 葵が泣いている原因はおねしょをしてしまったからだった。明け方に泣き始めたかと思えば、パンツやパジャマにとどまることなくお布団にまでびしょびしょにしてしまったのだった。

 身に着けているものは洗濯した。お風呂にも入って気持ち悪さはなくなったのだと思うのだけれど、それでも葵は泣き止んではくれない。


 おむつを取ってみたものの、たまにこうやっておねしょをしてしまう。三歳になったからと外したのは早過ぎたのだろうか。


「うええええん! うええええぇぇぇぇんっ!! うわああああああぁぁぁぁん!!」


 ……そろそろ泣き止んでくれないかしら?


 いつまでも泣き続ける娘を叱ろうとした時だった。


「おはようございまーす」


 玄関のチャイムとともに元気な声が聞こえてきた。俊成くんだ。

 彼の声が聞こえると、葵はぴたりと泣き止んだ。さっきまで悩まされていたのが嘘のよう。


「はーい。今出るわねー」


 私は玄関へと小走りで向かった。俊成くん、とても良いタイミングね。

 ドアを開ければ娘と同い年の男の子がいた。言われずともしっかりとしたあいさつをしてくれる。

 彼の登場に、私はほっと胸を撫で下ろした。


「葵ー。俊成くんが来てくれたわよ」

「……うん」


 まだ少し鼻をすすっているけれど、涙は引っ込んだみたい。

 けれど、俊成くんは葵の様子が気になったようで、私へと顔を向ける。子供の純真な疑問に、本当のことを言えないだけに苦笑いをしてしまう。

 そんな私の心境を見抜いたように、俊成くんは小さく頷いた。子供って大人にはない察しの良さがあるのかな。そう考えてしまうほどにはドキリとさせられるほどの察しの良さだった。


「葵ちゃん、今日は何をして遊ぶ? 部屋に行く?」

「お、お部屋はダメ! 葵は……お、お外がいいなぁ」


 シーツは洗濯したし、換気だってしている。それでも、好きな男の子をお漏らししちゃった部屋には入れたくないか。

 娘の芽生え始めた羞恥心に、表情がほころんでしまいそうになる。


 葵にとっておねしょは恥ずかしいものだと認識したみたいね。それはきっと、俊成くんに知られたくないと心で感じたから。まだ頭ではわかっていないでしょうに、心はちゃんと乙女として成長しているみたい。

 葵のおねしょはあまり問題にする必要はないだろう。だって、女の子なら恥をかきたくないものね。そうやって意識できるのなら、自然とおねしょしなくなるだろう。


 子供の成長は早い。日々の変化を発見するだけでも楽しい。友達ができるとなおさらそう思う。

 私は手を繋いで外へと出る葵と俊成くんを、優しい気持ちで見送ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] さすが作者。。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ