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闇よろず  作者: 星原 詩乃
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第1依頼 依頼主side; 新たな仲間


「それでは、早速ですが本題に入らせていただきます」


「あっ、はい!よろしくお願いします」


「まず始めに、ただの調査だけですので、調査費は5万円+α(アルファー)になります」


「えっ!?そうなんですか?失礼ながら、実はもっとスゴい値段を言われるんじゃないかと思っていました…。50万とか、100万とか……。というか、αってなんですか?」


「フフフ。堂島様は、正直でいらっしゃいますね」

口元に右手を当てながら上品に笑うヤミーさん。


「あくまでも調査だけですので、この値段になるんです。そして私どもの報告を受けて、そこで、調査を終了とするか続行とするかは依頼人が決められます。なお、続行される場合でも調査費は変わらずに5万円のままです。あとから値段をあげたり水増ししたりなどは致しませんのでご安心ください。それから、αについてなんですが、これは調査中の食事代や交通費などになります。調査期間や移動手段などによって金額が変わるので、具体的な金額は言わずにαとしております」


「はぁ…」


これは、つまり、アレ…か?

……調査員の食事代とか、その他もろもろの経費とかも俺が出すってこと…なの……か?

まあ、お願いする立場だから仕方ないといえば仕方ない、で済む話だけども……

でも…ねぇ?


「それから、堂島様はこの調査に参加なさいますか?」


「えっ、あっ、えっ!?…いいんですか?」

αのことを考えていたため、反応が少し遅れてしまった。


「はい。構いませんよ。ですが、念のため私どもの仲間を1人つけさせていただきます。危険がまったくない、という保証はございませんので、堂島様の警護及び調査補助としてになりますが、いかがいたしますか?」

にこりと優しく笑って言ってくれた。


「ぜひっ、ぜひお願いしますっ」


俺自身が調査に加われると思ってもいなかったため興奮しすぎて、思わず前のめりになってしまっていた。

ヤミーさんの顔が、めちゃくちゃ近かった…


「分かりました」


そんな俺の行動なんかお構い無しでそう一言言うと、ニコリと微笑(ほほえ)むヤミーさん。


そして、執事くんの方を向いて小さくうなずいた。


それを見た執事くん、右手を胸の前にあて、一礼して扉から出ていってしまった。


「彼には、堂島様と行動をともにしていただく仲間を呼びに行っていただきました。すぐに連れてくると思いますので、少々お待ちくださいませ」

そう言って、首をかしげてまたニコリと笑った。


ヤバい!素敵すぎる!


「あっ、はい。分かりました」

そういいながら、自分も調査に加われるという嬉しさから上がっていた腰を下ろし、ソファーに座り直した。


冷静になったら、なんか変に緊張してきた。

こんなに綺麗な人と2人きりだなんて、

ヤバすぎるッ!!!!

今までさえ女子と2人きりになることなんかなかったのに……


直視できず、チラチラと見ていた。


おしとやかで清楚で可憐なヤミーさん。

やっぱり、どこかのお嬢様なんじゃないか?

じゃなきゃ、おかしいだろっ!


少し伏し目がちで紅茶を(すす)る仕草でさえ、つい見とれてしまう。


俺がチラチラと見ていたことに気づいたのか、紅茶を一口啜ったヤミーさんと目が合った。

ヤミーさんが優しく微笑む。


「よろしければ、お飲みください」

そう言って、俺の目の前にあるコーヒーを手で差した。

実は、話をしながらも飲んでいたため、今あるコーヒーは3杯目なのだ。


「あっ、すいません。いただきます」


緊張のあまり、ゴクゴクと一気に飲み干してしまった。

うんっ!

やっぱりここのコーヒーは何回飲んでも、最高にウマいな!


「フフフ」

口元を右手で隠しながら上品に笑い、

「クッキーもお口に合えばいいのですが…」

と続けて言いながら、テーブルの真ん中に置かれていたお皿を俺の方に寄せてくれた。


「あっ、すいません。ありがとうございます!実は、クッキー大好きなんですよ!よく、遥が作ってくれて…」

そこまで言ってから、もうそのクッキーが食べられない、と気づいてしまいその先の言葉を言えず黙ってしまった……


「そうでしたか…」

そんな俺の気持ちをヤミーさんは察してくれたのか、少し寂しそうな目で言われた。


深夜3時にお茶会をするのは、初めての経験だった!

だからか、なんとも言えない気持ちになっていた。


俺のせいで場の空気がしんみりしてしまった…

あっ、この空気どうしよ…


コンコン━━━


悩んでいたら、ちょうどそこへノック音が聞こえた。

正直、助かった━━。

俺は気づかれないように小さなため息をついた。


「はい」

ヤミーさんが、真剣な眼差しになって答える。

「ヤミー様、お連れいたしました」

執事くんが返す。


さすが執事くん!グッドタイミングだぜっ!


「入ってきてください」


「失礼いたします」

そう言って、扉があき、執事くんが先に入ってきた。


そして、その後ろから入って来たのは、

大学生?高校生?くらいの女の子だった。


シナモンを想像させる明るい茶髪で、肩につくぐらいの長さ。

ちょうど、ショートとミディアムの間くらいだろうか。

茶色い大きな瞳、小さめの鼻と唇、整った顔立ち、小顔のせいか少し大人っぽい印象を受ける。

これだけなら大学生に見えなくはない。

が、服装は青と白のボーダーTシャツに、黒っぽいデニムのショートパンツだった。あとは、膝上まである黒の靴下に青いスニーカーを履いていた。

服装が、アクティブな感じのせいで高校生に見えなくもない。

下手したら、俺や遥と変わらないか?

とりあえず、第一印象はヤミーさんの次に綺麗で大人っぽいだな。


俺と目が合うと、彼女はニコリと笑ってくれた。


あどけない笑顔が可愛らしかった。



俺は、席を立って挨拶した。


「初めまして、堂島謙伍と申します。今回はよろしくお願い致します」


「初めまして、ミナと申します。堂島さんと一緒に調査をさせていただきます。それから、警護も(つと)めさせていただきます」


両手を前で揃えて、丁寧にお辞儀を返してくれた。


正直、こんな子に警護が務まるのかな?

と、不安になり俺は首を(かし)げた。



「堂島様」

ヤミーさんが俺の名前を呼び、席に座るよう促した。


俺はペコっと軽く頭を下げて席に座った。

続いてヤミーさんとその隣にミナさんが座る。


「堂島様には、こちらのミナをつけさせていただきます。私どもの中でも1番の実力者ですのでご安心下さいませ」


「あっ、はい。よろしくお願いします」

俺は席に座ったまま、お辞儀をした。


こんな子が、かなり強いとは見かけによらないな。



「こちらこそよろしくお願いいたします」

ミナさんが答える。


「ミナには、妹さんである遥さんとは高校の時の友達という設定でもよろしいですか?」


「その意見に賛成です。むしろお願いしたいです!」


「分かりました」

コクンと頷きながらミナさんが答えた。


「今日はもう遅いですし、少し休んで、お昼頃から調査を開始するということでよろしいですか?」


「あっ、いえ、お気遣(きづか)いいただきありがとうございます。ですが、自分は大丈夫です。ですので、差し支えなければこのまま、お、私が調べた資料を拝見して頂いて、プロからの意見を伺いたいんです。それから、大学で聞き込みをしたいのですが…どうでしょう?」


「大丈夫なんですか?」

ヤミーさんの切れ長の目が見開かれ、口元を右手で隠しながら聞いてきた。


「あっ、はい!自分は大丈夫です!

━━あっ、徹夜になっちゃうんですが…ミナさんは大丈夫ですか?」

ミナさんの方を向きながら確認をした。


「私は、構いませんよ」


「あっ、いえ、その…言葉不足で申し訳ありません……。私がお聞きしたのは、徹夜(そちら)のことではなくて大学のほうなんです…」

俺とミナさんの会話を聞いていたヤミーさんが、オロオロしたかと思ったら、今度はシュンとしながら申し訳なさそうに聞いてきた。


「大学?どういう意味ですか?」

聞かれている意味がまったく分からなかった。


「明日…時間的には日付が変わっていますので、正確には今日になりますが、土曜日ですよ?大学はお休みだと思うのですが…」

それを聞いて、ミナさんがハッという顔になった。


「あぁ~、お、私のほうこそ説明不足ですいません」

手を頭に当てて、軽く頭を下げて謝った。


目をパチパチさせながら二人が俺を見てきた。


あぁ~


うん、まぁ~、そうゆう反応になるよね…



「実は、遥が通っていた甲田(こうだ)福祉大学は他の大学みたいに土日休みじゃないんです…」


「「「えっ!!!」」」


見事に3人の声が揃ってハモった。


「そうなりますよね…」


「「はい…」」


また、ハモった。

今度は、女子二人だ。


執事くんは、ごまかしていた。


「平日休みを希望する学生が増えてきて、他の大学との差をつけるためにこの機会にということで、数年前に土日休みから日月休みに変えたんだそうです…」


「そうだったんですね…」


「……」


恥ずかしそうにヤミーさんが言ってきた。

ミナさんは黙ったままだった。


いや、正確には何かを考えているように見える。


「でしたら、土曜日ですが大学で改めて聞き込みができるということですね!」

ヤミーさんが、手をパチンと合わせて、確認をしてきた。


「はい!なので、なるべく早く行きたいのが私の本音です」


「わかりました!そうゆうことでしたらミナっ」

ヤミーさんが、ミナさんの名前を呼んで隣を見た。


何かブツブツと呟きながら考えごとをしていたミナさんがヤミーさんの視線に気がついた。


「堂島さんっ!」


「はいっ」

突然、名前を勢いよく呼ばれたためこちらも勢いよく返事を返してしまった。


「資料に目を通すのは、あっという間にできますので、今は気持ちを押さえて少し仮眠でもいいので体を休めて下さい。それから向かえば、ちょうどお昼時ですし人も多いでしょうから、聞き込みをかねて学食でお昼を食べませんか?」


右手の人差し指を立てて、首をかしげてミナさんがあの、あどけない笑顔で提案をしてきた。


ミナさんなりにかなり真剣に悩んで出した提案のようだった。


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