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闇よろず  作者: 星原 詩乃
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第1依頼 依頼主side; 依頼理由①

ことの発端(ほったん)は、約2ヶ月前━━━



お盆休み明けに、俺のたった1人の家族である妹が自殺したことから始まる…。


妹の名前は、堂島 遥(どうじま はるか)


甲田(こうだ)福祉大学に通う2年生で、

6月で20歳になったばかりだった。



両親は、俺が高2で妹の遥が中3のときに、バス旅行に出かけていて事故に巻き込まれて2人とも亡くなった。


もともと、一軒家に家族4人で暮らしていたが、俺と遥の2人だけで暮らすには広すぎた。

それになにより、この家には家族と過ごした思い出が多すぎた…

なので、俺たちは2人で暮らすために2LDKのアパートを見つけてから家を売りにだすことにした。


新しい家で使う家具と使わない家具に分け、使わない家具はリサイクルショップに売った。

売れなかった物とかは捨てた。


両親が(のこ)してくれた保険金で暮らして()けなくもないが、なるべくなら大学資金として遥のために使いたいし、俺が運転免許を取るときやいざというときのためにとっておきたいと思った。

なので、俺は高校をやめて働くことにした。


まあ、最初からうまくいくわけもなく、3ヶ月ほど保険金だよりになってしまった…。


パソコン関係は昔から得意だったおかげで、多少、早く仕事を見つけることができた。

書類などをパソコンに打ち込むというのが主な仕事だ。

その歳で、Excel(エクセル)Word(ワード)といった基本的なことやweb(ウェブ)デザイナーといったことまでできるということに驚いた社長自ら是非にと言っていただいた。

すごく嬉しかった。


亡くなった父親がパソコン教室の先生をしていて、母親がwebデザイナーをしていたため俺にとっては小さい頃からパソコンがおもちゃ代わりだったおかげだ。


遥は、高校に行かせた。

遥もバイトを始め、お互いに家事を分担しながら生活していた。

けっして、ラクではなかったが、お互いに幸せだった。


福祉関係の仕事に将来はつきたい。

両親にできなかった親孝行をしたい。


遥はそう言って勉強を頑張り奨学金で大学に入学した。



そして、遥が大学2年生になった(とし)の7月に彼氏ができたと照れながらも俺に報告してくれた。


「だから、私のことは心配しないで!お兄ちゃんも彼女さんをつくったり、自由にしていいんだからね!お兄ちゃんにはお兄ちゃんの人生があるんだからさっ!」

と、いつもの笑顔で言ってくれた。


あの時の遥の幸せそうな笑顔を見て、俺はスゴく嬉しく感じた。

だが、彼氏の名前はおろか、どこに住んでいるのか、彼氏との()()めなどは、いつになっても教えてくれなかった。


唯一、遥の彼氏について教えてくれたことは、俺と同い年だということ!

同じ大学に通う4年生で、イケメンらしい。


遥は、週末になると彼氏の家に泊まりに行っていた。


毎年、お盆休みには両親の墓参りに俺と遥の2人で行っていたが、今年は、初めて彼氏ができたという報告もかねて彼氏と2人で行くそうだ。


そして、そのまま2人でお盆休み中は旅行に行ってくると喜んで出かけて行った。




1週間後━━


久しぶりに見た遥は、どことなく元気がないように思えた気がして心配になった…


なんとなくこのままだと、俺を置いて、遥ひとりだけがどこか遠くに行ってしまうんじゃないかと、そんな気持ちになった。

どうしてそんなことを思ったのか、このときの俺には分からなかったけど…なぜか、旅行から帰って来た遥を見ていてそう思った。


それとなく何があったのか聞いてみたけど、はぐらかされてしまった。


それならと、今度はダイレクトに彼氏とケンカしたのか聞いてみたが…


「何でもないよ」の一点張りだった。


何かあれば相談してくるだろう…

これ以上しつこく聞いちゃいけないなと思いそれ以上の追及はやめた。



それから、2日後の8月18日━━

遥は、自殺した……


あの日のイヤな予感が(くや)しくも当たってしまった…


遥が通っている大学から歩いて1時間くらいのところにある廃ビルの屋上から飛び降りたんだそうだ……

この廃ビルは、普段は不良たちのたまり場になっているんだとか。

なんでそんなところを選んだのか、そもそもで、なんで家とは反対方向にあるその廃ビルを知っていたのか、まったく心当たりがなかった。


警察の人が言うには、自殺を裏付ける遺書があったんだそうだ…

飛び降りた廃ビルの屋上に、綺麗に揃えて置かれた靴とその隣に携帯電話があったらしく、

画面には━━


【大好きだった彼氏に裏切られて、もう生きていけません。お兄ちゃん、どうか許してください。】

という文章が(つづ)られていたと警察の人が言っていた。


それから俺は、遥が死んだという事実を受け入れることができずにいた。


葬式と通夜が終わっても、涙一つ零れなかった…


一応仕事に行ったが、心ここにあらず状態で、いつもならしないようなミスを何回もしてしまった。


気にかけてくれた社長が、3日間の休みをくれた。


何をするにもやる気がおきなくて、毎日ぼーと過ごしていた。


「お兄ちゃん、ただいまー」

と、いつもの元気な声で遥が帰ってくるんじゃないかと思っては、足が遥の部屋へと動きだし、部屋の住人の居ない……シーンと静まり返った様子を見ては、フラフラとリビングに戻るという行動を1日に何回も繰り返していた。


遥は、もう、この世にいない…


俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれる存在はもう…いないのだ…。


わかっているんだっ!

わかってるはずなのに…


なのに…


どうしても…遥の姿を探してしまう自分がいた…


このまま会社で働いていても、こんな状態だと会社にも周りにも迷惑をかけてしまうので、

辞めることにした。


引きとめる者は、誰一人としていなかった…。




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