表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/79

平和な日常【侍女リリー視点】

2話目で少し出た侍女リリーから見た結婚して少し経った二人。

次はクラーク視点の続き、ネグリジェ持って逃げた後をレティシア視点でお送りします。



「王太子妃が逃げたぞー!」

「妃様ぁー!」


 今日も城は活気がある。

 そう思いながら私は今日の夜会用のドレスを選ぶ。数ある中から最近着ていなくて主に似合うものを探すのは中々の手間だ。

 我が主レティシア様は私が仕えている女性だ。彼女がまだ公爵家の小さなお嬢様であったころから身の回りのお世話をさせて頂いている。

 王子の計らいで、レティシア様が結婚した後も、この王城で侍女としてお傍にいさせて頂いている。


「いたかー!」

「こっちはいないぞー!」

「今日はどこに逃げたんだー!」


 すっかり日常的になった光景にほくそ笑む。

 今日も主は逃げているらしい。

 結婚前からずっと逃げ癖があり、常にそのために行動する方だったが、それは結婚してからも変わらなかった。

 一瞬でも隙を見つけると嬉々として脱走する。

 探す兵たちは可哀そうに思うが、平和な今の時代、いい運動になっているだろうと思う。

 今日はピンクにしようか。

 目当てのドレスを手に持って、今度は小物を探す。小物はこの衣裳部屋の隅に置いている。

 そちらに移動すると、見慣れた頭が地面に這いつくばっているのが見えた。


「……レティシア様?」

「うひゃあ!」


 声をかけると驚いたようで飛び上がった。


「やだ、リリー、びっくりさせないでよ!」


 それはこちらのセリフである。


「何をしていらっしゃるのです?」

「この辺にあるはずなのよ」

「何があるのですか」

「抜け道」


 なんと。


「おっかしいなあ。確かにこの城の極秘見取り図に書いてあったんだけどなあ」

「そんなのどちらで見つけたのですか?」

「えへへへへ、十年の間に色々と」


 胸を張っているが威張ることではない。


「レティシア様、お戯れも大概に」

「これも自由のためよ!」

「今現在ほとんど自由じゃないですか」

「それとこれとは別!」


 レティシア様は拳を振る。


「確かに妃教育もないわ。だってもう妃だもん。実践だもの。まあ思ったより夜会も少ないし公務もあんまりないし、なんだかんだで釣りとか木登りとか昼寝とかして優雅に過ごしてはいるけど、それとこれは別なのよ! 衝動的に逃げたくなることがあるのよ!」


 わかる!? と詰め寄ってくるので頷くと満足そうにされる。


「それにしても、これだけ脱走してるんだからもう評判も悪いと思うのよね。醜聞を理由に離縁とかないかしら」

「ないと思います」


 即答するとレティシア様は頬を膨らませる。

 ――レティシア様は自分の評価が下がっていると思っているが、実際そんなことはない。

 レティシア様は公務をきちんとこなすし所作も問題ない。さすが伊達に十年妃教育を受けていない。やんちゃをするのも城の中だけ。脱走癖はあるものの、日々のんびりと過ごし、たまに釣れた魚を兵士におすそ分けしたりしている。

 元々次期王太子妃として民にも知られていたし、その勤勉さに信頼も厚いため、市井からも不満の声は出ていない。

 むしろ評価はうなぎのぼりである。

 脱走癖ぐらい何ひとつ問題にならないぐらいには慕われている。

 しかしそんなことを気付いていないレティシア様は不満顔だ。

 でも長い付き合いの私はわかっている。レティシア様が本当に離縁を望んでいないことぐらい。


「通路見つからないなあ。床ぶち抜いてみようかしら」

「恐ろしいことおっしゃらないでください」


 王城を壊すなんてなんと恐ろしい。


「あら、意外とこういう床の下とかに隠されていたりするのよ! なんかワクワクしてきた! ぶち抜きましょう!」

「おやめください」


 目をキラキラさせて言うが許可できるはずがない。


「――レティ?」


 私の後ろから声がしたかと思うと、目の前のレティシア様がブルブル震え出した。


「く、クラーク様? ご、ごきげんよう……」

「やあレティ。また逃げたんだって?」

「いやだわ、リリーとお話していただけよ」

「抜け道を探すお話をしていたのかい?」


 ばれている。

 レティシア様は顔を真っ青にする。


「君が知ってて俺が知らないわけないだろう?」


 背後で笑っている気配がする。怖い。

 巻き込まれる前に退散しよう。


「レティシア様、では私はこれで」


 小物を数点手に持って衣裳部屋から出る。


「見捨てないでぇぇぇぇ」


 レティシア様の悲痛な声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

 私は気を取り直して夜会の準備に勤しむことにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妃教育7巻本日発売!
 


『妃教育から逃げたい私』

コミックス7巻本日9/5発売!


菅田先生描き下ろし番外編もあります!!
そして私の書き下ろし小説もあります!!
そう!漫画に初めて書き下ろし小説ついてます!!

ぜひお楽しみくださいね!
今回も特典たくさんあります!

実物写真はこちら!
背表紙もあるのでぜひ参考にしてください!

i00000


作品書影&情報はこちら⬇

i00000


『妃教育から逃げたい私』
コミックス7巻


発売日:2025年9月5日



あらすじ

◇◆◇◆◇◆TVアニメ化作品◇◆◇◆◇◆

アスタール王国に留学に来た、遠国の王女・アビゲイル。

初日から、初恋相手であるというクラークに猛アタック宣言し、
妻であるレティシアをやきもきさせるも、
実は隣国の王子・ネイサンの婚約者であることが判明する。

恋愛経験ゼロのまま嫁ぐことが不満だと言うアビゲイルに、
レティシアたちはある提案をするが…?



特典詳細はこちら↓

i00000


今回もたくさん!!
ぜひ皆様特典お好みのものをゲットしてください!

皆様に楽しんでいただけますように!

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとPOP UP SHOPのグッズ、こちらでもまだ購入できるみたいです!
おそらく9/9まで!
ゲットできなかった!という方ぜひ!

i00000


こちらのグッズは菅田うり先生のイラストのものになります!

どれもとっても可愛いのでぜひ!
(私もキーホルダー追加で買おうと思ってます可愛い!)



ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ