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誘拐生活終わり



 ひとっ風呂浴びてさっぱりした私は決意する。


「よし、逃げよう」


 お金がないと逃げれないと思ったが、幸いここには小金持ちがいる。こっそりお金をすったこともおそらく気付いていないだろう。

 明日馬車で話合おうと言っていたが、きっと私の主張は通らないに決まっている。

 服もこの宿に泊まるために目立たない庶民服を購入して着ているし、問題ない。むしろ動きやすくて好都合。


「王子、ライル、中々楽しかったわよ」


 私は一人呟いて窓に手を開ける。当然部屋は木から近い方の部屋にしてもらった。

 窓を開けると田舎特有の匂いがする。私はこの香りが好きだ。胸いっぱいに吸い込んだ。

 と思ったらライルが雪崩込んできた。


「へ……?」


 間の抜けた声を出してしまう。

 私を襲いに来たのかと思ったがそうじゃないらしい。あわあわ言いながら地面に座り込んでいる。そしてライルが閉めた扉から再び人が現れた。


「ク、クラーク様……?」


 ゆっくりと部屋に足を踏み入れるクラーク様はとてもいい笑顔をしている。怖い。


「レティシア、これはどういうことだ?」


 ライルを追い越して、あっと言う間に私の傍まで来たクラーク様は、私の両肩に手をやった。


「俺以外の男性と宿泊するとはどういうことかな?」

「え!? そこ!?」


 誘拐されたことについてかと思ったら違ったらしい。

 まさかの部分に突っ込まれてどうしようかと思ってしまう。誘拐されたことを正直に言えばいいかと口を開こうとした私を遮ってライルが叫んだ。


「ゆ、誘拐されているレティシア様を道の途中で見つけ、保護していたんです!」


 あ! こいつ自分だけさっきの主張を貫き通そうとしてる!


「違います! この人達にマリアと間違われて誘拐されたんです!」

「いいえ! 保護していました! ちなみにレティシア様はそのまま自分を連れて逃げてほしいと主張されていましたよ!」

「あー! 裏切り者―!」

「私は自分が可愛いんです!」


 ライルは必死だ。ひざまずいたままクラーク様に許しを乞う。


「私は保護をしていただけです!」

「違う!」

「保護!」

「違う!」

「保護!」

「ちがっむぐ」


 言い合う私とライルを遮るように、クラーク様が私の口に手を当てた。


「ずいぶん仲良しみたいじゃないか」


 違う! どっからどう見ても喧嘩をしてる!

 むがむがと違うと訴える私から視線を逸らすと、クラーク様はライルを一瞥される。


「主張は我が国に戻ってから聞こうか」


 にこりと微笑むクラーク様。ライルが震えた。私も震えた。

 ダダダダッと走ってくる音がしたと思ったら再び部屋の扉が開けられた。


「この宿は体を洗ってくれる者がいないなんてどうかしている! おい、どういうことなんだ!」


 世間知らずな主張をしたのは私を誘拐した犯人だ。


「あ」


 扉を開けてすぐに状況がわかったのだろう。ルイ王子は顔を青くした。

 だから! 宿に泊まるのやめようって言ったじゃない!

 ルイ王子は顔を青くしながらも、王族の礼をした。


「僕はデルバラン王国の第三王子ルイと申します」


 王族としてのルイ王子は中々凛々しい。


「誘拐されているレティシア嬢を見つけ、保護していました。お知らせできず申し訳ありません」

「あー! やっぱり裏切ったー!」


 私が叫ぶと黙れと言うようにルイ王子に睨まれる。でも黙るもんか!


「クラーク様! 本当にこの人達に私誘拐されたんです! 処罰を! 処罰を要求します!」

「お、お待ちください!」

「ふん、ライル、この裏切り者! こうなったらこっちだって寝返るわ!」


 私だけ売ろうと思ったらそうはいかない! こうなったら道連れだ!


「わかった。とにかく今日はここに泊まろう」

「え? 部屋ないって……」

「二部屋あるんだろう?」


 あっ、とした顔をする私の頬をクラーク様は撫でる。


「ルイ殿、申し訳ないが、あなたはそちらの従者と一緒に泊まってもらおう。俺はレティシアと泊まる」


 い、いやだ!

 私はそう思ってルイ王子に首を横にブンブン振って主張するが、ルイ王子が嫌そうな顔をしながらライルを立ち上がらせて隣の部屋に行ってしまう。

 ああ、待って! 置いていかないで!

 そう思っても無情にも扉は閉まってしまう。


「レティ」


 クラーク様が私を抱き寄せた。さ、触らないって約束だったのに!


「心配した……」


 その声は思った以上に切羽詰っていて、私ははっとクラーク様を見る。

 そうか、私は誘拐されていたんだ。たまたま相手が良かっただけだが、それをクラーク様は知らない。どんな思いでここまで来たんだろう。


「すみません……」


 素直に申し訳ない気持ちを口にする。クラーク様がぎゅっと私を抱きしめた。

 しばらくそうしていたが、満足したのかクラーク様は離れた。


「ところでレティ」


 にこりと微笑む。


「俺以外の男と名前を呼び合うぐらい仲良くなっているのはどういうことかな?」


 あ、これ怒っている。

 逃げ場のない一室で私は恐怖を味わった。



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あらすじ

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アスタール王国に留学に来た、遠国の王女・アビゲイル。

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