再び女子会
あれ以来王子が私に触ってくるのをやめてくれた。
これでとっても快適に過ごせる。
そう安心していたがそうではなかった。
「レティ、今日もとっても可愛いよ」
お茶を一緒に飲みながら、クラーク様は笑顔で私を口説いてくる。
そう、私はあの時、ミスをした。
あの時本当は、口説くのもやめろと言っておくべきだったのだ。さらに言えば、この部屋に不要な時来るなとも言うべきだった。
私は今大きな後悔の中にいる。
もう一度あの魔法の言葉を使おうかと思うが、そう何回も使えば効力がなくなるのが目に見えている。
ミス。その一言しかない。
「レティシア、その綺麗な声を聞かせてくれないか」
「黙ってほしいです」
「それは無理かな」
にこりと笑う。
私ははあ、と目の前でため息を吐く。とんだ不敬だがクラーク様は気にしない。
「レティシア、君はとても努力家で、そんな君をいつも俺は見ていたよ」
「そうですか」
一生懸命口説いてくるクラーク様をあしらう。後ろでマリアがそわそわしている。人の恋愛話が好きな彼女だ。私とクラーク様のやり取りが気になって仕方ないのだろう。
にこにこ私のどこが好きか告げてくるクラーク様に、もう一度私はため息を吐いた。
◆ ◆ ◆
「というわけで、どうすればいいと思う?」
「いや知らないわよ」
茶飲み仲間のブリっ子に言えば、興味なさそうな声が返ってきた。
「さっさとくっつくなり、逃げきるかまでやりなさいよ」
「そんなおざなりな」
「ちなみに私はくっつく方に賭けてる」
「人を賭け事に使うな」
むっとして言うも、ブリっ子は涼しい顔で茶菓子に手を付ける。マリアがお代わりを注いでにっこりする。
「私もくっつく方に賭けました!」
「あなたは賭け事何か覚えちゃダメ!」
私の叫びにマリアはにこにこしている。
純真無垢な子に何てことを教えるんだ。じろりとブリっ子を睨むも、素知らぬ顔でお茶をすすっている。
「あんたの悩みは心底どうでもいい。私はあんたのお兄さんを落とす方法の方が興味がある」
「おっぱい押しつければ」
「あんただってアドバイスする気ないじゃないの」
失礼な、先に答える気無くしたのはそっちの癖に!
「でもまあ、王子に口説くなってのは無理でしょう」
「何でよ」
茶菓子を口にするブリっ子に視線を向ける。涼しい顔で茶菓子を頬張っている。
「口説かないでどうやって相手に好きになってもらうのよ」
「さあ?」
「それもするなって言ったらテンパった王子に手籠めにされるんじゃない?」
「それはいや!」
「じゃあ逃げ道ぐらい作ってあげなさいよ」
ブリっ子に言われてしぶしぶ頷く。
でもなあ。
「あんたに言われると納得したくないのよね」
「ケンカ売ってるのね?」
「マリア、おかわりー」
「聞きなさいよ!」
溜まったストレスはブリっ子で発散しよう。そう決めて私はマリアに淹れてもらったお茶を口に含んだ。