マンホールバンジーキメる前にイカそうめんキメたかった。
「奥方様」
『ぎゃ!!』
今、この状況をなんと説明すればいいのか…
「長が戻られました。」
『お、おぅ…;』
何処からともなく黒装束の女…?の人は私の側に現れるとそっと、そのように伝えてくれた。
彼らを簡単に説明するならば "忍び"
そう呼ばれる人達に囲まれた生活をしている。
何の取り柄もないアラサーの私が突然こんな生活をしていくことになったのか、
事の発端から説明すべきだろうか…
いや、めんどくさいはしょりたい。
え〜っと、あれは…うん、そうだマンホール。
10年ほど連れ添っているワンルームちゃんに残業が終わり命からがら帰ってきて、お疲れ私!!な一杯な〜んてしてみたい憧れはあるがお酒が飲めない私はストッキングを脱ぎつつ風呂場へ直行ーーしかけたとき、
ストン
そんな擬音が合っていると思う。
突然足元の感覚が消えて襲いくる浮遊感。
きゃあっっ!…とか可愛らしい声を出したいところだが
『んがっ』
それが現実だった。
何が起こったのか分からないまま開きっぱなしのマンホールに落ちてしまったような錯覚。
実際落ちたことは無いから分からないけど、うん。そんな感じだった。
いつまでも続く落ちてゆく感覚、真っ暗な視界に『んがっ』から声が出なかったのは、ストッキングを脱ぎかけの変な体制のまま落ちていっているからか。
怖さと驚きと困惑で、なのか。
きっと全部だったと思う。
もう二度とあんなマンホールバンジーしたくない、絶対だ。
ぎゅっと目を閉じると、溢れた涙が コポッ と小さな音を立てて落下していく私から置いてけぼりになった。
今までもすごくすごーーーく不思議な体験をしていたが、更に不思議だったのが落下していく感覚が一瞬のうちに無くなったかと思えば、
次には緑の匂いが鼻をくすぐりパッと目を開くとそこに広がるのは
何の馴染みもない爽やかな森の中だった。
暖かい木漏れ日に優しい風
鳥たちの囁き声も聞こえて、いよいよ私は
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!!!)
自分の頭を心配した。
これは仕事のやり過ぎだったんだ人手不足だからって押し付けられた仕事を何時間も残業しての生活が一週間も続いたせいだ病院行かなきゃこういう症状って精神科?内科?ーーなんてぐるぐるぐるぐる、緑の中で寝そべったまま顔面蒼白になりながら考えていた。
「なづな…?」
小さく
そっと小さく聞こえた声には
どこか聞き覚えがあった。
寝そべったまま声がした方へ顔を向けるとそこには
現代にしてはおかしなーーというか見つかったらお巡りさんに職質のちT捕されるだろうーー格好をした真っ黒な男…?の人が立っていた。
恐怖。
知らない人に教えたはずのない名前を呼ばれ、まさかまさかのこの歳で祝☆初のストーカーか?
普通の一般的な私だったらそんな事を考えただろう。
でも違う、私の感じたのは驚き。
ヲタクな私がどハマりしたPSビュータのドドドドマイナーなソフト戦国忍びRPG
『は…服部、半蔵.....?』
"戦国SINOBI大乱闘"
の主要キャラが目の前で驚きと困惑の表情で立っていたから。
ーーこれは、彼氏いない歴=年齢だった私が
恋なんて太平洋の彼方まですっ飛ばして
ただいま新婚ホヤホヤ1日目!なんて
馬鹿みたいだけど本当になってしまったお話ーー
続く。