3 新庭
地図に書かれていた部屋は、町の中心からは少し外れた、他の住居の間に挟まれ、目の前には城壁がある、光があまり入ってこない薄暗い場所に位置していた。少し壁が凹んでいたり削れているような・・・。こんな所に建てた方も建てた方だが・・・これを貸す不動産会社の人も大変だったんだろう。そのために、余計な情報を書かなかったのかもしれない。こんなのを詳しく書いてしまえば借りる人なんていないだろう。言ってしまえば、ボロ家のような。外見がこれなら、中はどうなっているのか・・・そんな期待やら不安やら、色々な感情が渦巻いたまま、扉の無い入り口を入っていった。
建物の間から漏れる僅かな光が、側面に空いた小さな穴を通り、部屋まで続く通路を微かに照らす。それを頼りに、二人は手を繋ぎ階段を登っていく。10段少々だったが足元が薄暗く見えずらかったため、壁に手をつけながらゆっくりと登っていった。
登り切った二人の目の前に現れたのは、ぽっかりと空いた四角いスペースだった。四方に空いた小さな穴から漏れた光が照らす、外見とは裏腹に綺麗に掃除されたスペースには、ベッドも無ければ机も椅子も無い。何も無い。あたりを見渡しても、ここより上にも横にも進めそうな道は無い。チラシに書かれた場所はここのようだが・・・少し呆気に取られていたが、ようやくリラがぼそっと口を開いた。
「・・・ここの人々がどのような暮らしをしているのか分かりませんが・・・こんな何も無い部屋で普段生活しているのですか・・・なんとも言えない感じになりますね・・・」
シトも小さく頷く。以前いた部屋は掃除はされてなかったがその分瓦礫が散らばっていたため、それをベッドや机や椅子として利用していたが、何も無くてはどうしようもない。
仕方なく二人は担いでいた鞄を床に投げ、中から本を取り出し机代わりにすると、壁に寄っかかり座った。日の光が当たらない壁はひんやりとしていて、触れているだけで心が落ち着くようだった。
ここに来るまでしばらく歩きっぱなしで疲れ果てた二人は寄り添い、気が付くと眠りについた・・・