-1 初会
どのくらいの時間が経ったのかは分からない。疲れたら休み。眠くなれば二人風を背にして眠り。一歩ずつ、一歩ずつ。時折砂が前から吹き付けてくる中、二人は顔をかがめ、腰を折り、風に逆らい進んでいく。
「・・・・・?・・・・・・!」
砂嵐が時折止むタイミングで前を向くと、かすかに・・・壁・・・建造物が見えてきた。砂のような、赤みがかった茶色の壁。もう少し近づくと、それは城壁のような。町をぐるっと囲うような形をしていた。へこんだ所も無ければ崩れた所も無く。人が2,3人通れるくらいの幅の入り口が目印も無くぽっかりと空いているだけで。中に入るための町を守る壁としての意味はさほど果たしてなく、外から町の様子を見られなくするための物になっていた。
「兄上、次はあそこにしましょう。きっと良い物が見つかるかもしれませんよ?」
少女はいつものように抑揚も無い声で少年に話しかけ。少年も何も発することも無く小さく頷いた。
二人は入り口の前にたどり着くと、町の様子を覗き見る。住居だと思われる、窓ガラスの無い穴が無数に開いた建物や、木で出来た看板を扉の前に置いている何かの店だと思われる建物。距離が遠くて何が書いてあるのかも分からないが、人が住んでいる、もしくは住んでいた、形跡はある・・・が。
「人の姿が見えませんね・・・中に入って一度町の中を調べてみましょうか」
二人は入り口を抜け、とりあえず目の前にある置き看板の方へ歩き始めた。その時。
「そこの者ども。止まれ。聞きたい事がある。」
ドキッとして振り返ると、後ろに人が立っていた。二人より頭1つ分ほど高い青年。頭まで届くほどの細長い槍を右手に持ち、腰に剣が入ってると思われる鞘を差し、胴体の部分を革のような素材で出来た鎧で覆っていた。この町の衛士の役割を担っている人だろうか。彼に目をつけられたという事は、中を覗いていたのがよほど不審に見えたのか。それとも単に、あまり見ない顔だから声をかけたのか・・・どちらにせよ。まずは誤解を解かなくては。二人は衛士の方を向き。
少女が口を開いた。
「お役目ご苦労様です。どうしましたか?」
衛士は少女の方を向き直り。
「先ほどまで外から中を覗いていただろう。お前たち、名は何という。どこから来た。何のために。ここに用事があってきたのか。通過するだけなのか。一つずつ説明しろ」
息もつかせぬほど一気に聞いてきた衛士に対し、少女は顔色変えず一つ一つ答えていく。
「私は名をリラと申します。この子は・・・シトと言います。この道の向こうにある町から来ました。何のために・・・旅をしています。数日この町で休憩して、また旅を再開しようかと・・・思っていますが。」
一つ一つ説明していく様子をじっと見ていた衛士は少し怪しげな目線を向けながらも、少し納得したようで。
「旅ねぇ・・・若い男女二人が・・・まあよかろう。あそこの建物に行けば、空きのある家など教えてくれるだろう・・・くれぐれも怪しい事をするでは無いぞ。少しでも変な事をすると・・・」
言うと持っている槍の先を二人の方に向け、
「・・・・・・分かったな。」
そう言うと、衛士は再び警備のためか、壁の外に向かって歩いて行った。
リラは少し安堵したような顔になり、ふっと息を吐いた。そしてシトの方を向き。
「少し面倒くさい事になりましたね。まさかあそこまで・・・とは思いましたが。少し面白くなりそうですね。」
そう言うとシトの手を引き、衛士に言われた建物へ向かっていった。
お仕事の関係でゆるゆると書いていく・・・予定