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時折強い風が吹く。舗装もされてない土の道。砂が巻き上がり、顔に当たるのが邪魔くさい。
どれだけ歩いても周りには何も無い。後ろを振り返っても、戻る部屋はもう無い。自分の後ろが谷底になっているような。ベルトコンベアの上を歩き続けているような。そんな感覚。後戻りは出来ない。する事など許される事では無い。二人で決めた道なのだから。手をぎゅっと繋ぎ、先の見えない道を一歩一歩歩いていく。
「兄上、大丈夫ですか?遅れていますよ?休みますか?」
半歩後ろを歩く少年を見下ろす。部屋を出た時にはしっかりとした足取りで歩いていた二人。1時間も歩いていないはずだが、息を乱していない少女に比べ、少年は肩で息をし、背中が丸まっている。
声をかけられた少年は顔を上げ足を止めると、2・3回ゆっくりと呼吸し、握った手に再び力を込め歩き始める。
少女はそれを見て少し安堵の表情を浮かべると、少年の横に並び、一緒に歩いていく。
それからどのくらい歩いたのだろうか。代わり映えしない風景。10分歩いたのか、1時間歩いたのか・・・地図も持ってなければ、時間を知る術も無く。
後ろを見るのも諦めた。見ても何も無いのは分かってるから。
道を歩いているが、すれ違う人もおらず。砂を巻き上げた風が二人の周りを突き抜けていくだけ・・・
一度立て直した少年も、息づかいが荒くなり、声が聞こえるようになった。
先ほどは息を乱していなかった少女も少し疲れが見えてきた。
「兄上・・・少し休みましょう。無理をするのはよくありません。」
これ以上歩かせるのは大変だと判断し、少女は少年を道の上に座るように促す。
少年は促されるまま、風を背中に受けるように腰を下ろした。背負った鞄から水の入ったペットボトルを出し少し飲み、ゆっくりと息を整える。少女も横に座り、ゆっくりと深呼吸し、目を閉じ、調子を整える。
「兄上。大丈夫ですか?」
少年の顔を見ながら、少女は伺う。少し深呼吸を続けた後、少年は小さく頷く。少女はそれを見、少年の顔を覗いたまま、話し続ける。
「兄上・・・無理をなさらないでくださいね。兄上はすぐ無理をなさるので・・・私が止めなければ、無理してでも歩くでしょう・・・ちゃんと休みたい時は休みたいと言わなければいけませんよ?」
じっと聞いていた少年は事を察し。諦めたようにだんだんと頭を下に下ろし、少女にゆっくりと体を預けた。
「兄上の事はすべて分かっていますよ・・・兄上が何を考えているのかも。ずっと二人でいるんですから。兄上も正直になりなさい?」
握る手に込めた力が強くなる。少年はスッと立ち上がり、少女の方を見る。
「・・・では兄上。参りましょう。」
お尻に付いた砂を手で払い、二人で顔を見合い。前を向き。歩き始める。
この先には何が待っているのか。この道の先には何があるのか・・・
物語は、ここから始める。
ここおかしい とか、単純に感想とか。何か頂けると嬉しいです。