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短編小説でも書いてみようか

作者: 夢見夜兎

初投稿作品です!

コーヒーカップの底が見えてきた。本日2杯目のコーヒーを飲み終える頃、彼女の目は輝きを失っていた。

「もう書けない、限界だ。」

心の声が聞こえる。口に出さなくても何を考えているかは目を見ればだいたいわかる。彼女の前には真っ白な紙や作文用紙が数枚広がっている。どうやら小説を書こうとしているみたいだ。彼女は作家ではない。

さらさらと文字を綴っていく。だが、ある時ふと手を止め胸ポケットからスマートフォンを取り出す。暫く画面と向き合った後、消ゴムで綴った文字を綺麗に消していく。この繰り返しなのでいつまで経っても彼女は物語を創造する事は出来ない。頭の中で描いた物語は白い光に包まれて外界に姿を見せる事なく消えていくのだった。

私はそんな彼女を見守るのが大好きだ。自分にしか見えない何かに立ち向かう、なんと美しい姿なのだろう。彼女が聞いたら怒ると思うが彼女を題材とした小説がさらさら書けてしまいそうなくらいだ。

彼女の頑張ってる姿を見ていると当然応援したくなる。彼女の生み出した物語の完成した世界を覗いてみたい。乾ききった心を新たな空間に飛ばしていただきたい。けれど彼女が物語を創り終えた時、私の頭の片隅に生み出されてしまった彼女を主人公とする物語に幕が降りることになるのかもしれない。それは嫌だ。まだ彼女について書いていたいのにあんまりだ。どうか完成させないで下さい、お願いします。

不完全だからこそ物語は自由に広がる。完全になったら物語はそこで固定される。結局私は不完全が好きなのだ。きっと彼女もいずれ不完全の魅力に気がつく時が来るだろう。いや、もしかしたらすでに気がついているかもしれないが。

好きな作家の新作を読む前はわくわくしてるに違いない。読んでいる途中も夢中でページをどんどんめくるはずだ。読み終えた頃充実感に包み込まれると思う。だが暫くしてなんだか心にぽっかりと穴が空いた気がするのは私だけだろうか。きっと同じ気持ちになる人はいるはずである。

不完全やら完全などを語っている間に彼女は3杯目のコーヒーを飲み始めていた。彼女の瞳は輝きを取り戻していた。私は微笑んだ。

「楽しみにしてるよ」

そう小声で呟いた後私はスマートフォンを取り出し携帯小説サイトにログインし小説を書くページに移動した。

コーヒーカップの底が見えてきたー。

さあどのように展開しようか。≪私の≫物語は幕を開けた。

初投稿作品でした!

彼女と私の関係性や職業、年齢などを読み取れないように書いたつもりなので各自で想像していただけると幸いです。

読んでくださった方お疲れ様でした。ありがとうございました。

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