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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
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繋がれたもの

目を覚ました時、俺はあたりに目を走らせた。

ここは、と状況確認を行う。

保健室だ。


「「ロキ!」」


傍にアウルムとゼロがいた。

ゼロを見た瞬間、胸を締め付けられるような感覚を覚えた。

そりゃ、さっきゼロの遺体を見てきたばっかりだからな。


「……悪い、心配かけたな」

「まったくだぞ、お前魔道具に意識取り込まれてたんだってな。もう平気か?」


恐らく騒いだであろうトールやソルのことを思い浮かべ、ふとソルの死に顔がよみがえってきた。

守れなかったらああなる。

最後に俺を見て微笑んだナナシの姿を思い出すと、あの魔道具のことが気になってきた。


「おい、まだ動かない方が」

「あの魔道具がどうなったか知りたい。今何時だ」

「お前が倒れてから20分は経ってない」


ゼロは俺を止めようとするが、アウルムは無駄だと知っているらしく素直に答えてくれた。


「一体何があったんだ?」

「……そうだな。前世だったかもしれないやつに会った、ってところか」

「……」


アウルムははっとしたよう右目を押さえる。そっか、そっちの目だったんだな、あの目。


「……ナナシに会ったんだな」

「もう、崩壊したっぽいけどな」

「……礼の一つでも言いたかったのになァ」


ゼロだけ置いてきぼりにして俺とアウルムはそんな会話を交わした。ゼロは俺たちを止めれないとみてかさっさと移動準備を始める。

俺はナタリアにリンクストーンを繋いだ。


「ナタリア」

『あっ、ロキ様!? 御無事ですか!?』

「ああ、問題ない」

『よ、かったぁ……』


安心したというのをありありと語ってくれる声音でリンクストーンから声が聞こえてくる。


「さっきの魔道具はどうなってる」

『先生たちが回収していきましたよ』

「職員室か?」

『いいえ、たぶん高等部へ持って行ったのではないかと』

「分かった」


仕方ない。

そう思って校庭を見やると、そこでグリフォンに通せんぼされている先生の集団を見つけた。


「……校庭に先生がいるんだが」

『えっ? あ、本当だ。あの先生たちが持ってますよ』

「出て来てくれ」

『へっ!? は、はいっ』


ナタリアを呼び出し、俺はアウルムとゼロを見て、さくっと転移する。3人で先生たちの後方に出ると、グリフォンがけたたましく鳴いた。茶色の巨躯を誇るそのグリフォン、セトを主と定めたあいつであろう。


「先生方」

「!?」

「フォンブラウ?」

「ロキ君?」


先生は3人で、体術指導のアラン教官、魔術指導のヘンドラ先生、そして魔物学のハインドフット教授である。

ハインドフット教授の手の中には、丁寧に結界に包まれた本があった。崩壊を起こしかけている本だ。


「その本、魔道具だったものですね」

「危ないかもしれないから、一度調べようという話になっているのです。それをこのグリフォンが」


ヘンドラ先生がそう口を開いた。俺は小さくうなずいた。


「その魔道具を俺に譲っていただきたいんです」

「フォンブラウ、聞いていたかしら? これは危ないかもしれないのよ?」

「無理矢理神の力を借りてこの世界にねじ込まれた魔道具ですからね。そりゃあ調べたいかもしれませんが、させません」


俺はあえて高圧的な態度をとることにした。おそらく彼もそんなに調べられたくはなかろうよ。


「それは、特定の人間が開くと術が発動する仕組みになっていたはずです。そしてその対象者は俺でした」


ハインドフット教授が俺を見つめてくる。


「……何故わかるんだい?」

「未来を知っているようでした。託したいものがあると、俺を引き込んだようです」

「……危険ではなかったのかな?」

「ええ、でもロクなものじゃなかったですよ」


セトを主に選んだこのグリフォンは、たぶん、何か感じ取っていたのだろう。

俺の方へ寄ってきて、俺に頭を擦り付けてきた。


「どうしたんだ?」

『……』


グリフォンは答えてこそくれなかったが、それで何となく事情は分かった。

彼はナナシを知っている。


「……あいつは、お前にとっても大事な奴だったんだな」

「……何かを、知ったのですね」

「……はい。もう俺は大丈夫です。御心配をおかけしました」


ハインドフット教授の声音が、ほっとしたようなものに変わる。半年は迷惑を掛けていたのだから、まったく、もっと周りの機微を察して動かねばならない。


「……まったく、とんでもないルールもあったもんだなぁ」

「でも、そのおかげで成長するものなのではないでしょうか」


俺はとりあえずそんな言葉を返しておく。そう思っているのは事実だからな。

ハインドフット教授は結界を張られた本を俺に手渡してくれた。


「いいのですか」

「ああ、だってこんなにもグリフォンが雄弁に語っているじゃないか」


ハインドフット教授から受け取った本を俺はそのまま工房へ持って行くことにする。


「ゼロ、ここで待機。すぐ戻る」

「ああ」

「アウルムはどうする」

「ついて行こうかね」


俺とアウルムは頷き合い、同時にその言葉を紡いだ。


「「【箱庭(アトリエ)】」」





俺の工房に入って一番目を引いたのはアホみたいにでかくなった属性クリスタルである。

なんじゃこりゃと言いつつテーブルに本を置き、クリスタルの収穫を始める。頻繁に訪れるわけじゃないがこれは酷くないか?


「死徒化したお前に会ったんだろ? だったら当然だ」

「は、ナナシって死徒化した俺の事限定なわけ?」

「ああ。俺がアイツに身体をくれてやる羽目になったのは後にも先にもあのルートだけだ」


アウルムの言葉を聞き、少しアウルムが切なそうに目を細めているのを見て、どこ行っても俺とこいつは友達になれたんだろうな、と思う。

実際俺は別に何か彼の持つ力が欲しくて彼を受け入れたわけではなかったし、そもそも知らなかったわけだし。


「そんだけきついことがあったってことだよな」

「ああ。教えてはやらねーけどな」


アウルムの相変わらずの反応に俺は笑った。強情な御方である。

まあ、俺自身そんなロクな思考回路はしてなさそうなのは認める。

そもそも、一体どうやったら俺が死徒になるなんてことになるのか。


「一ついいか」

「ん?」

「死徒列強ほぼ全員と面識があるのって、俺以外にいたか?」

「――ナナシだ」


ビンゴ。


恐らく、ナナシだけがあれを仕組んだのではないだろう。俺だって知識は手に入れたいし伝えたい、本当に自分が間違ったというのならそれの二の舞は御免だ。


つまり、他のパラレルワールドの高村涼という人間だった魂もやれるやつは同じことをしていると見て間違いない。

で、あるから、俺のところに一度きりの魔術で伝えてきたことがあるということは、最も近いルート。


「ラーの名は出ず、セトナがいたと言ってたからな、まさかとは思っていた」

「ああ、セトナとラックゼートはいたりいなかったりするからな」


アウルムの言葉と共に俺は属性クリスタルの回収を終えた。

アイテムボックスに放り込んで両手が空いたところで、アウルムに抱き着かれた。


「?」

「頼むから、あんなつぎはぎだらけになってくれるなよ」

「――おう」


アレを見たのなら、そう言うよなあ。

俺はそんな感想を抱きながら、腹の前を通ってがっちり俺をホールドしているアウルムの手に自分の手を重ねた。

なんだかんだ、心配性なのであると、でも人前だと気にしてあんまりしてこないと。それに気付いたのはつい最近で。


「アウルム、決めたぞ」

「?」

「俺は、戦場には出ない。ああ、任せとけ、皆学園から出さねえ。戦闘は全部デルちゃんたちに任せとく」

「!!」


アウルムが大きく肩を跳ねさせたのが分かった。


「本気か……?」

「もちろん。お前がやたら俺に構ってくる原因にも、思い当たったしな」

「……」


アウルムは俺に引きはがされて顔を見られないようにだろう、腕にさらに力を込める。

俺の力じゃこいつの腕力にゃ歯が立たないんだがなー。


「だって、生きるにはそれしかねーじゃん?」

「……っとによォ……軽く言ってくれやがって……」


どんだけ心配してるか知らねーくせに、と言われて、言葉は呑み込んだ。

死んだ後のアウルムのことはよくわからないけれど、でも確かに、分かることがある。


ナナシは、お前の忠告を聞かなかったことを、酷く後悔していたよ。


アウルムが泣き止むまで俺たちはしばらく工房にとどまった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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