慟哭騎士
……この辺読んでると、続きかかないと怒られそう(自分なら怒る)
足早に暗い廊下を歩いていくそいつの後を追いかけていく。俺よりもだいぶ背が高いことから、おそらく彼の姿は高校時代後半もしくはその後の姿であろうと想像がついた。
つぎはぎだらけの彼の身体、おそらく皆の死体からつぎはぎしてきたのではなかろうか。
ということは、確実にこいつはロードとの繋がりが濃くなっているはずだ。
「お前、一体なんなんだ」
「慟哭騎士」
「……?」
そいつは扉の前で立ち止まって、そう言った。
「慟哭騎士と、呼ばれている。仲間を喪い、すべてを奪われた騎士の慣れの果て。滑稽だろう?」
扉を開けて、そいつは俺に入室を促す。
慟哭騎士と聞いて思い浮かんだのは、デュラハンだった。
「別に首がとれるわけではないぞ? まあ、確かに一度首は失ったがな」
「思いっきりデュラハンじゃねーか!」
ツッコミを入れたのは仕方ないと思いたい。
部屋に入ると、そこにあったのは――まあ、皆の遺体だった。
「……」
「仕方ないだろ」
俺が避難がましくにらみつければそいつは苦笑を零した。
「もうわかってると思うが、俺はロードにこの身体にされていただけだ。御丁寧に皆の遺体まで持ってきてくれたよ。『こっちの方が寂しくないでしょう、お姉さんたちと一緒にいられるんだから』ってな」
その言葉で、このパラレルワールドのソルたちも転生していたと知った。
遺体の中に、クルミの遺体はなく、代わりに見知らぬ緑の髪の令嬢の遺体があった。
「この令嬢は、久留実か?」
「ああ」
ナタリアもカルもロゼもいて、なるほどどうやら戦争にリガルディアは敗北を喫したとみられる。
「死徒って、国の数だけ居るらしい。俺は、リガルディアの死徒になった」
「……人間は」
「全滅に決まってるだろう?」
彼にすすめられて椅子に座った。
「お前が慟哭騎士になんてならねえように祈っといてやるよ」
彼はそう言いつつ愛おしげにソルの遺体に触れていた。
血の気の無いソルの顔。
そういえば、エリスとルナの遺体がない。
「なあ、エリスとルナは?」
「……あいつらは、後方に居たからな。【荒廃都市】で皆と一緒に死んだ。死体は残ってなかった」
2人は恐らく回復魔術の使い手として後方支援に回っていたのだろう。そして【荒廃都市】で国ごと吹っ飛んだか。
滅んだ都市とはとんだネームセンスである。
「お前にこの惨劇を回避できるか」
「いや、無茶言うな。【荒廃都市】って神代の魔法じゃねーか。いくら俺が神子でも無茶だわ」
「ああ、確かにな。神子でも手も足も出なかった」
ちょっと待てよ。
それって、戦ったのか?
「何と戦ったんだお前」
「分からない。ただ、神に近い存在だった。デスカルよりも圧倒的に下の存在だろうが、それでも俺たちには手も足も出なかった。ロードがひねられる相手だぞ。魔王も叩き潰された。エングライアももういない。セトナも死んだ。残っているのはカガチとロルディア、シグマくらいなものだな」
後は、大陸が違うから、狂皇も生きているな。
そんな彼の台詞に、俺は悟った。
なんかやばい奴と戦うことになる。
いや、そもそも神子のそれが効かないってどういうことだ。
十中八九欠損魔法のことだろう。それが効かないってことは、シヴァの権能の上を行く力をそいつが持ってるってことになるんだぞ?
そんな破壊の概念、デルちゃんぐらいしか。
「俺は、仕える神をデスカル――いや、サッタレッカに選んだ。地球にはいなかった神だが、強いのは知っているんじゃないか? 何せ、あの御方はシドに甘い」
シドを守るために、この世界を放棄なさった、と彼は続けた。
え、それって、ちょっと待てよ。
この世界は放棄された世界?
「だから俺はお前に懸ける。……もう、時間がない」
「おいちょっと、待てよ! どういうことだよ、デルちゃんは此処を見捨てたってことかよ」
「そうしなければ間に合わなかった。俺たちはもういいんだ。お前に伝えられた。俺たちの世界はもう存在しない。アイツに全て奪われた。だから、お前に懸けた、お前に託したんだ、ロキ・フォンブラウを」
彼の目から光が失われ始めたことに気付いた。
この世界が破棄されていたとしたら、じゃあここにいる彼は。
彼が維持していると考えてまず間違いないこの空間は。
「限界、だったんだ。俺の。お前なら、きっと、答えを迷いなく選んでくれると信じている」
自分だから信じることができる。最後に俺らしく俺を信じさせてくれ。
彼はそう言って、顔にひびが入る。
次の瞬間、膨大な知識を詰め込まれる感じがして、頭痛に苛まれる。
「好き勝手、言いやがって……!」
「そう、怒るな。……お前は、大学院に行けよ?」
なんだか、アイツの願いを託されてしまった気がして、むずがゆくなる。
また、閃光に辺りが包まれ始めた。世界にひびが入り、崩れ落ちていく。
「慟哭騎士ッ」
俺は手を伸ばす。
「テメーの名前は何だ!」
俺だ、お前だとしか聞いていない。
お前の名前は、何だ。
彼は目を丸くして、それから微笑んだ。
「……ナナシ。傭兵の、ナナシだ」
俺の記憶を、纏めておいてやる。
そう、声がした気がした。
俺の名前は、ロキだ。
そう俺は言ったつもりだったが、彼には、届いただろうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




