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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
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夢の中

今回少々ぼかしてはいますが不快な表現があるかもしれません。

翌日。図書館にやって来た俺とナタリアは、静かに息を吐いた。

図書館は暗いが、灯として光球が浮いており、階段はガラスの如く透き通った光の板で構成されていて相変わらず幻想的だ。


この場所には去年はあまり足を運ばなかったが、調べ物をするにはうってつけであるとはリヒトの言である。

実際、魔物図鑑をあさっていた時は本当に助かったしな。


俺とナタリアはまず並んでめぼしい図書を探していく。

ドッペルゲンガーについての本。


ドッペルゲンガーが出現するとまず死ぬ。

故に研究はあまりなされていない。


本をいくつか手に取ってみて、椅子に座った。

青いハードカバーの本をざっくりと読みこんでいく。速読にはもともと自信があるからな。


「読むの早いね」

「そこそこ速さには自信があるぞ」


ナタリアの言葉を簡単に受け答える。

目を通すのはひたすら肉体と意識を切り離す類の魔術の項である。


シオンの話から考えて、おそらくシオンは身体と意識を切り離された状態にある。シオン自身が言っていたが、俺の魔力量の方が多いとのこと。俺の魔力量の方が多いことと彼女の命の危険が高まることがイコールなので非常に厄介な問題でもあり、なおかつ早急な対策が必要。


ナタリアが本を探し、俺がひたすら読むという作業に入ることになった。ナタリアには悪いと思っている。今度何か奢ろう。


リガルディアにおける転生者への洗礼みたいなもの、それをシオンも知っているということだろう。そしてこの、ナタリアも。直接教えてもらえないのならばその資料を提示してもらうだけでもだいぶ違うだろうということで協力してもらっているのだ。


どんどんどん、とちょっとばかり手荒に本を扱うナタリアを見ていると、苛ついているというよりは、テンションが上がっているといった風である。


――彼女もロキと同じく々この世界をループ転生しているようなので、鬱憤が溜まっていたのもあるのだろう。


きっと彼女は今回こそ未来に進めると、そう考えているのだろう。

俺だってハドの言葉を聞いて絶句したものだ。

本来ならばイミドラ2の時間軸でのハドは親友と呼べる人間が2人いて、そいつらと楽しく学園生活を送っている。


ゲーム通りならば。

だが、ゲームではトゥルーエンド以外にそこへ進む道がない。

いや、むしろダークとバッドの後にも普通の学園生活がある。

なぜなら、ダークもバッドも被害に遭うのはヒロインと攻略対象のみである。

戦争は起きない。


今度は学校へ行きたい、といったハドの顔を忘れられない。

何故か、懐かしい気がするのだ。

懐かしくて、けれども少し指先は空を切る感じ。


恐らくだが、俺自身も、ずっとループ転生しているのではないかと思う。

ぼんやりと、懐かしい感覚というものを、思い浮かべることがある。

俺の感覚はそれだけなのだが、その感覚を抱く感覚がはっきりしているのが、カルやエリオ殿下、ソル、ナタリアとごく一部の人間であることに気付いた。


ハドやゼロ、アウルムにも似たような感覚を抱いているので、おそらくこの辺が、俺とかかわりが深かったメンツではないかと思う。


この資料にもなかったな、と、読んでいた本を閉じ、次の本を手に取った。

その本は、とても薄かった。

著者が書かれていない。


本を開いて、気付いた。

この本は不味い。

魔道具じゃねえか!


「ナタリアっ」

「?」


俺は慌ててナタリアの名を呼んだ。ナタリアはこっちを見て、目を見張った。


「魔道具ッ……!? 離れて!」


ナタリアのやつ、分かってて寄越したんじゃねえのかよ!

悪態を吐く暇もなく俺は椅子を引いて離れようとしたが間に合わず。

光に包まれて俺は意識を手放した。





「……どこだよココ」


小さく俺はつぶやいた。気が付いたので状態を確認すると、俺はどうやらどこぞの建物にいるらしく。ベッドに寝ていたので身体を起こし、周囲の状況を探った。


白黒青赤金銀の6色で構成された部屋、天蓋付きのベッドにはさすがにビビった。

床は赤と黒のタイルみたいなデザインの絨毯が敷かれている。壁は黒、調度品の装飾部分に白と金銀が使われ、随所に青が見えた。


「お前の部屋だよ」

「!」


俺は急に返ってきた声に、声の主を探した。

声の主は、騎士だった。

だが、すぐに分かった。


「……俺?」

「ああ。俺はお前だな」


そいつは静かに鎧を解いた。おそらく、魔力で作っていたのだろう。

流れるような銀色の髪、ラズベリル色の瞳は左側が眼帯に覆われている。

間違いなく、この、令息の顔だった。


だが。

俺はこいつを警戒するほかなかった。


何故ならば。


「魔力量が尋常じゃねえな」

「当たり前だ。死徒になったのだから」

「!」


そいつは眼帯を外す。その下から、金色の瞳が現れた。

俺は息を呑む。


「……まさか」

「ああ。この目はシドの目だ」


シド、と呼んだこいつに俺は理解した。

恐らくこの目の前にいる俺は、どっかのパラレルワールドの俺なのだろう。


「カカカ! これなら、デスカルに魂売り渡したのも無駄じゃなかったな」

「! デルちゃんに?」

「当然! 死徒になるには代償が相当いるんだぜ?」


こいつが何を代償に払ったのかなんて理解したくない。

が、そいつがわざとらしく服を着崩して見せてくるものを見ていれば、嫌でもわかる。


「う、ぜっ……」

「目が離せないだろ? ああ、目を反らせばお前は俺と同じ運命を辿るだけだからな」


肌が所々白かったり、装飾品としてつけているミサンガのようなものの束であるとか。

朱色のそれ、オレンジのそれ、翠と黒のそれ、紅色のそれ、金色のそれ、黒いそれ、薔薇色のそれ。


ああ、分かったっての、やめろよ、畜生!


「皆死んだのか」

「ああ」

「守れなかったのか」

「ああ」


仲間を売るわけがない、俺なのだから。

ソルもルナもセトもエリオ殿下もカルもゼロもロゼも、皆死んだか。


身に着けている宝飾品に使われている魔石が誰の魔力の結晶なのかとか、予想できすぎててもう嫌だ。


会ってそうそう俺を不快にさせるこいつの意図は大体分かってはいる。

恐らく、この魔道具にはあまり時間がない。

であるが故にこうしているのだろう。


「俺を疑いはしないんだな」

「俺だからな、俺が仲間を売るわけねえ」

「……じゃあもう俺は俺とは言えないな」


自嘲気味に笑ったそいつに俺は小さく舌打ちした。

何でこんなことになったのかはまあ、アウルムに聞いてみようか。時間が無くて弾き出されたら、な。


「それで、何を伝えるために引きずり込んだんだよ?」

「薄々気付いてるだろうが。もちろん、お前とシオン嬢の関係についてだ」


ついてこい、と言ってそいつは部屋を出ていく。俺はその後を追った。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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