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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
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学食にて

学食にトールと2人で足を運んだ。

スカジ姉上は高等部に上がってしまった。故に、向こうから会いに来てくれない限り会うことはない。


トールと共に、上位貴族の席へ足を向けた。俺は普段は使わないが、トールがいるのだから使った方がいいだろう。

俺たちは従者を連れているといっても、そこまでいろいろと世話を焼こうとする主人至上主義タイプではないからな。


というより、ゼロのヤンデレルートを阻止したのがアウルムだと知ったときの俺とソルの反応ははっきり言って、ゼロには失礼だったと思っている。

いや、だって下手したら相手の判断で俺はなすすべもなくゼロに殺されるしかないのである。


恐らく、それでもいいと思うくらいには俺も――ロキ・フォンブラウも追い詰められてしまうのだろうが。


「兄上は食堂を使っていなかったのですね」

「ああ。まあ、ほら。最初は俺も平民らしく過ごして自由にしてたからな、何の問題もなかったんだよ」


席に着いて料理を注文する。ウェイターがやってきて注文を取り、カウンターへ向かった。


「何故ですか。何かあったのでしょう? 明らかに隠してましたからね、ないなんて言わせません」

「いや、言ったぞ。ルビーたちが既にシメてるってことは終わったってことだ」


一応そう言ってやるが、トールが引く気配はない。

いや、こいつ何でか俺とその周りの奴らをやたら守ろうとするようになっている。おそらくだが、自分の適性が雷で、それを気付かせるきっかけになった俺に着いた家庭教師等々のことに感謝なんぞ示すつもりだろうが、それにしても酷すぎる。


ゲーム内でのロキは確か、一度言ってしまった見下し発言の代わりに周りの悪い虫を追い払っていたのだったとのこと、これはクルミからの情報だ。


俺が学食に現れたので周りの生徒達が俺を見る。俺たちはさっさと食事を済ませてしまうタチで、待ち時間も食事中も特に会話もない。が、今日は声を掛けてくる者があった。


「せっかく兄弟で食べるというのに、会話の一つもないなんて、気の利かない兄ですわね」

「……ロゼ嬢」


ロゼである。

彼女はどうやらこれからカル殿下たちと食事をするために2階へ上がってきたところだったようだ。


「あら、ゼロとアウルムは?」

「ゼロはドラクルからの呼び出しに応えた。アウルムはレスター教授のところへ向かったぞ」

「あら、護衛も兼ねてるのにそんなんでいいのかしら( ´∀` )」

「言ってやるな、あいつらしか連れてこなかったのは俺だからな」


どちらにも事情があるのを知っていてその上であの2人だけ連れてきたのだから。

ロゼはカルとエリオ殿下の方を見やった。ふむ。どうするかな。トールに視線を向けた。


「トール、こっちにこい。殿下たちも御一緒しませんか」

「ああ、そうさせてもらおう」


カルからの返事が返ってきた。

カル、エリオ殿下、ロゼが席に着く。


「さてと。じゃあ、これだけのメンツが揃ったのだから、さっそくロキとシオンについての話を皆に聞かせなくちゃね、リョウ?」

「何かあったのか……?」


事情を全く知らないエリオ殿下が首を傾げる。

俺は周りに誰もいないのをちゃんと確認してから、言葉を選びつつ現状を告げた。


「現状、ドッペルゲンガー状態に因って自分の身体がいろいろと不調をきたしているようなのです。カル殿下はご存知かも知れませんが、もう1人の人格に対する激しい殺衝動等がそれにあたります。そろそろ関係者に対しても無意識に排除しようとするようになってきたので報告をと思いまして」

「ドッペルゲンガーって……そんな状態に陥っていたのに何も言わなかったのか!? どうして!」


エリオ殿下の方が飛びつきがよく、俺とロゼは顔を見合わせた。


「……すまない、ロキ。本来ドッペルゲンガーというと、死期の近い者の許へ現れるとされているものでな」

「前世でもそんな感じでしたので、問題ありません。今回問題なのは、人工的に作られたものであるという点です。意図的にこう(・・)することで俺を削りに来ているものかと」


敵の姿が見えないのって結構不安になるもので、いくらデルちゃんたちに戦闘を丸投げしていても、知らないうちに蝕まれているというのはくるものがある。


「明日ナタリア嬢の手を借り調べようと思っております。シオンの言う“ループ”も気になりますので」

「……そうか。無茶だけはするな、ロキ。俺たちにできることといえば、お前たちの邪魔になるものを抑える程度なのだから」


カル殿下はそう言って小さく息を吐いた。


「転生者には自力で情報を集めさせねばならん、それがガルガーテより続くリガルディアの掟だ」

「はい」


カル殿下の言葉に俺は頷く。

転生者というのは、なかなか自己完結して自滅するものも多いらしい。

周りは、頑張れ、でも手は貸さないよ、というのが基本スタンスになる。


「調べたら俺に報告を上げてくれ、ロキ。こちらでも何かできないか調べたいからな」

「あ、それについてなんですが、既にネイヴァス傭兵団から協力の打診がありました」

「ネイヴァスが?」


カルが驚いたように目を見開く。俺は小さくうなずいた。


デルちゃんたちから打診があったのは事実だ。

とにかく戦場に出るな、ドッペルゲンガーの解除も戦闘もすべてネイヴァス側が行う、というもの。


こちらにしか利が無いように感じるのだが、全く無償というわけでもなくて、俺の行動を制限する代わりに彼らの作戦の成功率が上がるのだそうである。どの辺が、とは言ってくれなかったので怪しいところだが。


少し食堂の天井を見上げて、深呼吸を一つ。


「自分の無力さを感じますね」

「まったくだ」


カルは苦笑を零す。俺はロゼに視線を向ける。


「俺たちはソルたちへの情報の受け渡しはしない。ソルもクルミもそうヤワではないし、どちらも俺の行動パターンくらい理解している。そのうち勝手にエングライアに行きつくだろう」

「ちょ、死徒と親しいあんたたちが圧倒的に有利なんですけど!?」

「俺は当事者なんだぞ? なんとなくシオンたちの雰囲気で理解はしてるがな」


きっと、俺とシオンの間にあるモノはとんでもなく重たいものなのだろうというのは容易に想像できる。

だが。


「……こんなことを比較に出すのは不誠実だとは思うが……きっと、俺よりもソルの方が辛かった。ルナの方が辛かった。俺は結果への最後の一手を他人に預けることはないだろうからな」

「……わかったわよ」


ウェイターを呼び、料理を注文したカルたちは俺を満足気に見てくる。まったく、一人称が私になったあたりで分かっていたつもりだったけれども、カルはどんどん腹黒くなってるなあ。


久々に聞いたカルの一人称“俺”に、少しばかり胸が温まった。


ソルたちは放っておいても俺たちと同じところまで来るはずだ。

俺はこれから先もしばらく自分のことで手いっぱいになってしまうのだろう。

そうなったら、カルに皆を任せることになるだろう。


「カル、皆を頼む」

「ああ、任された」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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