食堂へ行こう
1年生たちは俺たちの様子を見て慣れてきたのか、授業終わりごろには俺たちに食事に誘われれば一緒に食べます! という元気な返答を返してきてくれるまでになっていた。
皆卵を受け取って、総勢15人。
俺たちはロゼも誘って一緒に食堂へ行こうという話になって意見が割れた。
「ロキはまだ食堂には行かないだろ?」
「でも食堂の使い方も教えないと」
「じゃあロキ抜きで行けよ」
「いや、俺が抜けたらアウルム抜けちまうぞコミュ障ども」
俺も口出ししてるんだがこれがなかなか。
ゼロはアウルムが酸を掛けられたのをまだ気にしているし、そもそも今はルビーたちに全てが筒抜け、相手がどうなるか分かったもんじゃないので俺自身が行かなければいいと思っていたがよく考えたらアウルムやゼロも一緒にボイコットしてくれてたんだった。
ナンテコッタイ。
「コミュ障だと? この私が?」
「ソルの心配なんざしてねーわ。カルも除外。セトはまず喋らねえ、ゼロはアウルムのことまだ引きずってて周りに敵意剥き出し。ゼロ、お前もうちっと自制しろ、お前の一撃は魔術師の防御障壁だって一撃で砕くんだぞ」
「知ったことか。人間よりも精霊の側について何が悪い」
「だよな。はい決定、俺たちのボイコット終わり」
「ロキ!? な、アウルム、放せ!」
ゼロが無表情を珍しく崩して俺に掴みかかってくる。威力を殺して受け止めてやればアウルムがすかさずゼロを羽交い絞めにした。
「アイツの脅しはとっくに終わってるんだぜ? ルビーにかなりシメられたっぽいしな」
「あちゃー、もう遅かったか?」
「しゃーねーよ、エメラルドは索敵能力が長けてんだ。アイツ、ルビーにも懐いてっから、ルビーに包み隠さず報告するだろうしなァ」
アウルムの言葉に俺は苦笑する。
ルビーは土属性と火属性を持っているせいで爆発属性を作り出している。
ちなみに、サファイアは水だから濁流を、エメラルドは風だから砂嵐をそれぞれ得意としているようだ。
アウルムはゼロを放してやり、ゼロは不服そうにアウルムを睨む。
後輩たちはハラハラして俺たちを見守っていた。
「ま、今日でボイコットは終了ってことで」
「やっと学食食べれる!」
♢
俺たちは大人数だったので何班かに別れて食事を摂ることになった。
俺とアウルム、ゼロが一緒なのだがなんだってこんな緊張するメンツしかいねーんだよ。
公爵子息、半精霊、イミットて最悪じゃねーの。
くじ引きで決まったとはいえ、こいつらくじ運なさそうである。
貴族2人、特待生1人。
「あ゛に゛う゛え゛え゛え゛え゛え」
「トール、どんだけ俺と一緒になりたかったんだお前……」
「うわあん(ノД`)・゜・。」
俺はトールの頭を撫でてやる。
こんなにお兄ちゃんっ子だったっけ?
「兄上えええ」
「トール、よし分かった、晩飯一緒に食おう。俺散歩行ってくるからちょっと遅くなるが良いか?」
「兄上ええええ!!」
俺にしがみついてきたので顔はうかがえなかったのだが、いやはや声だけで大体わかったわ。
春休みの間に俺が作ってやったフード付きローブはトールが着るとなかなか様になっていてちょっと嬉しい。
「何か調べ物するのか、ロキ」
「それは明日だけどな。とりあえずドッペルゲンガーについて調べるつもりだ」
「ヒントの本とってってあげようか?」
「お前もそっちか」
ナタリアが言い出したのでお前もかとツッコミを入れてやった。アウルムといいナタリアといいシオンといい大変なことである。
調べ物手伝ってくれる気らしい。
「明日なら午後空いてるよ」
「来る気かよ」
「もちろん」
ナタリアが明日の午後は付き合ってくれることになった。
とにかく俺たちは別れてそれぞれ席に着く。トールとカルとエリオ殿下とロゼが一緒になったのはまあ、仕方ないというか。
そこのメンツだけはいつもと変わってないけど仕方ないよな!
大事だからな!
注文の仕方なんぞすっかり忘れていたのだがまあ、問題はない。分かる。
「このメニュー表から選んで、注文できる。ウェイターを呼ぶのもありだ。呼んだ方が楽かもしれんな」
「え、いいんですか」
「そういうサービス業だぞ。平気平気」
結構恐縮してしまう生徒が多いようだが、流石に去年のアウルムが酸をぶっかけられた事件のせいで上が即行で改めていたらしい。ま、俺たちのボイコットがあれの影響もでかいとすぐに皆気付いたようだったしな。
「平民だからって特に何があるわけじゃないんだぜ。貴族ばっかだから貴族も特別扱いはないしな」
「アウルム先輩って不思議な人ですね」
「そうかァ?」
アウルムは笑ってメニュー表を手に取った。
今日は何食おうかな、と言う。この辺って、前世とあんまり感覚変わってないんだよな。
俺とゼロもメニュー表を眺める。
グラタン食おうかな。ラーメンはまだない。
ウェイターが必ず見回る形にして虐められる生徒が出るのを防ぐ気になったらしい学園側。アウルムの例は極端ではあるが、まあ、アレ一歩間違えばソルとルナに牙が向いていた可能性があったのは否めないので、次はないがこれ以降の参考として事例提出はさせてもらおうと思う。
生徒会にでも行ってみりゃいいだろ。
全員注文をして、料理が運ばれてきたところで食事を始めた。どうせ俺たちは午後には何もない。
「お前らは午後あるんだっけか」
「「はい」」
「自分はありません」
「んじゃ、お前さんだけ先に散歩についてくるか? 魔物が走ってるの、見てみたいだろ」
「はい、ぜひ!」
特待生君は俺らと同じで午後は何もないようなので、散歩に一緒に連れ出してやることにする。
泉のグリフォンたちがこっちに飛んできそうで怖いんだよな。
たぶんそんなこと考えたらホントに空気読んでやってくるから頭の隅にその考えをさっさと追い払う。
恐らく1年生を誘ったことがばれるのでうるさくなるであろうトールを思いながら、俺は運ばれてきたグラタンを口に運んだ。
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