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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 後期編
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閑話 シオン

ぼんやりと物思いにふけっていれば、ロキが部屋に入ってきました。

私たちは普段違う部屋で過ごしております。


ドッペルゲンガーと彼らが称する今の私たちの現状は、とても厄介なものです。

それでも私とロキはちゃんと生きていかねばなりません。


ロキが私の存在を完全に消してしまおうとする前に、このチャンスを生かさなくてはなりません。


私はこの世界に辿り着くまでに沢山の世界を見て回ってきました、いずれも私にとってはハッピーエンドとやらではなかったですが。


私のいた世界にはいずれも必ずいた人がいました。

それが、シドです。

彼がアウルムと名乗っていることはありませんでしたが、必ず、シドという不良生徒のような半精霊の少年はいました。


彼は、いつも私を助けてくれました。

そんな彼は、いつも私と会う時はゼロからスタートでした。

ナタリアは時折私と会ったことがある言動をちらつかせていましたから、転生者なのだと認識してはおりました。乗ったことはありませんが。だって彼女、時折私たちを裏切るのですもの!


そちらの方が彼女の家にとってはいいのだと理解してからは何も言わなくなりましたし、彼女がどういう条件で裏切るのかを見極めてからは上手く彼女を味方に引き込む方法も考えました。


カル殿下が、私に言ったことがあります。


「お前、ロキから離れて辛くはないか」


と。


ええ、もちろん辛いですわ、痛いのです、寒いのです。

そう返せばやはりかとカル殿下は仰って、私に言いました。


「君は、本当は此処にいるべきではないのかもしれない」


私だってわかっていました。だから、特に驚くこともありませんでした。

ロキはそれでも何とか私を攻撃しないようにと手を打ってくれています。でもこのままでは彼自身が動けなくなる可能性だってあります。


今必死に、何とか私の入る魔導人形(オートマタ)の調整を行っているようですが。

早く切り離さなければ、彼自身がおかしくなってしまうかもしれない。


けれど、これはチャンスなのです。


私と彼が一緒に居るからこそ打てる手が一つだけあるのです。

もちろん、それをするためにはネイヴァスの協力は欠かせなくて、彼には多大な迷惑を掛けることになるのですが。


私の髪を弄っていたロキが手を止めました。

結い終わったのでしょう。


こうされているのが自然というか、私は動かないのが普通のような気さえします。


彼は私がただ物としてここに在るだけならば特になんて反応しないことが分かっています。

なので彼が入ってきたらすぐに私は動きをとめなくてはなりません。


それは置いておいて。


今日は王妃様の主催するお茶会なのです。

それと、ロキはクルミ様たちに渡すための服もできたからということで持って行くことにしたようです。ハカマと呼んでいましたね。


今日の私は青いドレスを身に纏っています。ええ、コルセット使ってませんが問題ありません、人形ですから。

ロキの方はワインレッドのコートを身に纏っています。あまり目立ちたくなかったようですが、金糸で刺繍の施されたそれはアウルムが今日に間に合わせて作ったモノ。着ないなんて許されるはずもなくこの状態です。


私はパーティ会場には行きません、この部屋で待機です。けれど、じきに消えるのであるから外に出す必要などありませんもの。

ロキは小さく、「ごめん」と言って部屋を出て行きました。


彼が気に病むことではありませんから、問題ないのですが、どうにも気負ってしまうようですね。





パーティ中はロキとアウルムと共にナタリア様とお話に興じました。

もちろん、私はリンクストーンを介しての会話ですが。


『ナタリア様』

「シオンさん」


2人でお互いに少し世間話をして、ひとまず目の前のことについての対応に追われるのを覚悟するほかないという結論に至りました。

私たちはこれから起きることを大体知っていますからね。


これから起きるのは、まずは、スライムさんの暴走です。

このスライムはエリオ殿下のスライムです。


『他に何が起きていましたっけ?』

「そう、ですね……確か、本来は此処でスライムちゃんが死んでしまうので……」

『何でスライムちゃんは暴走したんでしたっけ……』

「急に暴れ出してましたよね」


『「……薬ですね」』


同じ結論に達したようですわね。

エリオ殿下のスライム・マナは物理的な攻撃をあまり通しませんが、薬剤系は吸収してしまいますから、たぶんそれで様子がおかしくなったと考えるべきでしょうね。


来年度入学してくるエリオ殿下は、スライムを抱えてやってきますが、スライムはいわゆる雑魚にあたります。

それで舐められるのが嫌で冷たく当たっていて、というのが本来の場面となります。


今回はアウルムがスライムについていろいろ口を出したので、もうその辺りは問題ないと思いますが。


「スライム・マナってさ、確かエレメント系にかなり近いよな?」

「ああ、スライムがエレメント化したやつだからな。それだけでエリオ殿下のポテンシャルが伺えるってもんだ」


そんなロキとアウルムの会話に私は目を丸くしました。そんなに強いものなのですか?

そんな私の疑問はナタリア様が問うてくださいました。


「あのスライムちゃんってそんなに強いんですか?」

「ああ、スライム系は水属性と闇属性をベースに持ってる。さらにあいつは風も扱える。エリオ殿下の火を強化、鎮火するにはもってこいの相棒だ。燃やせなけりゃ溶かせばいい、火力が足りないなら爆発させればいい。そこをちゃんとあのスライムは考えられる」


アウルムはそう言って、小さく呟きました。


「今度は死なないといいがな……」


それなら、その原因を最初っから叩き潰せばいいじゃないですか。


『アウルム、ロキ』

「あ?」

「おん?」

『来年度はエリオ殿下のスライムの暴走事件が起きます。皆が集まっている場でのことなので、エリオ殿下とスライムから離れなければ暴走事件自体は止めることができるはずです』


私が言えば、アウルムが少し考えてロキを見ます。


「スライムには水に混ぜた毒ぐらいしか効かない。だがあの様子から考えるに、おそらくバーサク系」

「馬鹿言うな、バーサク系でスライムに効くようなもん作るの、リリアーデとエングライアぐらいしか、」


死徒の名前しか出てきませんね。

ということは。


「解毒薬の方を先に作ってもらうか、いやちょっと待てよ……?」

「どうした」

「待て、エリオ殿下のスライムの進化を優先した方がいいかもしれん」

「えっ?」


私は少し考えます。

スライム系は進化するのがとても苦手です。

スライム・マナの時点で一般についている渾名は『最終兵器スライム』ですからね。

スライムの中では最高のステータスを持っているらしいので。


「あのスライム進化するの?」

「エレメントになる」

「マジか」

「でもエレメントになるとたぶんあいつ複合エレメントになるよな」

「魔石が大量に必要になるな。少しずつエリオ殿下に作らせとくか、確か合成上手かったよな」


次の予定が決まりました。

エリオ殿下にはあとで話をしなくては。ロキが行った方がいいかもしれませんね。


気がつけばゼロとアウルムが食べ物を皿に取って戻ってくるところでした。

アウルムはいつ動いたのでしょうね。


「ああ、おいしい……」

「ケイオス家今どうなってんだよ……」

「財政難で皆に節約してくれって呼び掛け中、贅沢してた馬鹿弟は閉じ込めたわ」

「ナタリアが強い」


これで3章は終了となります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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