閑話 そのころの殿下たち
自分でも伏線の話過ぎて上げるか悩んでました←
カル殿下視点
今年、皆の誕生日等を聞くことができなかった。
私は熱心なカドミラ教信徒というわけではないのだが、誕生日を祝うのはどこにでもあるらしく、私たちもなじみのあるモノだった。
クルミ嬢の婚約のお披露目パーティがあり、私は呼ばれた。エリオも呼ばれたので友達として行くことにして、その席で私はロキに会った。
彼は基本的にあまり令嬢の姿になりたがらない。アウルムもあんまり好ましくは思っていないようだ。
無論今日も令息姿である。
銀色の髪をきちんと整え、黒っぽい服に身を包んでいる。
白と黒だけで十分目立つと考えてだろう、特に装飾品はつけていない。ブローチはやっぱりつけてきているが、仕方ないだろう。
「ロキ」
「カル殿下」
ロキに声を掛けてみるとぎこちなく微笑んでくる。パーティがもともと嫌いだとも言っていたから、乗り気ではない、ということだろう。
私は後ろにいたロゼを前に出してやる。ロゼはロキと同等の爵位の娘であるため、彼も気兼ねなく会話できるだろう。
「ロゼ様、御機嫌よう」
「ロキ様、ご機嫌麗しゅう」
2人は少し挨拶を交わした後、すぐにクルミ嬢の許へ行った。
私は先に挨拶を終えていたので問題ない。2人も既に終えているはずだが、他にも話すことがあるのだろう。
クルミ嬢の婚約お披露目会。その体を取るしかなかったというべきだ。
残念ながら、名家でも落ちぶれた貧乏貴族になっている家は少なくない。
特に、その血の重要性から潰すことのできない家だと、土地を削られたり金を大目に払わせたりして罰とする例が多い。先々代の時にお家騒動を起こしかけたユリウスの家はもれなく未だにそのダメージを引きずっている。
ちなみに、クルミ嬢の家であるカイゼル家はその辺りを妥協してもらい、権力からそこそこの距離を取り、子供を厳しく育てることで家の安定化に努めようとしている。
クルミ嬢は出来が良すぎてあまり厳しくしていないようだが。
私はユリウスの許へ行く。
ユリウスは私に気付くと礼を返してきた。
「カル殿下、御足労ありがとうございます」
「そんなにあらたまるな。お前たちを祝福しに来たのに」
ユリウスは元は光を扱えたものの、今はもう光を扱えない。
隔世遺伝で先代が婚姻を結んだクローディの血が出たのだろう。
火属性ならばごくまれに光属性が生まれることがあるのだが。
一つ上だが、まあ、次男坊であることもある。おそらくこのままカイゼル家に入ることになるだろう。
「……クルミ嬢とはうまくいきそうか?」
「ええ。ちょっと、僻んでしまいそうになりますが、私の2倍生きてると豪語しましたよ、彼女」
クルミ嬢は、「まだまだ若い子には負けないから」と言っていそうだ。
――そういえば、父上に聞いたことがある。
ロゼが婚約者の第2候補だったと聞いたために尋ねたのだ、第1候補は誰だったのかと。
すると、ロキだったと返ってきた。
本当は私と彼の反応を見て判断したかったらしいが、まあ、その。
彼が彼だったために先に回避されたとのことだ。
すぐ傍で見ていれば分かるが、ロキは才能に溢れている。
そう、それこそ、天才ともてはやされた私でも嫉妬するくらいの。
きっと彼と婚約することになっていたら、女性には負けられないと意地でもその前を行こうと躍起になり、それができずに苦しんで当たり散らす――なんて自分の未来が、想像できた。
私は周りに比べるべくもなく天才扱いを受けるだけの才能がある。その力のおかげで育ったプライドというのは、なかなか表出しなくても心中にはあるものだ。
ロキが私を超える才を持っていなかったなら、どれほどプライドの高い人間になってしまったことだろう?
スクルド様はただ微笑んでいらしたが。
「婚約者がロキじゃなくてよかったと思ってしまったよ」
「おや、そんなに親しいのですか?」
「ああ、クルミ嬢からも聞けるとは思うが、伝えておかねばならないな」
私はユリウスにロキとシオンのことを伝えた。
シオンの存在については彼も驚いていた。
「1人の身体に2人分の人格が入っていたと……? そんなことがありえるのですか」
「本人たちは、ドッペルゲンガーとして考えているようだ」
「それは、とても危険なのでは?」
「ああ、そこは本人たちも分かっていて対策は取っているようだが、それを破りそうなほど、ロキは魔力量が多いからな」
俺はロキたちを目で追った。
彼の魔力量はとてつもなく多い。
アレではその魔力量にものをいわせてシオンを押しつぶすのも時間の問題だろう。
「それでいいのですか?」
「……こういう時、王族はとても無力だな」
こればかりはどうしようもない。
「最悪の場合は言うしかないでしょう」
「ああ。けれど、その時までは待ちたいんだ」
それが彼の最善になると信じて。




