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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 後期編
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クルミの婚約

クルミ視点です。


春休み最初のサファイアの日、フリーマーケットへの出店を終えて撤収した私に駆け寄って来た私の妹とその従者。

義理の妹がいるんです。


義妹の名はマリア・カイゼル。

ちょっとワガママには育っちゃったけれども、可愛い妹である。


「お姉様、すぐに屋敷に戻ってください」

「あら、どうしたのですか?」

「旦那様がお話があるそうです」

「まあ」


従者から話を聞き、少し考える。

お父様は御多忙であるので、さっさと戻って話を聞くのがいいだろう。


「分かりました。ちょっと待っていてくださいな」


私はすぐにロキたちの許へ向かって事情を説明し、片付けと荷物を押し付けて2人のところへ戻る。


2人について行ったら馬車が用意されていて、それに乗り込んで王都のカイゼル伯爵邸に向かった。


「でも、何の話でしょうか」

「分かりません」


ちょっとマリア、不機嫌なようです。

ちなみに彼女は私の1つ下だから、来年には中等部にやってくる。

たぶん彼女は何の話なのかを知っているのだと思う。


屋敷につくと、私たちは中に入る。久しぶりに会う使用人の皆に声を掛けると、父様が既に待っておられるとのこと。応接室にいるようなので、荷物をとっとと片付けて私服のドレスに着替えて応接室へ向かった。





「クルミです」

「入りなさい」

「失礼します」


応接室へやってきたら、そこには両親がいた。

恰幅のよい優し気な男性――父と、同じく恰幅のよいのほほんとした女性――母である。

え、私将来太るんじゃないかって?

言わないお約束!


父様と母様の前のソファに座ると、メイド長がお茶を淹れてくれた。


「今日はお前に大切な話がある」

「はい」


お父様随分前置きをしっかりと。

いつもはそのままポイしてくる人なのだけれども。


「――この度、シーズ伯爵家のユリウス殿との婚約が決まった」

「おめでとう、クルミ」

「え」


ユリウス様との婚約?

ユリウス様が攻略対象だってのだけは知ってるんですが?


まああれだけ仲良くしてたらそりゃなんか話来るかなとは思っていたのだけれども、まさかそのままノンストップで許可が下りてるとは思わなかった。


ユリウス様のシーズ伯爵家は、伯爵家としては小規模な家だ。元はとある侯爵家の分家だったのだけれど、当主が有能なら昇ってくるわけで、その結果今の位置にいるけれどその後は現状維持に皆努めている、というお家だ。


そも、本家の方が先に没落してしまったのでどうしようもない。本家の子は私たちよりも3つ下だ。


カイゼル伯爵家は伯爵でありながら侯爵家並みの発言力を持った強力なお家、お金もたっぷり持ってます。


支援しろってことですな。


「嬉しくない?」

「あ、いえ。ユリウス様のお家のことちょっと考えちゃって」

「大丈夫よ、ユリウス君入り婿になるから」


それはそれで問題があるのでは。

カイゼル伯爵家は、カイゼルというので引っかかって調べてみたのだが――おそらくカイザーで合っている。


この国にはエンペルとか、インペリアとか、カイゼル、ツァルなど、地球で皇帝を表す言葉に近い苗字が存在する。

これらの家は皆特殊な家であるのは明白。そしてこれらの家は家名を、ではなく、その血を残さねばならない。


これは竜の御子との契約だ。


ちなみにシーズというのは恐らくシーザーに近いと思われる。

つまり、久しぶりに元の血脈同士で結婚するよ! ってことだろう。


「お前には負担を掛けてしまうね」

「いえ、貴族としての責務と考えています」

「今度婚約お披露目のパーティをするから、お友達に招待状を出しなさい。ああ、あの男爵令嬢たちも呼ぶといい」

「はい、ありがとうございます!」


親しい間の子たちを呼んでいいだなんて寛容なものだ。

予定の日時を聞いたら


「そう言えば、マリアが酷く不機嫌だったのですけれど」

「ああ……」


2人はちょっと困ったように笑った。


「マリアちゃん、ユリウス君のことが好きみたい。それだけは、聞いてあげられないのだけれどね」


血を繋ぐための結婚なので当然だけれど、たぶん、この事実を知っている人が少ないのではないだろうか。小説にはそもそもカイゼル家のことも何もなかったのだ。

前世のゲームやら小説やらでは出てこなかった設定が結構あって、まあもうそれには慣れたのだけれど。


「そういえば、クルミはフリーマーケットで何を売っているの?」

「宝石細工です。魔力を通して形成し直すんですよ」


ロキのところのトパーズさんから大粒のトパーズをいくつか貰っている。他の宝石も貰いはしたのだけれども、やっぱり一番相性が良いのがトパーズだった。

一番相性が悪いのはダイヤモンドだった。

ダイヤモンドって魔力を込めるのは楽なんだけど、形を変えるのがものすごく難しい。

下手すると黒鉛になっちゃうんだよね。小さいので試したらなっちゃって怖くなりました。


「どんなものを作ってるのか見せてくれないかしら?」


目をキラキラさせて母様が言う。私は頷いてアイテムポーチからトパーズを取り出した。


「これは、トパーズ?」

「はい。友達のところに居座ってる土精霊から頂いたものです」

「素晴らしい才をお持ちだね」


トパーズの中でもあんまり色が濃くないものを選んで、布を敷いてトパーズをその上に置いた。


トパーズに手をかざして魔力を込めていく。何を作ろうか。

そうだ、ヒヨコでも作ろう。コロコロしていて作りやすいので。


アストさんだとタンポポとかスイレンとか作るんだけどな。あの人のレベルを自分に求めるのは間違ってると思う。


ロキが薔薇作れるとか気にしてないから!

気にしてないからね!!


流し込んだ魔力は自分の中につなげておく感じ。

そのまま石の元素配列に逆らわず無理のないように全体にいきわたらせてから――形を変える!


ヒヨコが出来ました。


「まあ!」

「おお……これはまた」


きらっきらのヒヨコさんです。


「可愛いわねえ」

「母様、差し上げます」

「まあ、いいの?」

「はい」


魔物宿舎の再建費用、どうしようとか言ってたらよく考えたらこうやっていろいろ加工して貴族相手に売りつければ早くないですか。

服飾系でもいいけど軍隊所属の魔術師たちに売りつけたらどう?


今度皆に提案してみよう、そうしよう。


ちなみにトパーズは色が濃い方が高価みたいです。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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