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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 後期編
83/154

後期授業終業パーティ

「意外と1年って短かったな」

「ちょっと、まだ私たち13歳なんですけど」


終業パーティはこじんまりしたものである。理由は、この後春休み中に卒業パーティが控えているからだ。まあ、皆卒業が前提だから、高等部のような華やかさはないのだけれども。


カルはちゃんとロゼをエスコートして現れた。

ちなみに今回俺はフリーである。


そう言えば、俺は全く知らなかったのだが、クルミをエスコートして現れるのが恒例になりつつある、若草色の髪をした伯爵家の令息。

クルミと楽しげに談笑してらっしゃるが――攻略対象であるとのこと。


ルナ、もっと早く教えて欲しかった。


「ユリウス様ってあんまり目立つ人じゃないから忘れてました( ´∀` )」

「キラキラ系のイケメンではないけどあれセト枠だろ」


イミラブにおける騎士さんはセト枠である。

基本、魔力量がそこまで多くない、真面目であんまり喋るタイプではない、剣馬鹿、という特徴を揃えられているが……。


「ユリウス様は私たちより1つ年上、イミラブメモリアの攻略対象だから、シドたちと同期になるよ」

「はい、悪役令嬢の名前は?」

「マリア。マリア・カイゼル――カイゼル?」

「カイゼルっつったな」

「クルミのファミリーネーム、カイゼルよ」


ちょっと待て――!


「え、なに、クルミが悪役令嬢になる可能性があるってことか?」

「妹ちゃんでしょ、マリアって」

「そうらしいね。伝えるかどうかはまだ悩んでたんだけど。だって、伝えたらクルミ様恋愛どころじゃなくなっちゃう。あんなにお似合いでうまくいきそうなのにさ」


ルナはクルミの方を見て言った。

確かに、俺たちは賛同するしかない。

クルミとユリウス殿は非常にお似合いである。


なんというか、クルミの芯のしっかりした部分を知っている俺たちだと、「ユリウスは尻に敷かれるな」と思ってしまう感が否めないんだけどさ……かかあ天下作っちゃうよクルミは。


表面だけ見てればクルミは嫋やかな美少女なので、ユリウス殿のような身体つきがしっかりしているけれど細いタイプは並ぶとちょうどいい感じなのだ。


「マリアってどんな子なんだ?」

「ゲームでは、カイゼル伯爵家に養子に取られたって話だけど、カイゼル家には彼女以外居なかったはずよ」

「クルミはいないキャラだってのはそこか」


ちなみに、マリアちゃんはかなりのワガママ娘に育っているようだ。

クルミがしっかりしていたからカイゼル伯爵夫妻が甘やかしたのだろう。


「原作でもかなりのワガママ娘だったの。ユリウス様の婚約者に無理矢理なったとか」

「カイゼルはでかいからな」


と、言うことは。

考えられるパターンとしては。


「ソル、お前の中にソルはまだいるのか?」

「いないわけじゃないけどいるとも言えないわ。ルナやエリスみたいにはっきり境界があるわけじゃないの」

「これでもしクルミが、クルミの中に誰も居ないと言ったら、恐らく確定事項だけど……たぶんクルミの身体は魂が無かった、ってヤツだろうな」

「それは……そっか」


クルミ、なんかやばい立場にいそうだな。


「マリアがクルミを僻んでひねてないといいんだけど」

「そりゃ無理だろ、クルミは転生者だって分かってるといっても出来過ぎだもんよ。アイツのワガママってお茶会に男爵令嬢呼んだくらいだろ」

「ドレスも地味なのが多いし装飾もあんまりないし」

「元々計算強いから領地経営の手伝いするんだとか言って算数とってるようなやつだぞ?」

「出来過ぎですね」

「出来過ぎだな」


成績いいしな。

俺も頑張ってんだけどね。

まだS判定貰ったことないのよ。

泣きそう( ;∀;)


「アウルムなんか回答完璧だしね」

「俺が何億回テスト受けたと思ってんだ( ´∀` )」


そこまでやったら覚えるもんだろうよ。


ナタリアはエスコートする人間がいなかったが、向こうの方からアウルムを指名してきたのでアウルムに任せていた。


カル殿下がひとまず開会を告げ、皆思い思いに食事や談笑を始めた。

俺たちは先に躍るかという話になった。


「どうする、躍る?」

「だな」

「こうして考えると未だにロキの婚約者が決まってないのが驚きね」

「母上が止めてるみたいだな」

「あー、スクルド様か~」


母上には感謝しかないですね。


一曲躍るために中央に出ると、カルとロゼも同じ曲で躍るらしく出て来ていた。


「これで躍るのか」

「ロゼはダンス苦手だから」

「ロキ様と比べないでくださいませ」


ロゼのダンス、普通だもんな。いや、悪いとは言っとらんよ。

ロゼは全部普通にこなす。

でも普通である。

そういう話なのだ。


俺は女児として生まれている――つまりロキという令嬢は確かに存在しているのであり、たとえ俺が令息として生活し、令嬢姿を表に出さないようにしていたとしても、俺が令嬢姿をしていた頃にこなしたダンスについてのお話はもうどうしようもないのである。


ロゼはなんでも平平凡凡にこなすが、それが王妃では示しがつかないと考えているのだ。その為にロゼは本格的に魔術のコントロールを磨くことに決めたらしい。

たぶん、ゲームでもそうだったんだろうなと思う。


「この後ロゼ借りていいか」

「ああ、構わないが、どうしたんだい?」

「ちょっと転生者同士で確認したいことができた」

「なるほど。まあ、お前ほどの上物、令嬢が放っておくとは思わないが」

「そこは逃げ切るんだよ。お前に押し付けてな」

「え、嫌だ自分でなんとかしろ」


知らん、王族に押し付けますあしからず。

もちろんこの国は一夫多妻制なので婚約者が決まったとは言ってもまだ令嬢の押しつけはあるわけだ。


俺の方も完全に逃げ切れるわけじゃなくて母上からのお許しをもぎ取ろうと近付いてくる令嬢が多くなるのは予想されていることである。


まあ、俺には上がいるし銀髪だから教会に行かないようにしなくちゃならないんだけどさ。

教会の、特に神子を集めているのはカドミラ教。一神教である。

ここに行ったらアウト。


この国は王族がカドミラ教を弾圧とまではいかないが、冷遇しているのでなかなか。

カドミラ教はそもそもイミット排斥派なので、王族とは相容れることが無いのだ。


それを覆しちゃうのがヒロインサマなわけだが。

プラムももれなくカドミラ教信徒なので論外。


ウチは両親ともにカドミラ教信徒だったけれども、俺が銀髪だったので一家揃って信徒辞めた。メイドも召使いも皆で。

ちなみに信仰を捨てなかった人たちは皆クビである。俺が拉致される可能性を考えるとこれが一番手っ取り早かったそうである。幸い執事筆頭とメイド長は元々カドミラ教徒ではなかったので特に問題がなかった。


ダンスを終えて即刻逃げ出す。

ロゼを借りたので声を掛けてくる人間はいなかったよ。





「それで、話って?」

「ああ、ロゼ、クルミ、2人の中にもう1人がいるって感じはあるか?」

「私はあるわね」

「私はないよ」


ロゼ側はロゼちゃんが別にいるそうである。


「でももうほとんど統合されちゃったかなあ。定期的にわがまま言うからその中から10分の1くらいを通してるの。私とも被ってるとこ多いしね」

「いいなー。私のワガママってアレだよ、砂糖菓子食べたいなあっていうのなんだよ。お金かかるよ」


クルミのワガママは前世のままかよ。


でもこれで分かったことがある。

最後にアウルムの方を見た。アウルムとナタリアは俺がこの確かめをする気になったときから大体予想はついていたらしく、小さく笑っただけだった。


「アウルム、お前、俺に会うのは結構な回数みたいだよな」

「ああ、確かに。ロキ・フォンブラウに会わなかった前世はねェな」

「でもクルミは初対面」

「ああ、クルミ・カイゼル嬢に会うのは今回が初めてだ」

「次、転生したことを自覚したソル、ルナ、エリス、ロゼに会うのは何度目だ?」

「数えてねェな」

「ではラスト。――明たちに会ったことは?」


アウルムは笑みを深め、口を開いた。


「何度目だろうなァ? 少なくとも、1度や2度じゃねえよ」


「確定だな」

「どういうこと?」


ロゼが問うてくる。


「アウルムって、俺たちの前世も知ってるしロキやナタリアとも会ってる。でもたまに、変な言い回しをする。俺には何度も会ってる。他の皆にも会っている。こいつは気付いてるんだよ、最初っから。――ずっと、思ってた。俺たちがまるでゲームのキャラクターみてぇだって」


ゲームでの2人の性格を見ている限り、ゲームと今の2人はそう差が無いように見える。

結論から言うと。

たぶん、アウルムは俺たちを混乱させないために向こうからの情報提供を渋っている感じなんだろう。


「アウルム、痺れ切らしたら言ってくれよ? 俺、そんなに頭には自信ねーから」

「いやいや、十分だぜ? むしろよく気付いてくれてるぞ」


アウルムはそう言って、いつの間に取って来たのか、俺たちにフルーツを少しずつ載せた皿を差し出してきた。

遠慮なく摘ませてもらう。


滞りなく終わった終業パーティの後、俺たちは王都の屋敷にそれぞれ帰ったのだった。


導き出された回答。


――俺たちはどうやら、ゲームのキャラクターとして写し取られていたようです。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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