宝石が送られてきた
『拝啓、我が愛しの息子よ
先日の手紙、読ませてもらった。なんだか珍しい種類の魔物ばかり孵しているようだと聞いてはいたが、ここまでとは思わなかった。
そして、必要そうだからということで、金人族たちを王都に呼んでおいたよ。来年は鉱物学を取る気だろう? 私も取った、石は美しいものだ。知っていて損はない。
先日スクルドとメティスが一緒に大きなクリスタルの前で写真を撮ったらしい。写真を一緒に送付する。
今後も勉学に励むように。体調には気を付けなさい。
アーノルド』
はい、父上からのお手紙と一緒に写真が送られてきました。
シオンと一緒に眺めてるところ。無論、リンクストーンで。
「これ、ルビーたちにやった部屋じゃね」
『ですわね……何でこんなことに』
部屋の中結晶だらけじゃないですかーやだー。
そして、本人たちと一緒に宝石の山も持って来たらしい。
宝石の山ってなんだよ。
半分くらいはコレー用に持って来たらしい。
コレーは今10歳なので、初等部に行っている。まだ魔術はやらないが、魔力操作は始めている。宝石は高価だが魔力を通しやすいため学校に提供すれば相当な金も入るだろうな。
ウチに鉱脈あるけどあれ銀山でっせ。
「……金、ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネを生産するやつと、ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ、ダイヤモンドを生成するやつがそれぞれ。――なにこれ」
『経済がめちゃくちゃにならないように使っては壊してもらうしかありませんわね』
「宝石魔術使うやつと、錬金術師や合成屋あたりに売り捌くってのでどうだろう。錬金術師も合成屋も宝石やミスリルは喉から手が出るほど欲しいはずだ」
『でもそれやったら』
「逆だ、俺がアウルムと契約してることにする。契約した精霊はくれることもあるらしいじゃねーか。俺は土にあまり適正が無かったので生産回数はとても少ない。とか」
ミスリルやる気ありませんがね。
え? 早く契約してやれ? キコエナイキコエナイ。
『確かに、それならよりお金の入りもいい……』
ちなみに、何でお金の話してるかというと、ちょっと……。
先日、コウたちが進化したとたんに魔力の流れが強烈なものに変わったためか、コボルトの一部が凶悪な進化を遂げてしまったのだ。
『まさかあの子たちがヘルハウンドになるなんて思わなかったわね』
「一頭オルトロスになったじゃねーか。何だって頭増やしたよアイツ」
どっかのヒロインさんのコボルドがオルトロスになりました。
ナタリアですけどね。
で、そいつらも急な進化に戸惑ってひとしきり暴れた。
その結果、魔物宿舎が半壊したわけでありまして。
さらっとガードしてたやつら以外は怪我するし下敷きになるし更にパニクってレンガを消し炭にしたりもしてしまって、修繕費用が必要になりました。
そのお金を調達するために皆で今いろいろ考えているのだ。
そこにこの話だからね。
父上話聞いてたでしょう。
「ま、とりあえず。ルビーたち迎えに行ってくる」
『分かりました』
そう言えば、シオンって俺の前だとですわね口調止めるんだよな。
俺は部屋を出る。ちなみに寮ではなく、サロンに使っている鈴蘭の間である。
もうすぐ1年が終わる。
いろいろあったなあ。
『ねえ、ロキ』
「ん?」
『あなたは、不安になりませんか?』
「?」
俺は立ち止まる。
『自分たちが動くことで次々に問題が浮上してくるのが、私は怖いのです』
「……怖いっちゃ怖いがな。でもまあ、いろいろうだうだ言ったってどうしようもねーだろ。転生してて記憶がある方がおかしいんだし。本当なら、人生って一発勝負だからな。俺たちが事故で死んだみたいに」
後がない、下がれない進むしかない、それが人生ってものだろう。
日本人だったって感覚がどんどん薄らいできて、リョウって名前も、スズって名前と漢字が一緒じゃなきゃぼんやりとしか思い出せなくなってきている。
たぶん明羅以外は皆そうだろう。ルナはちょっと違うかもだが。
まあ、シオンみたいに記憶がある状態での転生って、繰り返すとつらいだろうな。
「だからこそ気負うんだろうけどさ。でもほら、そういうのは、長い目で見ればズレてくもんだろ。ずっとずっと未来のことを見てやっていけばいい。手前のショックなことも絡めて全部回避が望ましいけど、望ましいだけだ」
『……簡単に言ってくれます』
「だってそうだろ?」
将来の展望は大事だが、そこで止まっていては意味がない。
「ゲームのシナリオじゃねーんだから。そんなの八百長もいいとこだぞ」
『……お前は、このげえむをやってないんでしたね』
「ああ。気楽でいいわ」
知っていたらたぶんロキと同じ状態になってただろうよ。
「でも、気になることはある。ラスボスって結局何なんだ」
『ええ……アレは一度戦えばわかります。たとえるなら……邪神ですね。この世界のマナを吸い上げて生きているのは、すぐに分かりました』
シオンはそう言って息を吐いた。
『アレがマナを吸い上げるのを止めなければ、倒すことなどできません。今までも頑張ってはみたのですが、なかなかうまく行きませんでした』
思い出したら腹立ってきた、とロキはぼやいた。
「なあ、根っこ切ればいいと思ったの俺だけ?」
『試しました。すぐに治ってしまいます』
「よし、その根っこ枯らす。枯れれば何もできまい」
傷付けるだけだとマナの吸い上げを助長しそうだし。
てか、え、植物系なの。
「植物系なのか?」
『必ずしもそうとは限りませんが、根っこはありました』
最終決戦地はリガルディア国内だそうで、というか学園になるそうである。高等部に出現するのだとか。
「……つーことは、高等部に上がってから考えた方がいいな。その時にまた何か聞くかもしれない」
『力になれるのなら幸いです』
情報を持ってることはマイナスではないから。
♢
俺たちがルビーたちを鈴蘭の間に招き入れたのと、アウルムたちがやって来たのがほぼ同時だった。
「アウルムさん」
「ルビーじゃねーか。もうこっち来たのか」
「少しでも力になれればと思いまして」
ぞろぞろと増えたもんだ。
ルナたちも来ているので結構な人数が部屋に入ることになったが、そもそもサロン用の部屋である、とてつもなく広い。
「ああこれ、完成したから」
「あ、リンクストーン、もうできていたんですね。ロキさんは仕事が早いなあ」
そんなに早くないと思うが。
アウルムは誰と比べたテメー、とルビーに絡みに行った。
5人分を用意するのって結構面倒なのだ。ただの石として作るわけがない。
装飾に凝り始めたので、結構時間が掛かってしまったのだ。
「エメラルド、つけて」
「はいはい」
トパーズにはバレッタを。
エメラルドにはブローチを。
「ロキさんセンスありますね」
「ルビーにそれ言わせるとかスゲーな……」
「綺麗~」
ルビーにはペンダントを。
サファイアにはチョーカーを。
ダイヤモンドにはバングルを。
「今回はリフレクターをつけてみました」
「実用的だなオイ」
「ただの偽装よりはこっちの方が怪しまれなくて済むだろ。お前は取り込んじゃってるからどうしようもねーが」
「どうせ物遣いの荒い俺にはそれで十分なんですよ(# ゜Д゜)」
「怒るな怒るな」
一先ず席に着いて皆で宝石の確かめをする。
「とりあえず持って来た分はこれで全部です。コレー様にはもう渡してあります」
「ん、ありがとな」
「これ全部宝石……」
「クルミ、宝石魔術にいかが( ´∀` )」
「欲しいけどいくら払えばいいのこれ(´・ω・`)」
皆に紅茶を淹れて席に着くと、ゼロがじっとテーブルに乗せてある袋からこぼれたダイヤモンドを見つめていた。
「気に入ったの~?」
「……ああ」
「そっか~。じゃあ、あげるね」
「!?」
ダイヤモンド君が太っ腹です。
「い、いの、か?」
「うん~。欲しいならもっと作るよ~」
「え、作るって……」
「おれ、ダイヤモンド。斬撃防御なら任せて~」
ダイヤモンド、鋼鉄と言われるより重みのある名前だな……。
ちなみにこの通り、こいつは相当なマイペースである。
俺的には好ましい、緊張でギスギスしているとこにはいてほしいタイプだ。
「待って、もしかしてこの5人ともメタリカなの」
「そうですよ。僕らはアウルムさんほどじゃありませんが結構重要な位置につけられているようですね」
「属性を表す五大宝石だよ。って、そっか、アウルムは半精霊だから問題があるのか」
「ああ、こいつらは完全に精霊区分だからな。ルビー、ダイヤ、分かってるとは思うが、お前らの中で一番攻撃的なのはお前らだ。どちらかは必ず3人と一緒に行動すること。特にトパーズは注意しておけ。やられたら相応の報復をしろ。そっちの方が被害が小さくて済む」
「分かってますよ。相変わらず心配性ですね、アウルムさんは僕らのお父さんですか」
「そんな年まで俺生きてたことないわ」
「あ、すみません地雷でしたね」
そのままスルーされていく地雷とやらである。こっちが空気重くなったわ!
「お前ら、何気なくそういう会話するのな」
「精霊だからなこいつら、生粋の精霊だからな。人間の心情とかそんなもんは理解しないぞ」
「違いますアウルムさん、理解してはいますがそれに対して感慨を抱かないだけです」
「どう違うんだよ」
「親しい者が消滅すれば僕らだって悲しみますが、死んだだけならまたどこかで会えるかもしれないじゃないですか、アウルムさんのように」
「だから、そこの考え方が違うんだっての」
「ようは、長い時間を生きるからまたいつかどこかで会えるだろう、くらいの気持ちで死者を送り出せるってことね」
「私たちには分からないわね」
「来世で会いましょうってやつじゃない?」
アキラ――もといソルが好きそうなパターンだな。まあ、あれは創作物であるから許せるのであって、リアル体験はやめてほしい。
「ま、この話は置いといて。ここにある宝石はロキが自由にできるってことよね?」
「はい。本契約こそまだ結んでいませんが、いずれは結んでもらいますよ、ロキさん」
「マジかよ」
「あなた全部の属性扱えるんですから覚悟しててくださいね。基本僕らは上に戻る力が強いんですから。ネイヴァスの面々だってぎりぎり踏ん張ってる状態なので」
「やだ何それ聞きたくなかった」
ルビーが俺に話を振って来やがった。
契約結ぶのはいいんだけどさ。
「今はアウルムさんに引きずり降ろしてもらってる状態なんです。この状態じゃ僕らもアウルムさんも万全の状態で戦うことはできません。ですから、さっさと契約を引き継げと言ってるんです、物理的な肉体がどれだけ安定してるか知りやがれってことです」
「ルビーがイライラしてる~」
初耳なんですけど。俺がアウルムを見るとアウルムは目をそらした。
それを見たルビーが追撃に掛かった。
「……アウルムさん」
「……なんだ」
「伝えてませんね」
「何のことかな」
「ロキさんがこんな大事なこと、覚えてないわけないじゃないですか。つまりあなたは彼に契約のことを何も教えていない」
「俺の方が信用ねーのかよ」
「信用するわけないじゃないですか、今まであなたそれで何万回死んだと思ってんですかいい加減こっちも学習しますよ!」
「アウルム死に過ぎ」
「アイツの命は軽石か」
「それイイ表現ですね、でも例えるならアルミです」
「よくない、いろいろと良くない!!」
人間の感覚よりも命が軽いというか、たぶん命が重いとかは考えてないんだろうな。
さっきの話からすると、また会えるの前提みたいだし。
自分側が見つけたらそれでいいのかもしれない。
というか、パラレルワールド省いて何万回ってことだよな?
どんだけ身投げしてんの?
洒落にならないんですけど。
「ルビーが余計な情報やったからロキの目が据わっちまったじゃねーか!」
「自業自得です。ロキさん、この人の死にやすい環境の統計とってるんで後でお渡ししますね!」
「おう、待ってるぞ」
「やめろーっ( ;∀;)」
アウルム、俺の目が据わってるといったな?
自由は保障してやるが身投げの自由は許さんぞ。
「いっそ奴隷にするか」
「身投げ禁止命令でアウルム生き残れるね!」
「奴隷紋はそういうことに使うものじゃありません!!」
アウルムが死ななきゃいいって話なのである(`・ω・´)
ここまで読んでいただきありがとうございます。




