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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
8/154

暴露

自重などという言葉はどこかに置いてきたロキたんです

俺は本日、お茶会に御呼ばれしている。

ああ、なんだって王城。

これ、アレだな。

王子が俺に接触しに来てるタイプだよな。


どうするかな。

いや、行かないっていう選択肢はないんだよ、母上ノリノリだし。

だから俺はひとまず、男女どっちの服でいくかを悩んでいる。

まあ、普通は令嬢の格好だよな。


しゃーねー、今日のドレスは何にしませう~。


「アリア、アリア!」

「はい、どうなさいました、ロキ様?」

「王城に着ていく服の選定に手間取っている。華美にならないようにしてくれないか」

「はい、わかりました!」


俺は家での口調はいい加減男に一本化することにした。

いろいろとソルやクルミと話していて思い出したことがあったからだ。


イミドラ、イミラブ、イミラブ2、その他にもいくつか同じ系統の、同じ世界観での物語はゲームになっていた。

それらのキャラクターのオールスターで格ゲーがあったのだ。

いや、ノリがそのままスマ〇ラだった。


ここに出てくる謎のキャラクター、ナナシ。

こいつ、イミドラの中にもイミラブの中にも出てこないキャラクターである。

ではなぜ格ゲーに居るのか?


この答えは案外あっさりと出てきた。


クルミによると、イミドラの続編にこのキャラが出てくるらしい。俺たちが死んだのは続編が出る前だったから知り得なかったのだが、どこのネットを引っ掻き回したらそんな情報が手に入ったんだ?


そして、このキャラ、ナナシと名乗っているが、ナナシ・Pと名乗っている。


「……P?」

「実はこのキャラ、カラーリングが男装したロキそっくりで」

「フォンブラウでしょ? なんでP?」

「フォンブラウの綴り、PHだぞ」

「え、なにそれ」


そんな会話をしたものだった。

つまるところ、おそらくこのキャラクターは、ロキの将来の姿と思われる。


あんな筋肉ゴリラになるのか。

ちょっと笑えるわ。


アリアが選んでくれた緋色の袴。

女袴です!

デザインしてみました!


うえは普通に着物だったりする。東の国はやっぱりあるらしく、これもあった。羽織も今作り中だぜ。ちなみに、この姿、ゼロがめっちゃ興奮してたからたぶんイミットの民族衣装なんだろうな。

この格好はかなりイレギュラーだが、とりあえず正装ですよ?


嘘です。

俺がちょっと変わったデザインを持ち出したと聞いた王妃様が俺に袴で来るように指定を寄越していたのだ。


一見巫女さんだよ。

イミットは普通軍服でしか王侯貴族の前に出てこないから、この格好はかなり珍しいはずだ。


「アクセサリはお付けにならないんですか」

「アクセサリは簪だけだ」

「では、これで」


簪とか着流しとか紋付き袴とかいろいろ言ってみたけれど、反応を返してこれたのはやっぱりゼロだけだったのでそういうことなのだろう。

髪を留める簪には真珠とちりめんで作ってもらった紫の花、金細工がふんだんに使われている。


うちの庭?

気が付いたら日本庭園化してたけど?

俺とゼロがやらかした。

どうぶ〇の森やってる気分だったわ。


足袋履いて、ぽっくりで。ぽっくりはゼロが詳しいこと教えてくれて、靴職人が頑張った。鼻緒がなかなか難しかったらしい。


「……ロキ、綺麗」

「ありがとうな、ゼロ」


ちなみに、ゼロのことだが。

先日、暴走した。

これで俺は傷付くんだったかと思っていたのだが、何のことはない、変化魔術と俺が名付けた(俺が祖なんだから俺がルールだ)魔術は、他の魔術にも有効だった。それで慌てて俺が怪我しないものにゼロの魔力を変化させたのだ。


その結果、ゼロがすっかり懐いた。

うん、イミットは日本人集団のような気がしてきた。


そういえば、ゼロが日本語というか、漢字で自分の名前書けるんだよな。

零だけ。

ムゲンの字は無限だった。安直。


今日はクルミも一緒のお茶会に来るらしい。ゼロに後から聞いたら、俺たちは解析魔術を掛けられていたそうで、おそらく俺たちが転生者であることはばれているとのことである。

なんてこった。


というか、さらっとゼロも転生者って言ったんだよな。今なら彼も意味が分かるんだと。

案外転生者ってのはいるらしい。このリガルディアにばかりやたら溢れているそうな。





お茶会会場に辿り着いた俺は、茶色のふんわりしたドレスを着たクルミを見つけた。


「あら、クルミ様」

「あら、ロキ様」


2人であったので挨拶もそこそこに固まって一緒に行動を始める。

流石に男爵は呼べなかったみたいだ。


しばらくクルミと喋っていたら、他の令嬢たちや王子がやって来た。先に座らされていた俺たちは一度立って皆に挨拶を返した。

って、こいつら全員あれだ、トール以外の攻略対象だわ。それとその婚約者――将来の、だけど。


全員顔と名前だけは合わせておいたからな。

大丈夫、ここはソル居なくても分かる。

全員とあいさつは前に会った時に済ませてあったので、さっそくお茶会に入った。

皆意気込んでいる感じはない。うん、ずいぶん落ち着いた茶会だな。


「あら、ロキ様、今日は男装じゃありませんの?」

「それはどこの衣装ですか?」

「ええ、本日はこの衣装についてお話をさせていただこうかと思っておりますの」


クルミが驚いたように俺を見る。


「大丈夫?」

「ええ、調べてきましたから」


クルミに小声で返して、王子が拍子抜けしたような表情をしているのが見えた。ああ、こりゃ何か話題を振らなきゃと思って色々考えて来てるな。後で礼を言っておこう。


「実はこの服、私が前世で住んでいた国の衣装ですの」

「まあ!」

「転生者なのですか!?」


おしゃべり好きの令嬢たちは驚いて声を上げ、令息陣も驚愕に目を見開いている。


「い、言っちゃった……」

「実はクルミ様もですの」

「まあ」

「不思議な響きの名だと思っておりましたが……前世と名前が同じになったのでしょうか?」

「はい……」


クルミも巻き込んだら諦めた表情になった。よし。

王子たちは少しそれぞれで言葉を交わしてから、俺に問いかけてきた。


「ロキ嬢、あなたが自身のことを、男だと言っていると、その……」

「ああ、兄たちとアル殿下は同い年であらせられましたね」

「うむ……私も、兄から聞いた」


兄上たち殿下に言っとったんか。

アルというのは第1王子殿下のことだ。庶子だけれど聡明だ。隠し攻略対象だな。


「え、では、ロキ様は……」

「はい、中身は男です」

「いつもお茶会にほとんどいらっしゃらないのは……」

「ほとんど会話について行けておりません……」

「あらあら」

「まあまあ」


おや?

なぜ俺の欠点暴露会になってんだ?


「クルミ様は?」

「あ、私は元々女です。彼とは前世でも知り合いでした」

「男装しているときに名乗っている“リョウ”というのは?」

「前世の名です」


うわーセトと喋ったわー。

俺が持っているのはイミドラでの情報のみだが、セト・バルフォット、騎士団長の御子息。風属性を扱う。髪は短め、真ん中緑、左右は黒。目はエメラルドグリーン。

髪を伸ばすのが基本のこの世界で髪が短いことと魔力量が少ないのは同義だ。

彼は実際、魔術ではなく純粋な腕力と剣の技量で戦っていく。年齢はロキたちと同じ。

黒髪であることから、闇属性持ちと考えられていたが、小説の番外編でのみ、闇属性持ちであることが明かされた。


「だからスクルド様はあんなにニコニコして……」

「母上がどうしたのですか?」

「……令息を全く近づけ無くてなぁ」

「ああ……家で一番に気付いてくれたのも母上でしたからね……」


皿に並べてあるクッキーに手を伸ばす。クルミが「私も着物欲しい」と呟いた。今度デザイン画持って来い、うちで頼んで作るから。


「でも、どうしてそれを教えてくださる気になられましたの?」

「ええ、先日のパーティ会場で、私、解析魔術を受けていたらしいのです」

「え……」

「ふふ、気が付けないなんて私もまだまだですわ」


ホントにな。


「そういえば、セーリス男爵令嬢は……」

「あ、はい、ソルの方ですね。彼女は前世が私の双子の姉でございました」


そのまま俺たちはいろいろと話をして、最後にカル殿下からはエレンさんというお付きの人を紹介された。彼女は俺と同じくTS転生してしまったらしい。

俺がもしも何か困ったことがあって、殿下たちに言い辛ければ、彼女にも話していいとのことだった。もちろん、クルミとソルも相談していい人の中に入っている。


王妃様が袴姿が凛々しいと仰ってくださって、なんだかうれしくなった。

まあ、ゼロも着れるんですけどね。


協力者 が 現れた !

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