隣国の王子がやって来た
とか言いつつほぼ出ない
パーティから逃れる運命など、ないらしい。
何を言ってるかというと、お隣の王国の王子殿下がこちらに留学に来たのである。
その歓迎パーティです。
俺公爵家の人間だから逃れる術はなかったよ……。
「ロキが死にそうな顔してる」
「相変わらずパーティ嫌いなんだな」
「だってアウルムがバカにされる……」
皆から見るととにかく俺がアウルムとゼロを気に入っているように見えるらしい。
事実ですがね。
「ま、あの王子がこっちに来たらこれ以上俺の事馬鹿にできなくなるからいいんじゃね?」
「そうなのか?」
「だってあの王子、半精霊だぞ」
マジですか。
俺はお隣の国の王子殿下を見やった。
「なんで知ってるの?」
「俺はどっちかというと男爵家のはずのお前がここに居ることに驚いてるんだけど」
「ケイオス家ですから」
ナタリアも来てます。
ケイオス家って謎が多すぎる。
「まあほら、私何度もこの世界見てるから」
「ホント、よく発狂せずにいてくれるよお前ら……」
「だって私死ぬ人間じゃないもん。シオンさんの方が辛いと思うわ、毎度毎度弟でも兄でも義兄でも親友でも婚約者でも奪われるんだから」
「……ほんっと、どろっどろだなー」
今日ここに居るのは、アル殿下、カル、エリオ殿下、我らフォンブラウをはじめとする六大公、八侯爵、そしてケイオス家の人間だけである。
俺は現在バルコニーでナタリアと話している。はっきり言って俺今、他のお家から令嬢押し付けられそうなんですよ?
アウルムも伴ってバルコニーに居るから3人でのんべんだらり。
「いいのか、ドラクルはめったに出て来ねーぞ」
「いいんだよ、会いに行かなくても会わなきゃなんなかったら会うだろ」
アウルムにそう返せば、お前のそういうとこ好き、と返された。
ドラクル。
イミットの元締めさんである。
竜帝の直系の血を継いでいるイミットで、人型の竜帝は彼らの中からも出現する(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。
黒い艶の無い闇色の髪が特徴で、瞳は基本オッドアイ。
イミドラではラスボスにかなり近いキャラだった。
ちなみにハドは俺らより3つ下なので、今は10歳のはずだ。
すげー子供っぽい言動が目立つんだが、戦闘、戦争、狩りに関してはアホみたいにポテンシャルが高い。属性は破壊で、祖だ。
ちなみにこいつは漢字が覇道。
従兄弟に王道と書いてオウドというやつがいたことは、ファンブックで知っている。
ドラクルは辺境大公というなんぞよくわからん爵位を持ってるが、これは彼らが建国当時からこの国にいたことが関係している。
リガルディアはガントルヴァ帝国ともう1つの大国の3つを合わせた、元はガルガーテ帝国だった。
その帝都に近いところの森に住んでいたのが、ドラクルだ。
ドラクルはその土地から動かない。動いたときは、戦争のときか、その土地を捨てるとき――人間に愛想を尽かした時だけ、彼らは最も竜種に近い。
竜人種、とも呼ばれる。
人間のことなんてこれっぽっちも考えてない。
でも、イミラブ2では、人間の友達がいたんだよな。
そして気付いたけれど……。
「ナタリア、クレパラスト(ドラクル付きの侯爵家)って知ってるか」
「あー、うん。今回はもう没落してるよ」
「やっぱりそのまま残るルートあったのか」
「あるよ、叔父が生きてるか死んだかで変わるもの」
今回は叔父が亡くなってるってことか。
「ちなみに、あの王子はそれについての謝罪の意味で送られてきた人質だったりする」
「うわ」
「仕方ないわ、それに本人が望んでくるのだし」
「命を挺されて救われたのだから、この国をよく知り、より友好関係を築いていきたいのだ――だったかね、前回の文句は」
「あ、そんなんだったんだ。饒舌ね。こっちは、2国のためになれる人間になりたい、って言ってたわ」
今気づいたけど、アウルムは全部のルート通ってるけどナタリアは一部のルートしか通ってないのな。
「そういやさ、ナタリアとシオンってどこまで同じルート通ってんだ?」
「分からないわ。私は覚えてるだけでも15回くらいはやってるけど、シオンさん20回以上って言ってなかったっけ」
「そういやそうだったな」
つまり、彼女と全被りしていてもロキの方が多い。
「……俺に話振らねえとことかもうマジ惚れる」
「勝手に惚れてろ」
「キャーロキサーン」
なんだ今の。
何をしたかったのかはなんとなくわかったけど。
「と、マジか」
「どした」
「来たぞ、チビ竜が」
チビ竜。
つまり。
視線をホールへ向けると、そこに、艶の無い黒髪と、黄色と青のオッドアイの少年が立っていた。
俺を見上げている。
光の無い目。
こいつ、こんな目、だったっけ?
「ロキ。シオンがああだったんだ、他にも似たようなやつがいることも察しろ。属性と、そいつの持ってる魔術を考えればすぐわかる」
アウルムの言葉に俺はこいつの情報を思い返す。
そして思い至った。
破壊属性。
「初めましてだよナ、ロキ兄」
バルコニーは2階である。そこまで跳躍してきた少年――ハド。
そいつは、俺とは初対面のはずなのに、俺の名を知っていて。
いいや、知っているのは大前提だろう。
でも、“だよな”と言ったな?
転生者か、お前も。
そう思ったら、ぎゅうと抱き着かれた。
「……?」
「リーヴァに会いに来たの知って、すげーうれしかったんダ」
そのまま小さく震え出したので、頭を撫でてやる。
「はぁ。ハド、ロキは転生してねーぞ」
「?」
「うわ、マジか」
「うそ、ハドが壊れてる」
アウルムとナタリアの言葉に、俺は大体こいつの状況を理解した。
「ハド、俺はお前のことをよく知らない。けど、もう終わらせよう。終わらせてやる。必ずお前らに繋ぐ。だから、今度はキールとクリスと一緒に、学校に来い」
「……どこ行ってもロキ兄は変わらなイ」
俺からゆっくり離れたハドは、まだ少し暗い目をしていた。
アウルムを見たら、小さくうなずかれた。俺の考えていることなんてわかってますってか。
同じことを繰り返していくと、どんだけ精神が強い奴でも、おかしくなってしまうものらしい。ハドは確かに強かったはずだ。
ゲームをベースに考えるとして。
この世界は一度もイミラブ2に突入したことが無い、少なくとも、シオンやナタリアのいたところでは。
だから、それを変える。
「俺、学校、行ってみたイ。もう、クリス殺すの嫌ダ」
「お前、広範囲の破滅魔法あったな……」
「もういや、使いたくなイ! 人間が魔王に勝てるわけなイ! あのアバズレ、カナト様のこと使い潰しタ、殺ス」
う、おお、ハドの思考回路がぶっ飛んでいる。
「あっちゃー」
「一周回って一番最初の思考回路に近くなってない?」
「人間なんとも思ってません、踏み潰しちゃった? メンゴ☆ レベルになってるな」
要するに記憶がある以外は俺の認識が近い状態らしい。
にしても、ちょろっと名前出てきたが、そうか、人間の友達をその手で殺す羽目になってたのか。そして最後の方に聞き捨てならない台詞があったな?
「ハド、アウルムが使い潰されただって?」
「鎖でつないで鞭で叩いてタ」
「よろしいそいつらと戦争だ」
「まだ何もされてねーわボケ」
俺に対してアウルムからツッコミが入ってしまった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。




