収穫
ばらけて木の棒でその辺をつついていたらキラキラ光る玉が出てきた。
「お? すっげー」
それに触れてみる。冷たい。
ニワトリの卵サイズ。
紺色で、気泡を含んだガラスみたいだ。
カラン、と音がして俺はそちらを見る。
鳥の巣の如く、木の枝なんかで組まれた巣があるのだが、その中で音がしている。からからから。
「?」
覗き込むと、そこに、青白い火の灯った髑髏があって、こっちを見ていた。
「……」
俺は固まった。
髑髏がカタカタカタと上顎と下顎を震わせる。
人間のじゃない。たぶん、ドラゴンだ。
『さむいよぅ』
「!」
声が響いた。
この髑髏、今喋ったか?
『つれてってよぅ』
『まま、どこ?』
『いたいよぅ』
うおお、こりゃいかん。
この髑髏、怨念になりきってない。
と、いうことは。
こいつ、そっか。
アンデット化しちまったんか。
体調は50センチあったかなかったかくらいだろう。
頭骨以外は砕かれたらしく、頭骨以外は燐光を纏った骨片しか見当たらない。こりゃ痛いわな。
寒かったよなぁ。
俺は頭骨を持ち上げた。
カラカラと乾いた音がする。
「ロキ、待ちなさいそれ、ボーンドラゴン!?」
ソルが声を上げて皆がこっちを見た。ゼロとアウルムが寄ってくる。
「小さいな」
「めっちゃママ呼んでんじゃねーか。こんなちっさいのにアンデット化するたァ、ツイてねーな」
もうここにお前のママは帰ってこない。
というか、この2人がこの反応ということは、俺が持ち帰っても問題ないんじゃなかろうか。
「こいつどの竜種だ?」
「あー。こいつか。リンドヴルム」
「は?」
燐光を放っている骨を口に入れたアウルムは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「突然変異だな。ここが襲撃された後に生まれてる。でもリンドヴルムで生まれたのは失敗だったな」
「ここはエサがとれない。親がいなければリンドヴルムは育たん」
「餓死したみたいだな。襲われたのは、去年の冬」
「ってことは、セーリス男爵領をやったのとは別個体か」
勝手に2人の間で話が進んでく。
ハインドフット教授がやってきて驚いていた。
「この子は、リンドヴルム!? ああ、ボーンドラゴンになってしまって……」
「リンドヴルムって希少種だったような」
「特にこの子は希少種だ。おそらく4足歩行型だよ。ここに爪の骨がある」
「こっちには翼もありますね」
どれも砕け散っている。
『♪』
本人は俺たちが連れて行く気でいることをもう理解してらっしゃる。
燐光が上機嫌に揺れていた。
「よーし、そいつボーンからスカルにしてアストラルにしよう。アンデッド極めようぜ」
「お前さらっと言ってるけど何が必要になるか知ってるのか?」
「オリハルコン、ミスリル、ヒヒイロカネ、魔物の素材と闇のマナ」
「後半2つは百歩譲って許す。前の3つは許さねえからなァァァ!!」
「普通逆じゃね」
「まあお前らならなんとなくわかるけども」
皆に呆れられてしまった。
♢
本日の収穫。
鋼竜の素材アイテムポーチ3つ分
謎のガラス玉のようなもの5つ
ボーンドラゴンの頭骨1頭分
以上。
「なんつーもんを拾うんだお前は」
「でも竜種が残ってたなら、下手に成長する前でよかったってことになるだろ? 大丈夫だって」
ルガル殿とリズさんが苦笑して俺たちの荷物を見る。さて、ここから帰るのに3日ほどかかるわけだが。
「このガラスみたいなの何?」
「これは宝玉ですね。竜種の体内にあったりなかったりです」
「これとこれは同じ種類だな。こっちの2つはそれぞれ別の竜種だ」
「こんな宝玉は見たことが無いな」
色は、茶が2つ、紺、紅。全部俺が見つけた。5個目はアウルムが持っている。
まんまるのも、楕円のも、雫形のもある。
ハインドフット教授が興味深そうにそれを見ていた。
「私も、こんな宝玉は初めて見ました。特にこの、紺色」
茶色だったら差し上げます。紺色はあげません。
「にしても、前に人が来ていたのになんでこんなきれいなもんが残ってたんスかね」
「それは思った」
アウルムの問いにセトが同意する。
確かに、ちょっと地面つついてたら出てきたわけですからね?
「宝玉って、魔石の一種なんですよ。そのブローチのせいもあるかもしれませんね」
ハインドフット教授が俺のブローチを指して言った。
たぶん、リーヴァのブローチのことだろう。
「ちなみに紫色の宝玉はファブニルだぞ」
「アウルムさーん? お前いろいろ知ってるけど質問投げかけてない?」
「あ、バレた?」
お前は空気読み過ぎ。
アウルムはわざと質問しているようである。
竜種の魔石は物としてそこにあるだけではなく、ある種の意思を持っている。
全てのドラゴンは竜帝の許に集う。その意思のために姿を現すか否かが分かれるようだ。
「竜帝って今どこにいるんだ?」
「あー、今の世代の竜帝種って、結構数がいるんだよな。たぶん、竜帝は浮島にいると思うが」
「ちょっと待て、竜帝種って言った今?」
「一番年齢がいってるのが竜帝だな。他は皆竜王を名乗ってる」
その竜王の下にいるのが、側近なんだぞ?
そんな詳しいドラゴン事情まで知ってんのかお前はよぉ。
アウルムの情報網も記憶量も平服ものである。
「詳しいね」
「ここだけは変わらんのですよ、どこに転生しても。あー、でも」
あ、この振りは爆弾ですな。
分かるようになってきた、こいつ人を惹きつけておいて爆弾ポイしてくるんだもん。
「竜帝種がこんなに増えたのは、初めて、かな」
なんつー話題出すんじゃお前は。
「竜帝種が増えた原因は2000年ほど前の向こうの大陸にあるみたいっスけどね」
「竜帝種って幼竜の頃はそんなにその辺のドラゴンと変わらないんだよ」
ハインドフット教授もそんなことを言う。
「そうなんですか? 今の竜帝は竜人種だと聞いてましたが」
リズさんの言葉にルガルも頷いた。
「どうりで強力だと言われるわけだ。あれ、でも確か今の竜帝は死徒と仲がいいんじゃなかったかな?」
「あー、竜帝を保護して育てたパーティのメンツの1人が死徒になってるんですよ。そのせいでは?」
ラーことラックゼート、恐ろしい子。
子じゃないけど。
「なんか恐ろしい話してるなー」
「フォンブラウというよりロキの周りが死徒にがっつり囲まれてないか?」
「つーかそれ言い出したらゼロも死徒じゃん」
「あ、そっか」
皆忘れてるよね。
イミットは死徒ですよ。
リーヴァのせいでな。
リーヴァが死徒側に居なかったらイミットは死徒ではないのだ。
実際彼らは不死身ではないし。
ただ、死ににくいだけだ。
そろそろ下りよう、とリズさんが言った時、唐突に雷が鳴った。
「!?」
「え、オイオイ晴れてんぞ?」
「いや、一雨来るぞこりゃ」
空を見上げれば少し先に雷雲が立ち込めてきている。風が強くなってきた。
「皆、とりあえずその洞窟の中に入るしかないぞ」
「なんか見えたのか」
「サンダーバードだ」
「げっ」
サンダーバード、雷を纏った怪鳥である。
この世界ではフーカの眷属扱いになっているが、実際はどうだか知らない。
彼らは雷雨を運んでくる。
「濡れる前に皆早く中へ」
「土魔術でちょっと壁作るか」
「いや、皆が乗るところを一段上げた方がいい」
皆で奥の方へ詰めて土魔術でゴーンと1メートルくらいの段を作る。その上に皆上った。ちなみに、巣の横である。
巣も一緒に上げちゃいました。
「こうしてみるとここってかなり広いな」
食糧は余裕をもって持ってきているので大丈夫だろうが、寒いな。
外で雷が鳴り、雨が降り出す。
元気なサンダーバードと思しき鳥の声が響きはじめたのだった。
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