鋼竜の巣へ
鋼竜の巣へ行くことになった17人は学校を公欠することになりました。
「ま、こうなるのは予想できた話だわな」
「だね」
ソルとそんな言葉を交わしつつ、俺は自分の腕にはまっているバングルを見た。
これは昨日になってアストから送られてきた俺の拘束具である。
ソルとの出会い頭で殴ってしまわないようにするためだそう。
ちなみに、現在、ものすごく足元の険しいところを歩いている。
石である。
砂利道なのである。
「歩きにくい(´・ω・`)」
「アウルムに直々に守られてんだぞちったぁ感謝しろ」
セトがこちらに言葉を掛けてくるのでそれに言葉を返す。
アウルムが全員に土属性の上位である大地属性の加護魔法【大地の加護】を発動させたので、皆は地面から両足が離れない限り死ぬことはまずない。
使った時皆がアウルムを尊敬の眼差しで見て、アウルムはそんな皆を愛おしそうに、悲しそうに見ていたから、何となく察した。
そう言えば、この世界の魔術は英語が多いな。
魔法は英語というよりは和製英語という感覚である。とりあえず中二病臭いんだよネーミングが。
ちなみに魔法はほとんど神の名前と“オブ”がついている。
ちなみに、簡易的に空間を仕切り、俺の工房のあるあの空間へ行く魔法の名前。
【箱庭】となりました。
工房よりいいんじゃねって感じである。
令嬢姿と令息姿の変化は入れ替えるというイメージに落ち着いたので【交替】。
実はこれトールとコレーにもばっちり伝わってしまっている。
今回くっついてきた魔物は、アウルムのコンゴウとセトのコウのみだ。
俺たちを先導しているのはリズさんとルガル殿、そのそれぞれのパーティメンバー。
結構な大所帯である。
「ま、下手に強いのに遭わなきゃ大丈夫だろ」
「そういうのフラグって言うらしいな」
「やめろ回収しそうだぜリーダー?」
平民たちが自分らの前を歩いているのが気に入らない――なんてやつはこのクラスには存在していない。アウルムは事情があって奴隷の首輪をつけているものの、皆の前で堂々と最上位魔法だって使うしゴールドドラゴンは孵すしで皆から一目置かれている。
「もうすぐですよー」
「はーい」
リズさんの言葉と同時に、険しかった道が一気に開けた。
そこにあったのは、岸壁にできた幾つもの穴ぼこ。
なるほど、おそらくこれ1つ1つが巣なのだろう。
そちらを見上げる皆の対象に、俺はそこから見下ろせる景色へ目を向けた。
ああ、すげえな、カメラが無いのが残念だ。
そんなことを思いながら、リガルディア王都近くの街をいくつも展望できるこの立地に驚いた。
「この距離なら一気に街幾つか潰せるな」
「3度ほどリーヴァ様にやられたよ」
「はは、えげつねー」
ナタリアと俺はそんな会話を交わす。
ここからなら、ドラゴンで強襲すればあっという間に街など吹っ飛ぶ。
「ジャベリン種で突撃して、レーザー種で焼き払うとかかな?」
「ええ。魔法の射程外ですからねここ、陣取られた時点で負け確定です」
なんともえげつない布陣を使ったようだな、リーヴァ。
ジャベリン種というのは、名の表す通り、槍状の突起を大量に持っている種類のワイバーンを指す。
ちなみに、これはドラゴンになると角竜種というのに変わる。魔王ではない。
通称は、一角だとモノ、双角だとバイとなっており、ユニコーンとバイコーンを彷彿とさせる。
レーザー種は上位竜種とも、竜帝の側近とも言われている。
――たぶんそれ、俺の知り合いだよ~。
うわ、リオ居たんか。
いや、リオはこの世界を包むくらいでかいのだと極論的なことをアストが口走っていたことがあるので、おそらくそういうことだろう。
というか、心情読むなよ~。
――読めるんだから仕方ないんじゃもん。
お前の顔知ってるから口調合わねえやめろ。
――カカカ。
リオはカカカと笑います。デルちゃんも気を抜くとケラケラとかケタケタとか笑って、たまに高く鳶みたいに鳴くことがある。その時に聞いた話が、フーカの話に繋がる。
アストもアウルムも本体はゴーレムみたいな格好になるらしい。
戦闘時はゴーレム化します(`・ω・´)
ちなみに、アストが爆笑するとアレだ――鐘。ぐぁん、て感じの音が響く。
精霊なんだなー、と再認識させられる瞬間である。
アウルムの爆笑は見たことも聞いたこともないので、今世で笑わせてやりたいと思う。
「ここで好きなだけ採集していってくださいね」
「壁は登らないでください。他の魔物も住み着いてるので」
簡単な注意をリズさんとルガル殿がしてくれて、皆散開した。
まあ、散開などと言っても皆でコンゴウとコウの進化を見たいがために素材集めするだけなんだけどさ。
「じゃあ皆、協力お願いしまーす」
「「「はーい」」」
先に話をしておいたので皆普通に返事を返してくれた。
欠けたりしているものでも全然問題ないので、皆が欲しいものを取って残ったもので構わないといっておいた。
「さーて、お前らが本人なのに仕事しろ」
「へいへい」
「りょーかい」
アウルムとセトが皆の後について巣へと入って行く。
俺がそれを眺めていたら、盛大にナタリアがこけて、アウルムの胸に跳びこむ形になった。
「うう……( ;∀;)」
「よしよし、お前がそんなキャラだからこれが許されるんだと思っとけ(´-ω-`)」
動き易い服、動きやすい靴、と選んできているのにこれだけこけるイベントを起こすのだから男子に近付いちゃいけないキャラなのだと思う。
実際、女子に囲んでもらってここまで移動してきたがその間は特に何も問題が起きてないからな。
「ナタリアも難儀だね」
「クルミ様~( ;∀;)」
クルミにすっかり懐いちゃって。
理由は、クルミという令嬢は元々いなかった令嬢だから、だそうである。
でもカイゼル伯爵自体は存在する。流産した娘の話があったから、その水子がクルミではないかということだった。
カイゼル伯爵は血を繋がなくてはならない家の1つ。故に、クルミがいなかったところでは側室を娶っていたようだ。
「なんだかんだでキーマンにばっかり転生してる気がするねえ」
「実際そうなんじゃね」
俺たちはそんなことを言い合いつつ足元をつつき始めたのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




