図書館
図書室のつもりだったけどどう見ても”館”……
ハインドフット教授が言った。
「皆で鋼竜の巣に行きましょうか」
はい。
はい。
まあこうなりますよねって話である。
魔物学で鋼竜いるのに鋼竜の巣に行かないわけありませんよね。
俺が話を持って行ったらすぐに学園内での手続きに入っちゃった教授である。まあ、そうなるのは予想できなかったわけじゃないから、ちゃんとリズさんたちに話は通した。
リズさん曰く、「なんとかなるんじゃね」。
まあ、アレである。
アウルムとセトが素材を集めりゃいいのである。
結局やることは何も変わっちゃいないのだ。
俺たちは出かける支度を始める。出発はまだ先だが、先に準備していて悪いことは何もない。
全く嫌な話である。
最近はシオンの声だけでも殺気を放つようになっているらしく、リンクストーンの使用も控えている。
もうそろそろシオンと接触時間の長い相手にも切りかかりそうな感じになってきている。
ソルが危ないんですが。
ここまで来るといっそ笑えてくる。
ふと視界に入ったソルとクルミに手を伸ばしかけ、慌てて手を引っ込めた。
「難儀だな」
「まったくだ」
アウルムの言葉に答えれば、アウルムは小さく息を吐いた。
「うかつにシオンを家に送れなくなったな」
「ホントにな。これじゃ誰に殴りかかるか分かったもんじゃない」
だからといってずっと閉じ込めていたいわけでもない。
ルビーたち用の魔導人形は今最後の仕上げをしている段階で、時間が掛かって本当に申し訳ないなあと思いながらの作業である。
魔導人形にシオンを入れて安定させておけば、俺から引き離されても問題はないということであるし、最終的にネイヴァスに預けることになるなら今のうちやっとかなくちゃいけないと思う。
それはともかくとして、今はセトのコウやアウルムのコンゴウのための素材集めのことを考えていかねばならない。
皆がアイテムポーチを持って行くのは当然のこととして、それ以外にも、皆に協力を仰がねばならない。
皆が行くのであれば皆で回収したほうが早いからな。
どれくらいの量が必要なのかも調べなくてはいけない。
俺は図書館へ向かうことにした。
「セト」
「ん?」
「俺はこの後図書館へ向かう。お前はどうする」
「そうだな。俺も図書館に行くよ」
カルを見れば小さくうなずいてみせてきた。ついてくる気満々だな。
「何事も見て回らねばな」
「アル殿下の受け売りですか、それ」
「何故わかった(´・ω・`)」
「誇らしそうだったから」
俺たち3人は図書館へ向かう。本当は転移してもいいのだが、まあ、俺は今アウルムに転移の発動権を預けているため、すぐには【転移】が使えない。
コードをきっちり時間をかけて組めば問題などないのだが、まあこれはシオンに近付いて半分暴走してる俺を足止めするためのものでしかないので、面倒なことはしないだろうと踏んでのことだ。
大体、シオンも転移使えるのだから、これがあれば彼女はすぐに俺から逃げ切れるだろう。
「難儀だな」
「最近皆からそれ言われるんですけど」
「今まであれだけ自由にポンポン転移してるの見てたからな、余計そう感じるのだろうよ」
カルの言葉になるほどと思ってしまった。
♢
図書館に辿り着いたら司書の先生に挨拶をしてドラゴンについての本の棚へ向かう。
この世界で紙はそこまで貴重じゃない。
羊皮紙とは違うのである。
羊皮紙や魔物の皮で作った羊皮紙に近いものはやっぱり高いのである。
ちなみに、和紙も高い。
和紙はイミットの使っている紙である。やっぱり日本文化圏じゃねこいつら。
かたや羽ペン、かたや筆で書いている状態。
ちなみに俺たちは羽ペンで書いている。
書きにくいっすよ。
しょっちゅうインクつけなきゃいけないしな。
庶民で字が書ける人は木炭なんかで書いているとエリスが言っていた。
この図書館にも、木炭で書かれた字を丁寧に保存魔術で保護して保存してあったりする。
たまに日本語の本があったり英語の本があったり中国語らしき漢字の羅列があったりと、結構この世界には転生者だか転移者だかが来ていることが伺える。
俺たちはドラゴンについて書かれた書物の棚の前にやってきた。
高い。この一言に尽きる。
ちなみに、この図書館、塔のようになっている。吹き抜けだ。
淡く光るボード状の階段があり、そこを伝って上へと向かう。ドラゴンやら他の魔物やら、あとはコードなどについて、中等部では詳細は習わないことについての本がたくさん収められている。
俺たちは階段へ足を踏み出した。
「つくづく物理法則を無視しているな」
「そうなのか?」
「支えがあるわけでもないのにまったく動かない透き通ったパネルなど、前世では見たことがない」
「魔術も魔法もない世界から来たんだったな」
「ああ」
カルとそんな話をする。
「ネックライスサイアという神を知っているか」
「あー、アイテムボックスの神(笑)だな」
「ああ」
ネックライスサイア、というのは、その辺の世界を作る原点、と言われている。
ネックライスサイア、この世界の古代の言葉でその名に中てられた意味は――“世界を根付かせるもの”。
リオことドルバロムの父親である。
「で、あれがどうかしたのか?」
「あれの眷属たちのいるところには、魔法が発生するそうだ。つまり、魔法が途中で無くなることもありうる」
「……へぇ」
地球にはもしかしたら、リオ達がいたのだろうか。いたけれども、何らかの理由で離れ、その結果魔法が失われた?
ちょっとそんなことを考えて、くふくふと笑うカルを見やった。
「空間あるところ全てを彼らは見ているという。魔術の有る所も無い所も、等しく」
「……昔は、俺らの前世の世界でも、魔法だの神様だのってのはあったようだけど、俺たちが生きていた頃にはもうそんなものは無かったんだって言われるようになってたな」
「夢が無いな」
「まったくだ」
でもその分、理論立ってたんだ、全てが。
シュミレーションが的確に当たる、そんな世界だった。
この世界は、魔術だ魔法だという神秘が横行する代わりに、1+1をして精霊が何か足しました、答えは4ですと言っているような世界である。
計算のような単純なものではなく、精霊の気紛れ、神々の気紛れが季節を回し世界を回していく。
この世界は、精霊の加護なしでは生きていけない。
そういうものなのだと父上や母上から教わった。
セトが見つけてきた本をぱらぱらとめくってみて、使えそうだなと判断した。
俺たちも適当に本を手に取って下へ降り、本を読み始める。
精霊の見えない俺の横を、一陣の風が吹き抜けた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




