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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 後期編
74/154

セトとカルと

肌寒くなってまいりました。

現在俺たちは寮のセトの部屋へ来ている。だというのに、カルもなぜかいるんだが。


「なんでカルがいるんだよ……」

「私がいては不都合かな?」

「……不都合は何もありませんがね」


一緒に行くって言いだしそう。

そして言い出したら止まらないのがカルである。


「またシオンは置いて行くのかい?」

「ああ。俺が暴走しても止める自信があるなら連れてってもいいけどな」

「それは流石に無理だな」


カルは俺に苦笑を返してきた。

こやつはシオンに気があるのかよくわからんが結構シオンに会いに行っているようである。

事の詳細を知ろうとしているだけかもしれないが、あまり王族が単独でふらつくのは非常に困るのでシオンがどこかへ出てきていることになる。

ばったり出くわさないといいが。


「待たせた」


セトがクッキーを持ってやってきた。紅茶は俺が淹れる。


「ふ。いつ飲んでもおいしいな、スズが淹れる紅茶は」

「そりゃよかった」


カルに褒められるのは気分がいい。練習した甲斐があるってもんだ。


「それで、話ってなんだ、ロキ」

「ああ。実は、鋼竜の巣が見つかったらしい」

「!」


セトが大きく目を見開いた。食いついたな、こりゃ。


「マジか」

「マジらしい。今度一緒に行きませんかって誘われたんでな、コウにもいいかと思って」

「行きたい、というか行く。あーでも親父まだ詰め所なんだよな……」


カルが笑みを深くする。


「今夜は帰ってくるはずだぞ。もうじき仕事終わるはずだから」

「マジで? え、なんでそんなん知ってんだよ」

「兄上から聞いた」


こやつ堂々とアル殿下を情報源と宣ったぞ。


「え、じゃあスズのそれ、日程教えてくれ」

「来週ルビーの日から1週間」

「マジか」

「ちょっと遠いんだってさ」


1週間空けることになるのでちゃんと先生たちには言っとかなくちゃならない。


「ちなみに、ハインドフット教授も同行するからその手伝いに名乗りを上げれば多少旅費が浮きます」

「それを早く言えよ」


メモを書き散らしてセトは悶えていた。


「鋼竜の資料を散々あさったんだが、どれもこれも“鋼竜種の素材を集める”ことについてしか書かれてなくてな」

「ゴールドドラゴンが最初から生まれるっつーアホをやらかした卵割り機が居たからな」


無論アウルムのことである。


「卵割り機( ´∀` )」

「本人に言ったら怒るけどな」


アウルムもゼロも今日はいません。会いたいやつがいるそうで、そいつのところへ行ってしまった。

俺が確認している限り、シオンは今サロンでソルたちとおしゃべりに花を咲かせている。


「コンゴウも鋼竜種なのか」

「鋼っていうから分かり辛いけど、ようは金属系の名前の付いたドラゴンってことらしい」

「ゴールドが一番上で、シルバーとカッパーとアイアンと、タングスト、か」


タングストってタングステンのことだ。

プラチナがいない?

ホントだ。見たことないぞ。


「ミスリルとかはいないんだな」

「竜帝の筆頭眷属らしい。番で数千年生きるって話だ」

「え、何それそんなの知らないぞ」

「上位精霊に聞いたから」

「チートスペックめ……」


アウルム情報ですよ。


「それにしても、チートといえば、そのブローチの数。すごいことになってるな」

「ちょ、戦争回避のために動いたって言って(-_-;)」

「兆しもないのに言えるか( ´∀` )」


俺の着けているブローチは10個。子供のサロンなんかだと必要ないが、公式行事には身に着けて行かなきゃならない。貴族は軍人だ。俺もその一端を担った。ソルもクルミもつけてるしな。


――そういえば、シオンはブローチあんまつけてなかったらしい。ゲームのロキはブローチつけてたのにな。


「それだけ死徒を味方につけてたら、お前を敵には回したくなくなる」

「それを狙ってんですよ」

「おとめげーむってアレか」

「まーな。結構イレギュラーが起きてるから、どうなるかはわからない」


そうなのか、とカルが小さく呟く。


「そのイレギュラーってなんだ?」

「お前……話聞いて来いって陛下に言われたな?」

「さあな」


まあ、こいつに命令できるのなんてアル殿下と陛下くらいだしなあ。


「……例えば、ロキ・フォンブラウがカル・ハード・リガルディアと婚約しなかったとか」

「ふむ」

「はぐれ死徒が入り込んだのがバルフォット騎士爵領じゃなくセーリス男爵領だったとか」

「……」

「ロキ・フォンブラウとシオンが同時に存在しているとか」

「「!!」」


意外そうな顔をしている2人を見て俺は苦笑した。


「片方しかいないのか」

「そもそも俺の事がロキだって認識してたろ。あれは間違ってない。本来なら俺――リョウが存在しないんだからな」


ナナシというのはいるがな。


だというのに、ゲームの設定により近いのが俺のような気がしてならない。

そも、ロキ・フォンブラウというキャラは、演技っぽいところが、あったから。


ロキを演じていたのは、ロキの中にいた誰かさん、だったりして。


――とまあ、何とも精神的に不安になってしまう内容の空想を繰り広げるのはひとまず後にしておく。


「乙女ゲームの内容について今俺自身非常に不安要素が大きくなっててさ。ゲームの内容とシオンが辿った道ってのが結構違うんだよ。だから俺、最近ゲーム知識とか聞きに行くのやめてるし」

「情報源が無くてもいい、と?」

「てか、その情報を持とうが持つまいがなるようになるというか。あんまり頼らなくていい気もするし、頼っちゃいけない気もする」


まだ頭の中をちゃんと整理できていないのだ。

でも、決めたことなら、ある。


「だから、この世界で生きるためにやることは全部やってやる。何人か似たような世界を知ってる人が身の回りに居るが、彼らも俺たちにそれを語ろうとはしない。理由は簡単。知ればそれだけ空回る。一歩踏み外したら死んじゃうからな、皆に大事にされてんだって、こんなとこで自覚することになるとは思ってなかったわ」


カルとセトが俺の頭を撫でてきた。


「?」

「何か手伝えることがあれば、言ってくれ。俺は王子だからな、何かと他国のことについてはお前たちよりは耳が早いだろうし」

「俺は鍛錬くらいしか付き合えないけど、いつでも相談に乗るからさ」

「2人とも……」


はは。

アウルムに言われたのにな。

結局、どんなに言われたって溜めてるものはいつか出してしまわないと決壊するものらしい。


「じゃあ早速、いいか、カル」

「ああ」

「プラム王女、といえばわかるか」

「セネルティエの第3王女だな」

「彼女について知りたい。情報を集めてもらえないだろうか」

「分かった」


「セト、早速だが鍛錬に付き合ってくれ」

「おう」


いい友達を持ったと思う。


ちなみに、プラムについて、なのだが。

ゲーム設定だとね、なんかすごい才女扱いを受けていたようだ。人前に出るのは苦手だったようだが。


その辺がどうなっているかを知りたい。

もしも向こうが今まで転生し続けてきた相手ならば、あるいは。


まあ、ハンジみたいに放置扱いにはならないと思う。

いや、だってハンジの情報ないもん。

どうしろってんだ。

そもそもあいつの動きもそろそろ確認しとかないとヤバいかもなー。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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