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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 後期編
64/154

ロキの問題

ロキ→アウルム→ロキ視点


ぶく、ぶく、ぶく。


水底へ沈んでいく感覚。

光が遠くなっていく感覚。

手を伸ばそうとするけれど、届かない。

身体は上手く動かず、そのまま沈んでいく。


胸の内側に何かが陣取っている。

それがとにかくく持ち悪い。

これのせいで沈んでるんじゃねえかって思うほどに胸のあたりが重たくて、抉り出してしまいたくて胸に爪を立てた。


皮膚を突き破った爪の間に血が入り込む。

刃物が手元になくてうまく抉れない。

苦しい、気持ち悪い。


くそ、なんで俺がこんな思いしなきゃなんねえんだよ!!

全部シオンのせいだ。

アイツが来たから。


さっさと排除しなくてはならない。

俺の精神衛生上的に、だ。


ソルの部屋にいたよな


どうすればアイツを消せる


殺しては意味がない


世界から抹消しなくては





「――うぇ、」


目を覚ましたら服が血だらけ、手も赤っぽくて鉄臭かった。

はだけた胸元を見やればひっかき傷が大量生産されており、俺は息を吐くしかない。


アウルムが部屋に入ってきて目を見開いた。


「またかよっ……!」

「はは、悪いな」


ソルに部屋へ俺が転移するのを防ぐためのコードを渡すことを考えねばならない。

今のままだと転移してシオンを殺しそうである。


ドッペルゲンガーである以上は、シオンに手を出せば俺自身ただでは済まないだろう。それが頭では理解できていてもこのザマなので、どうしようもないのだが。


胸の内側に何かある感覚がある。おそらくこれがシオンと俺の繋がりなのだろうが、とっととブチ切ってしまうに限ると思う。


シオンを別の場所に移さなきゃならないだろう。

王都のフォンブラウ邸でも実家の屋敷でもいいから、彼女には物理的に俺から離れてもらわねばなるまい。


俺はリンクストーンを目印にして転移してる節があるので、彼女にはリンクストーンは持たせない。持たせてもいいがその場合は俺の転移を封じる必要がある。

リオに話をしてみようか。


自由に行動させてあげたかったのに俺がこの様じゃどうしようもないじゃないか。


アウルムが紅茶を淹れて持ってきてくれた。

受け取って一気に飲み干す。行儀は悪いが気にしない。


「そろそろヤバくなってきたな」

「そんなにか?」

「ああ、早く物理的に距離を取らないとお前が先に暴走する」


アウルムのそんな見立てに、やっぱりそんなもんだよな、と思っている自分がいた。



♢     ♢     ♢



問題山積。

俺に言えるのはこれだけだった。


まず第一に、ロキの現状がよろしくない。

ドッペルゲンガーとはまた。


解決法など最初から1つしか存在していない。

無論、女将やドルバロムに頼む以外の方法など存在しえない。


よって俺は、全力でロキのサポートに回ることを決めた。

そも、ロキの魔力回路はおかしくなっていることを皆どこまで知っているのかが怪しい。


魔力回路は2種類存在している。

通常魔力回路と呼ばれるのは、身体中を走っている方で、作り出された魔力を全身に運ぶ道である。


もう1つの魔力回路は、魂から直接伸び、身体に繋がっている魔力回路である。

こちらは本数が少ないのが常だが、ロキはこれが異常なまでに多いのだ。

一度すべてなくしてしまわねば、これではいくら頑張ったところでにっちもさっちもいかない。


だからといって上位世界の誰でもがこれをちゃんと処置できるわけでもなく、俺も無論できないタイプ。

出来る一部例外はドルバロムだろうが、アイツは人間を弄れるほど器用なやつではないし、他の同種のものに頼んだって規模がでかすぎてロキが耐えられないに決まっている。


どうしたもんかなあと頭を悩ませながら、ロキの胸元の傷に目をやった。

爪で引っ掻きまくってできたであろうその痛々しい傷は、前回付けられたものよりも範囲が広がったうえに深く抉ろうとした跡が見て取れた。


小さく息を吐いて「刃物は全て俺に預けろ」といえば、自分がやろうとしていることを理解しているらしく、素直にすべての刃物を差し出してきた。


まだ契約してもらえていない俺は、ロキの命令に従う必要がない。

早く契約してほしいと思っていたのに、こんなところで契約していないことに感謝する日が来るとは。


「何はともあれ、もうしばらくは耐えろ。耐えられなくなってきたら言えよ」

「ああ、そうさせてもらう」


ロキは一息つくと、何かコードの細工を始めた。


「アウルム、このコードのロックはお前が持っていろ」

「これ……転移封じか」

「ああ。対策はすべて取っておきたい。それでも対面すれば一瞬で襲い掛かるのは春休みに見たとおりだ」


俺は春休みのことを思い返し苦笑する。

ああまったく、この程度の魔力量で収まっていてくれて本当に助かる。

本来ならばこんなもんじゃないと俺は、知っているのだけれども。



♢     ♢     ♢



「おらおら」

「やめろーいじめるなー」


魔術の時間。

とはいっても、魔力操作がメインであって、まだ攻撃魔術を習うわけではない。

この齢で攻撃魔術を複数扱えるのは最低条件だがそんなものは皆家庭教師から習って習得済みであることが前提だ。


ここで訓練するのは、冷静な魔力運用である。

何せ魔物の跋扈する世界だ、襲われるなんてあるあるで、貴族は子供でも魔術が使えないと足手纏い。


平民からすればかなりすごいことだがそこはもう血の成せる業。貴族はいざって時に民を守るためにそこにいる、特権を与えられている。


俺が手元に炎で小鳥なんか作って飛ばしていると、セトが影を飛ばしてくる。黒い蝶々だ。

風は物理的に見えるものではないのでこういったことができないのが残念なところ。


セトは闇属性持ちであることから貴族らには嫌われやすいタイプなのだが、俺は全属性。ついでに後期の授業で同じ科目を取っていたナタリアも光と闇なので闇が使える奴だけ集まって結構遊んでいる。


そしてナタリアは今日も元気にイベントをこなしている。

本人はこなしたくてやっているわけじゃないそうだが。


「キャー!?」

「わっ!?」


何もないところで躓き、そのまま倒れそうになってついセトに倒れ込み、セトも庇おうとして押し倒される、と。

俺?

避けたけど?


「は、薄情者……」

「いや、2人分支えろとか無茶言うな」

「はう~……ごめんなさ~い( ;∀;)」


小動物的言動の目立つボーイッシュガール、とはアウルムの言である。

これぞザ・ヒロイン。


ちなみに彼女、歌うのがめっちゃ上手くて、カラオケやりた~い、と騒いでいる。文化祭っぽいイベントもあるからそこで歌えば、と言ったら歌う、と騒ぎ出した。


「ほらほら、はよ退け」

「わー」


アウルムに抱えられてナタリアはセトの上から退かされた。セトはさっと起き上がった。背中の砂を払ってやっていたら、ズガンとものすごい音がしたのでそちらを向く。


「あらー」

「あいつら何やってんの」

「いや、お前のためだろ」


俺を勝手にライバル認定しているアイツが魔術をぶっぱした音だったようだ。

氷が降り注いでいる。

でかい氷柱がつき立っているから、それが生えた音だったんだろう。


あ、倒れた。


「魔力枯渇起こす奴があるかよ……」

「あるじゃねえかそこに」

「そういう意味じゃねえ……」


そして最近アウルムの俺へのツッコミ強要が激しくなってきたよ。

仕方ないので声を掛けに行く。


「無事かー」

「だ、怠い……」

「あたりめーだ魔力枯渇するまで魔術使って、アホなのバカなの死ぬの?」

「め、名誉の死」

「よしいっぺん死ね」

「冗談! 嘘です!」


オイコラそこ、漫才とか言うな。


スパルタクス先生も何も注意せず見守ってるだけだもんなー。この先生なんでここに居んのよ。

魔術の授業は基本的に魔力のコントロールを覚えるのがメインなので攻撃魔術とかは一切やらない。ここでしっかり魔術についての基礎を作っておいて、高等部で攻撃、防御、回復をしっかりと修めていく。


なので、呪文やコードを使った魔術はまだ習わない。

魔術というのは通常、魔力のみのもの、コードのみのもの、コードと呪文のものの3種類が存在している。

呪文は元々祝詞だったらしい。精霊魔法に多いのでなるほどと思ったが。


ちなみに魔法はその辺の基準がかなりあいまいだという。

自分の中だけで組み上げることのできる魔術と違い、魔法はどれもこれも通常は上位の存在の力を借りる。今は。


そう、今は、である。


ぶっちゃけ言ってしまうと、単独で魔法が使えることと上位の存在――精霊、神等――の魔力量がほぼ同等である、というのがイコール。

それでも上位の存在もピンからキリまであるので何とも言えないが、セトナの見立てでは俺は上位の存在の中では下の中。


ちなみにラーは中の下だそうで、この世界で最大魔力量を誇っているとのこと。

で、アストが上の下、デルちゃんが上の中、リオが上の上だそうだから、俺の周りっておかしいのばっかりいるんだなと認識した。たぶん間違ってない。


ちなみに、双極属性持ち――つまり光と闇を同時に持っているということだが、これと、希少属性の祖は大体下の下に届くか届かないかのラインらしい。


人間はちっぽけやね。


ラノベのチートものとかよく読んでた記憶あるけどこの世界ではたぶんそんなにチートなくても生きていけるわ。上位世界はチートが普通みたいだけどさ。


「ずるいよー( ;∀;)」

「ごめんよ~(;´Д`)」


おや、とそっちを見てみればアルトリアとナタリアがお互いをつつき合っている。

ナタリアがセトに触ったからズルい、ということらしい。

私の婚約者なのに~、ってとこだと思う。さあセト、抱きしめて来い。


「何を俺に望んでいるのかはなんとなくわかるが今はしないぞ」

「チッ」


駄目だった(´・ω・`)


まあ、皆見てるしな。

後だ後。


にしても、ずいぶんゲームから外れたんじゃないかと思う。

俺の胸についているバッジは10になった。バッジというよりはブローチの方が近いが。

パーティの時以外は他のものはつけていないものの、あと8つ、ブレスレットだの髪留めだのベルトに通すだので身に着けることもある。


「よーし、そこの魔力枯渇起こしてる馬鹿は置いといて、そろそろ防御に入るか」


武芸授業の先生は2人いる。スパルタクス先生とアラン教官という。

アラン教官の登場に皆が教官の方を見た。俺は一通りアウルムに教わっている最中である。すべての属性が使えるとはなんということか。

ちなみに、仕える属性が多いやつほど魔力のコントロールが難しいらしく、俺はなんとかやりきった。


ちなみにアウルム!


こいつ、土属性の魔法を扱うのだとか、言っていた。

言っていたのに、光属性も水属性もさらっと併用してんのな。


あと、火属性。

もしかしてとは思ったが、全属性、とりあえず扱えるらしい。転生を繰り返すうちに全部の属性が使えるようになったのだとか。


「属性って生まれは問題ねーのか?」

「関係はあるが、精霊が宿っただけの身体だぞこれ。上位の精霊は属性あんまり関係ないし」

「関係ある精霊の方が大多数でしてよ」


だからアウルム、お前おかしいんだって!

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