ピンクパールとの邂逅
アウルム視点
授業の無い時間をサロンで過ごすことが多くなった俺たちは、おそらく校内で一番邂逅率が低いと思う。
それでもそいつには会うのが確定しているらしかった。
どこの世界軸でもこいつには会ったし、こいつに会ったからと言って何かが悪化するわけではない。
周りのモン全部を守りたいなんて思っちまって、でも全部守れるわけじゃねーってのも分かってて、そん時にこいつが来たら、流石に、な。
だってこいつ、光と闇の双極属性だぜ。特に闇な。
ピンクパールの髪と黄色、黄緑、オレンジの淡いグラデの瞳。
本人はこの目が原因でいじめられることがあるらしく、会う世界ではいつも俺が庇っていた。
「えっ――シド?」
だから、会いに行った。
ちなみに今、初めて顔を合わせたはずだから、もしかすると。
「覚えてんのか、ナタリア」
「……うん。こんな早く会うとは、思ってなかったけど」
ナタリア・ケイオス。
珍しく名前ではなく、一家として祝福されているタイプである。まあ、ほとんど祝福の力なんて持ってない神様じゃあるが。
ちなみに別に彼女はケイオス家の血を継いではいない。
「元々転生者だったのに、俺らと同じ巻き込まれ方して残念、って感じだな」
「頭パンクするよ、あれ……て、分かってたの!?」
ああ、と返せばなんじゃそれえええ、と令嬢にあるまじき声を上げる。
こいつは、ロキやソルやらと同類且つ、シオンと同じ転生を繰り返すタイプだったらしい、一体どこの神の思し召しか。
「ゲーム、イベント、攻略対象。その3つで大体どこから来たのかなーなんて台詞言えなくなるのが同じ転生者ってやつだろ。ま、転生者同士として会うのはこれが初めてだけどよ」
そっか、とナタリアを息を吐いた。
嘘だがな。
俺はお前が転生者だってのに最初から気付いてたし、何度も転生してるのも知ってんよ。
「もう、梅子め! アイツのせいでめちゃくちゃになるわ! 戦争戦争戦争、死徒を敵に回していきなり逃げるのほんとやめてほしいわ! こちとらあいつが逆ハールートいかないように他の攻略対象掻っ攫ってるのに、足りないよ! ねえ聞いてよ、ソルとルナとエリスに強力頼めないかなあ!」
あー、こいつはこいつで頑張ってたのか。
俺はゲームは詳しくねえが、分かってるのはゼロからロキを取り上げちゃならねえってのと、プラムがとにかく手を出してくると攻略対象がそっちになびき、逆ハールートを往く、ってことだろう。
エリス嬢は平民から上がったばっかで他国の王族についてあまり知らず、多少プラムの邪魔はしてくれるが、素直ないい子なのでプラムが出てくるとただの男爵令嬢としてしか動かない。
ソルたちが警戒するほど、エリス嬢はヒロインやってないのだ。
「今回は何とかなるだろーな。ソルもルナもエリスも転生者、あとロキとロゼもな」
「えっ、何それ」
ナタリアが目を丸くする。
「ってことは――ロキにゼロを持っててもらって、ロゼ嬢を王子とくっつける……? 皆が誰狙ってるか分かる?」
「ソルはアレクセイ見てるな。ルナとエリスは不明。ロキはゼロに行くと思う。ロゼはカルの婚約者候補筆頭に上がった」
「だが一気にいろいろと解決した」
「ソルは魔物がアンフィスバエナだったから、取り合いイベでも起きるんじゃね」
「アンフィスバエナって、彼攻略対象じゃないのに( ´∀` )」
一気に緊張がほぐれたらしいナタリアは息を吐いた。こいつも男爵令嬢、エリスと同じルートで上がってきている。
闇がある割に黒要素ねーけど、パール効果のある髪は闇属性の特徴だ。
「他はライバル令嬢とくっつける方向でおk?」
「プラムの妨害すりゃなんとかなんだろ。ちなみに、プラムがもしロキをライバルとして蹴落とす場合はもう問題ない。ある意味解決した」
「ほう……」
あー、こいつが転生者だってのもあるし、よし。
やっぱしっかり話せる場所欲しいじゃん。
「ナタリア、お前鈴蘭の間に招待するわ。ついてこい」
「え、いいの? あなた身分は大丈夫?」
「半精霊様なめんな」
ということでひとまず、鈴蘭の間に彼女を連れて行った。
♢
「うわー、うわー、ヒロイン湧いたー」
「同じこと考えるやつはいる、ってことか」
俺たちの目の前にはルナ嬢とエリス嬢。
ソルも一緒に居るし、ロキもロゼ嬢もいる。ゼロは席を外しておいてほしいとロキが頼んでいたので、ここにはいない。
「はいはい、で、ナタリア様は一体どういう? 転生者?」
「ああ。ちなみにお前らより先輩だ」
「え、アウルムとシオンと一緒ってこと?」
「アウルムとシオンって誰?」
「シドとループ転生してるロキのことだよ」
一先ずそれぞれに自己紹介を任せ、打ち解けてきたところでロキが口を開いた。
「ひとまず、シオンの敵じゃないってことだな?」
「うん。……前回はシオンさん先に死んじゃったけど」
「チッ……やっぱり戦争不可避かよ」
俺たちもあまり未来については語ってないから、ロキが苦い表情でぼやく。
『私が死んだ後、プラム様はどうなったの?』
「えーと。まず、ぼんやり、ですよ。記憶がない、って本人は言ってました。すぐ戦争になったので最前線に送られてすぐ亡くなりました」
「やっぱ第3王女だもんな。ま、助けられたのは俺とロキの姉貴と、ナタリアだけだよな」
「トール様たちは先に戦死なさいましたからね」
俺が確認の言葉を紡げば是と返ってきて、ロキもソルもルナもエリスも蒼褪めた。
「待って、それってまさか、イミラブ2に入ってないんじゃ」
「あ、続編出たんだ。うん、入ってないと思う」
「あー、続編知る前に死んだ――ッて、は? アウルムと一緒に来たわけじゃないんだ?」
「シドの方が先だったよね?」
「ああ。お前急に来たもんな」
「よーし、転生した時期は死んだときに関係ないってことでおk?」
俺の方が後に死んでた。
でも、それだとおかしくねえ?
「プラムの方は知ってるんじゃないかな」
「いつ死んだの?」
話を聞いたら、どうも、俺らの半年くらい前。
つーワケで、おそらく。
「ナタリア、お前乙女ゲームしないだろ」
「しないよ! ていうか弟がやってたイミドラに恋愛パートのスピンオフがあるなんて聞いたことしかない!」
だから最初っから戦争回避戦争回避叫んでたわけね。今までの彼女の人生を眺めていた記憶を呼び起こして、ふと気付く。
「ちょっと待てよ。プラムが記憶ねえって言ってたつーことは、プラム側のヒロインは憑依か」
「え、それなにげにヤバくない?」
「戦争も何も知らないで乙女ゲームをリアルにやってるつもりってこと?」
ちょっと間違えばそっちに走っていた可能性があるのでは、と自分を振り返ったのだろう、エリス嬢とルナ嬢の顔色がさらに悪くなる。
『でもそれなら今までの対応に納得がいきますわね。何度も私を殺していたのですから』
「もう戦争で死ぬ感覚も麻痺っちゃったし、殺すのも結構楽になっちゃったし。人の道を外れそうで怖い」
「俺なんか一番最初の転生で人の道とやらから外れたらしいけどな」
「お前の何億年の人生は聞いとらんわ」
「つれねえなァ」
すかさずツッコミを入れてくるロキに笑みを浮かべつつテーブル中央のクッキーに手を伸ばす。
「でもそれだと、おかしくないですか。彼女は私たちとは違い、戦争に参加していないと?」
「そうじゃなきゃここまで戦争狙ってくるのはおかしくない?」
「そんなに死徒を怒らせてえのかな」
皆で憶測を飛ばしているところ悪いが、思い当たったことがある。
でもこれがマジだとするなら、俺たちの手ではどうしようもない。
これはラストゲーム、というべき場所、のはずだ。
相手もそれをわかってるんじゃねえかな?
さて、誰の暇つぶしだったのかね。
「ロキ」
「ん?」
「こりゃあいよいよ、ネイヴァスに任せた方がいいかもしれない」
『ネイヴァス傭兵団にですか!?』
シオンが先に反応した。
『駄目です! 彼らは死徒側の人員でしょう』
「それを言うなら俺だって死徒側だ。女将と族長に動いてもらおう。お前らを転生させてる理由がこの世界と別のところの神を名乗る何かのちょっとしたボードゲームだったりしたらどうする。つーかその線かなり濃いけどよ」
『!!』
シオンが息を呑んだのが聞こえた。
ゲーム。チェスか、将棋か。
「どういうこと?」
「要するに、プラム姫さえ被害者っつー可能性だ。こればっかりは女将に聞かねーと分からん。それぞれの国での情報収集できるリオだっているんだぞ。シオン、何のためにあの人たちに呼び掛けた? もうここしかねえんだよ。自力で出来ることとできないことの分別くらいつくだろーが。変に意地張ってまた死ぬのか? もう終わりだぜ? 次ありません此処で終わりです諦めが悪いのはいいが引っ張り過ぎだ」
これ以上巻き込みたくないとかそういうこと言ってる場合じゃないって、分かってるはずだろォ?
こんなに転生者を巻き込んでるんだから分かってないはずはねえ。
女将はどこまでわかってて巻き込んだのやら。
「原作崩壊上等、って思ってる転生者共。お前らとにかく魔物を鍛えろ。イベントでプラム姫を止めろ。ロキ、俺とお前は可能性としてプラム姫が声を掛けてくる確率が高い、覚悟しとけ」
「なんで俺まで!?」
「あの王女顔がいいと見境ねー節あったからな。レディにこんなこと言いたくねーが、ずっと見てるとただのアバズレだ」
「お前にそこまで言わすとか相当だな」
ロキは紅茶を飲み終え立ち上がる。
「ヒロイン組はひとまず恐れずにイベントが起きたら回避せず適当にやっとけ。ったく、いくつも並行してゲームが進行するって面倒だな」
「まあゲーム開始まであと2年半だ。ゆっくりやっていこうじゃねーの」
……前話に同じ。
本日はここまで。
ここまで読んでくださってありがとうございました。




