後期開始
リメイク版をポイするためにサクサク投下していくことにしました。申し訳ございません
エリス視点
私がそれを知らされたのは、新学期が始まってからだった。
「え、ロキが白昼堂々銀髪男子になっている……だと!?」
「俺は夜になっても髪の色も目の色も偽装したままだったはずだが?」
ロキの的確なツッコミに笑い返せば、ほんの少しだけロキが笑った。
ソルやクルミ様だったら案外すぐこういう表情を見抜くのだけれど、私には荷が重いです。ロキ様と呼べ、と念を押されたのでそれに従うことにする。
そして、どうやらロキの中に出現したもう1人のロキに関しては、別の名をつけようとしているところだそうである。
「本当は、魔導人形にでも入れて自由に行動させたかったんだが」
「連れてこなかったんだ?」
「……俺との相性が悪すぎる。気が付けば破壊しようとしているところだったなんてしょっちゅうで、顔も合わせない事の方が多い」
ロキは少しうなだれていた。
どういうことかと詳細を問い掛ければ、本人にもよくわかっていないらしいことが分かった。
「もう1人の自分がそこにいるというのを認識しただけで気分が悪くなる。魔術を詳細に習ってない事だけが救いだ。下手に知っていたら戦争に使うようなものをぶっ放すかもしれん」
ロキの魔力量だと笑えないのでこれは早急に解決する必要があると判断した。
♢
と、言うことで、私は現在、もう1人のロキを閉じ込めてある、ソルの寮部屋にやってきている。ここには女子でやってきた。
つまり、ルナ、ソル、クルミ様、ロゼ様がいるということだ。
もう1人のロキは、柔らかく微笑んで私たちを迎えてくれた。
「いらっしゃい」
「「「おじゃましまーす」」」
「ただいまー」
ソルだけ言葉が違うのは仕方ない。
私たちはお茶の用意をして、さっそく彼女の話を聞く体勢に入った。
「では皆さん、お久しぶりですね。初めましての方もいらっしゃいますが、ロキ・フォンブラウ、今は、シオンとでも呼んでくださるかしら」
「エリス・イルディです」
「ロゼ・ロッティですわ」
「クルミ・カイゼルと申します」
ソルは新学期が始まる直前から会っているらしいので自己紹介はしなかった。
「早速本題に入ってよろしいですか?」
「はい」
ソルは弟(魂が)のことであるためか真剣な表情だ。
「まず、あなたの立ち位置を教えていただきたいのです」
「ええ、それだけは知っていてもらわねばなりませんね」
もう1人のロキことシオンは口を開く。
「まず第一に、私はループ転生、とやらを経験しているようです。この名称自体はナタリア様から教わったものですわ。彼女が一方的に告げて行っただけですけれど」
私たちは顔を見合わせる。
ナタリア・ケイオスが転生者だったのは間違いなかったけれど、ループ転生なんて言っているということは、ナタリア嬢もループ転生している可能性が高い。
そしてアウルムが回してくれた情報から考えると、彼女は何度もループ転生している。
その兆しを、アウルムは経験を全て仕分けて考えて理解したということだろうと思う。シオンに合わせて並べてみたらたぶん、ループ転生の時系列が分かる気がする。
「次に、私の敵はあなたがたでは倒すことができません。私を此処に飛ばしたのもアレの仕業でしょう……」
「それ、神を名乗るヤロウ?」
「シドですね、それ言ったの」
神を名乗るナントカとシオンは戦っていたらしい。
「戦場に出るなとシドからきつく言われませんでしたか?」
「言われましたよ」
「端的に言うと、相手が国家丸ごと消し飛ばすような魔法ばかり撃ってくるからですよ。それこそネイヴァス傭兵団のようなものをぶつけないと埒が明きません」
「そんなに深刻なの!?」
クルミ様が驚いたように声を上げた。
ネイヴァス傭兵団、知る人ぞ知る凄腕の傭兵団で、どこにも属さない。
彼らはただ、精霊にのみ従うといわれる。
で、ここからはロキ様情報で、彼ら自身が精霊、皆上位世界の出身で、一部に例外がいるけれどそれでもアンデッド系の魔物の最高位クラスに君臨するリッチだのノーライフキングだのの者になり、その上位に位置する死徒列強すら片手で捻り潰すのが正規の団員だそう。
チートの塊ですわー。
「では、質問は?」
「はい、ロキ様がシオンさんを傷つけていることに負い目を感じておいでです。どうすればいいですか?」
私の問いかけにシオンは目を見開いて、少し目を伏せた。
「……そう、もう彼は私を排除に動こうとしているのね」
「それって不味いんじゃ……」
ルナのつぶやきにシオンは首を横に振った。
「私がいることが異常なのですよ。彼ほどの魔力量であれば、私を殺してでも自分の中から排除しようとするでしょう」
「やめさせるのは?」
「無理よ」
ソルが断言した。
皆でソルを見る。
「なんで?」
「だって最初に彼女が言ったのよ、“飛ばされた”って。彼女がシオンと名乗っている今、私たちの認識では彼女とロキは別物。でも、実際は? 話を聞く限りじゃ、別の世界のロキなのだから――ドッペルゲンガーよ」
ドッペルゲンガー、と聞いて背筋が凍る思いがした。
自分がもう1人居る、目の前に、それはどれほど気持ち悪いことなんだろうか?
「しかもロキ同士ってことは、私たちとは比べ物にならない魔力量のぶつかり合いを伴ってるはずよ。命の危険を感じてさらにロキの方が敏感になってるんじゃないかしら」
「そんな……」
ルナがしょげ始める。
私の中で一つの仮説が立った。
「と、いうことは、相手の狙いはロキの消耗ってことですよね」
「ええ、そうなるわ」
「どういうこと……?」
そろそろ理解が追いつかなくなってきたらしいルナが涙目だ。
ちょっと、考え方が日本人寄りすぎるかな、彼女。もう日本ほどこの世界が平和じゃないことは理解してるはずだけどまあ、ソルがいるからなー。
「相手の狙いは、別世界のロキを此処のロキに送り込んで、共倒れにさせることよ。話を聞く限り、ロキがキーマンなのは間違いないから」
「はい。相手の防御の要を排除できるのが、ロキだけなんです」
「そしてドッペルゲンガー状態の今、シオンに手を出せばロキもたぶんただじゃ済まない。急に送られてきたのかどうかが分からないから何とも言えないけど、デルちゃんたちに言えばなんとかしてくれるんじゃないかしら」
私たちがこれからの予定をまとめたところで、夕食のために食堂が解放されるタイミングのチャイムが鳴った。
「あ、あの、2つお聞きしても」
「なんですか?」
私は最後の質問をすることにする。
「……ロキ様は、髪を染めるのをお止めになられたのですか」
「ええ。“もう偽るのは止めだ”と。カッコよかったですよ」
そっか、何か彼の中で吹っ切れたことはあったのかもしれない。
「もう1つは?」
「えっと、シオンさん、シオンさんの妨害をしてくるヒロインはいましたか?」
「……セネルティエ王国の第3王女です」
「……マジか」
私はシオンが口にした人物に頭を抱えた。
一番めんどくさいヒロインだったとルナから聞いているヒロインじゃないか。
王女である、けれど弱小国である。
というわけで人質みたいなもんさ、という立場のヒロイン、プラム・セネルティエ。
「彼女もおそらく私と同じく逆行転生とやらをしています」
「待ってください、彼女、全属性のヒロインですよ」
「はい。だから負けました」
何度もね。と、ロキ様は悲しげに笑った。
――よろしい、ならば戦争だ。
「ロキ様、あなたの負けは、死徒との開戦ですか」
「いいえ。私の敗北は、カル様の死ですわ」
きっと唇を噛んでいるシオン、本当に悔しかっただろうな。
それにしても、プラムか。
うん、対策、取れるよ。
後は、政治を何とかしなくっちゃね!
そこんとこは、ロゼ様に頼もう、うん、そうしよう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




