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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
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イベント回避への尽力

協力者など居ようはずもない、身分が違うのです!

王宮にやって参りまして、王族への挨拶をすることに。王子は9歳なのにお披露目になっちゃって大変だな。


俺たち兄妹は、上の3人は既に面識があるとのことで、後からいくとか。俺たち下の3人だけ先に行かされました。俺は礼儀作法がきっちりしてるから任せられるよって両親が言った。俺も、早く挨拶済ませてクルミと姉貴――ソルを探しに行きたいし、丁度いいや。


しかしめっちゃ並んでるな。

コレーはうつらうつらしていたため、挨拶はまた今度にしようということになって置いてきた。よって今ここに並んでいるのは俺とトールである。


「ねえロキ兄」

「うん?」

「王子って、どんなやつかな」


おおふっ、なぜこんなに口が悪いんだトールよ。

パパンに叱られるぞ。


まあ、俺はトールの問いかけに応えることにする。


「まあ、いいやつだと思うぞ。案外、女性が苦手だったりして」

「……それはそれで、なんだか複雑」


何がだ。

お前の頭の中で一体何が絡まっている。


ゆっくりと流れる列が俺たちの番というところまで来た時、周りの令嬢たちを見ると、俺たちを気にすることなくただ、第2王子を見つめていた。

やばい、狩人だわ、狩人がここに居るわ。


この目は、ドン引きするわ。

同情するわ。

トールも同じらしく、うわぁ、と声を上げずに悲鳴を上げていた。


「お初にお目にかかります、カル殿下。ロキ・フォンブラウと申します」

「トール・フォンブラウと申します」


王子めっちゃ疲れてるのにこっちに笑みを返してきて、いい子だなあとか思ったわ。


俺たちが挨拶を終えて家族の元へ戻ると、近くにクルミが来ていた。ソルも連れている。ルナは置いてきたらしい。


「では、お父様、お母様、私はバルコニーに居りますので」

「ああ、気を付けて」

「ゼロはどうしたの?」

「令嬢に囲まれておりましたので逃がしましたわ」

「「あちゃー……」」


ゼロはイケメンなので仕方ない。

俺はクルミとソルと共にバルコニーへ向かった。


「2人はもう挨拶は済ませましたの?」

「ええ」

「はい、ルナも一緒に終わらせてきましたよ」


あれから俺たちはそれぞれイベントごとについて考えを巡らせる日々を送っていた。

3人とも情報の出所が違うからだ。


ソルはイミラブ、俺はイミドラ、クルミはイミラブの小説であり、細かく描写されたイベントとそうではないイベントでほとんど被りがないのが特徴的である。


とりあえず俺的に、目下に迫っているのは死徒絡みのイベント。

このイベントは回避するとどうなるかわからない。将来的にかなりヤバくなりそうなイベントなので、これはこなした方がいい気がするが。


俺たちは2階のバルコニーに出て、誰もいないことを確かめて、身を寄せ合って話し始めた。


「とりあえず、何か目下ヤバそうなイベントは?」

「死徒絡みが1件」

「あら奇遇ね、私もよ」


俺とソルが死徒絡みで1件。クルミもちょっと気になることがあるらしい。


「とりあえず、ソルから」

「はい。今年の冬までになんかすごい病気が流行って攻略対象の母親が2人、そして私の母親が死にます」

「「!?」」


そんな設定あったんか!


「同じこと言ってるかも」

「クルミも?」

「うん、大体その攻略対象ってプルトス様とリヒト様でしょ」

「正解」


プルトス兄上の母親?

メティス様死ぬの?

マジで?


「イミドラでは死徒絡みで死んだって聞いてたけど……」

「あってるよ、ロキ……それ、なんだっけ……エングライア?」

「エングライア絡みなのか?」

「うん、確かその死徒が、薬草を集めてて、それが足りないからって、生やす魔術使って」

「……! クフィ草の採集イベだ……」


俺はイミドラにそのイベントがあったことを思い出した。

うわ、やっべ、怖。

ってことはクフィ草集めなくちゃいけないのか。

うわー、錬金術やってないとめったにとらないしなあ。錬金術はやりたいし、うん、先生探してもらおう。


クフィ草というのは、薬草というよりは毒草の一種だ。錬金術で使う時は、魔除けの薬の材料に必要になる。


「それで、ロキは?」

「ん、ああ、たぶんなんだが、時期的にそろそろ死徒がロキに接触してくるころだと思う」


確定しているのは、それが死徒であることだけだ。どういう理由で、何のために来るのかは不明。

ソルが爆弾を投下してきた。


「ああ、それちゃんとやっときなさい。イミラブ2でリーヴァが来る原因それだから」

「えっΣ(0w0)」


このイベントで来るの確定なの!?


「そのイベントでロキと死徒に繋がりができるわ。リーヴァについてはアンタの方が詳しいでしょ」

「ま、まあ、そうだけど」


じゃ、うまくやりなさい、とソルからは言われてしまった。はー!?ふざけんな!

死徒がどれだけおっかない存在か知ってる!?

リーヴァは怖がらなくていい奴だけど!


「クルミは?」

「ううん、言いたいことは言ったよ。ああ、でも、確かこの後ロキとカル殿下って婚約じゃなかったっけ」

「むしろ一番それの回避をしたいんだが?」


俺はクルミの言葉に返して、ソルとクルミは「やっぱりそうだよねー」と言い出した。


「うん、わかるよ、お前中身は男の子だもんね」

「どんなに女装が似合っても男の子だったもんね」

「なんかめっちゃ言われると俺の黒歴史みたいになってくるからやめろや!」


黒歴史――では、あるのか?

女装癖があって悪かったな!

姉貴の服カッコよかったんだよ!


「まあ、あれはアキラの服のセンスの所為でしょ」

「え、私の所為なわけ?」

「スカートはいててあのカッコよさはちょっと、ねえ?」

「だよな。……大体、俺の服コーディネートしてたの姉貴だし」


いっそすべて姉貴の所為にしてやれ。

だが姉貴が俺の服をコーディネートしてたのは事実だ。


ふと、きゅぅ、と誰かの腹が鳴った。


「……」


クルミが顔を赤くして腹を押さえている。

まあ、夕飯これだしな。

今日のパーティは立食パーティなので自由にとって来ればいいだけだ。


「なんか摘みましょ。私がとるから指示くれる?」

「はいよ」

「うん、ありがとう、ソル」


俺たちは1階に降りて、ソルの後をくっついて皿にちょっとずつ食べたいものを指示してとってもらい、一緒に食べた。


「ケーキある」

「デザートいいねえ」

「うえ……生クリームはどっかり来る……」

「フルーツタルトあるわよ、あっちにしようか」


昔と変わらない会話を繰り広げながら俺たちは夕食を済ませた。





パーティの終わりまで結構時間があったので、また3人でバルコニーへ向かった。

するとそこには、なんということでしょう。

カル殿下がいらっしゃったのです。


金髪が風になびいて綺麗だ……。


「あら」

「まあ」

「えっ」


俺、クルミ、ソルの反応。ソル失礼。

王子はこっちに気付いて、俺たちを手招いた。

行くしかねえか。

俺たちは大人しく王子の方へ歩み寄った。ソルはガチガチに恐縮してしまう。


「さっきぶりですね、ロキ嬢、クルミ嬢、ソル嬢」

「はい、カル殿下。お疲れ様です。まだ終わってはおりませんけれど」

「はは、まったくだ」


だいぶ疲れてるぞこれは。


「……うん、読み通りですね」

「え?」

「いえ、他の令嬢と違って特に私にアピールしてくるわけでもない、という意味です」

「あら……そういうのは素直に答えちゃいけませんのよ」


腹黒の政治界生きていけないぞ。

まあ、確かに、あんな令嬢たちに囲まれていたら逃げたくなるよな。


「お邪魔でないのでしたらご一緒させていただいても?」

「ええ、構いません」


こっちから伺いを立てる。王子は許すと言ったので俺とクルミとソルはパーティ会場ではなく、空を見上げて雑談をした。


街灯がない、建物の明かりもない、となると空はどこまでも綺麗に星を見せてくれて、月も目映く輝いていて、綺麗だなと、思った。

星座は地球のものとは違うのだけれど、それくらいは勉強しているので知っている。


「そういえば、ロキ様とソル様のドレス、そっくりですわね」

「ああ、そういえばそうですわね」

「王都で見つけたものですから……」

「あら、じゃあ同じところで買ったかもしれませんわ」

「ちょ、下町まで降りてきたんですかロキ様!?」

「降りましたわ」


錬金術師になるための訓練材料を買いに行ったのだ!

護衛はゼロがいたので問題なかったんじゃよ?


「なんでまたそんな……」

「錬金術を習おうと思っていますの。その訓練に使う素材を買いに行ったのです」


最初から上等な素材を使う方が成功率はあがるが、失敗したときに高いんだよ。錬金術は物を作れるようになるまでは金食い虫なので、なるべく安値で手に入れたい、そう言ったらゼロが教えてくれたのがその店。

そこに行った時に一緒にドレスなんかを置いてる店を見つけてそこで買ったものだ。


「なんでそんなものこのパーティに……」

「私は将軍を目指しているんですもの。自惚れと言っていただいて構わないわ、でも着飾ったらどこかの姫みたいになるんですもの。嫌よ、下手に爵位が高いからどこかの誰かの婚約者候補にされかねない」

「ロキ様……」


本音ぶちまけちまったじゃん!

ソルとクルミが憐みの目で俺を見ている。


「「銀髪に黒合わせたらカッコいいどこかの戦姫になるだけじゃない」」

「ハモるな!」


ついツッコミを入れてしまい、俺が俯く番だった。王子居るんだった。

大体あの戦姫は鎧青いわ。黒ちゃうわ。


幸い王子はスルーしてくれたようで、その日はそのままお開き時間となったので俺たちはそれぞれの馬車に乗って屋敷へ帰ったのだった。


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