ペルソナ
自分で書いていて一番納得いってない場面。
なぜこうなった。勢いに任せた見切り発車の恐ろしさを痛感しました言い訳させてください!
実家へ戻って参りました。
「レスター!」
「ろ、きっ!?」
フォンブラウ公爵邸、ここにちょろっと離れとして造られた工房を構え、俺たち兄妹に錬金術を教えてくれている片目隠した鉄色の髪の男、レスター。
偽名であると本人が言っていた。
それじゃ偽名にならんぞよ。
まあ、本人は記憶喪失であるため、自分に名前をくれたオオカミの獣人の名をそのまま使っているだけだという。青黒い髪で、目は金色。アウルムによると、こいつは半精霊じゃなくてまっとうな上位世界の住人だそうである。上位世界の住人多くないか。
彼は錬金術に特化したタイプだそうで、けれどあまり力はなく。
その為、身体を休めるためにたまにこうして下位世界に降りているタイプだそうである。
俺たちが一緒に錬金術やりだした途端に超元気になったけど。
土属性とかいろんな属性の魔力をちょっとずつ混ぜて取り込むと元気になるらしい。アウルムは関係ないらしい。
「お帰り、スズ」
「ただいま」
しかしまさか転移してすぐにレスターに会うとは思ってなかった。
プルトス兄上、フレイ兄上、スカジ姉上、俺が転移してきたのが分かったらしいトールとコレーが転移陣に向かって走ってくる。
「ロキにーさま~!!」
「ロキにい!」
もはやこいつらにとっては俺は兄貴らしいっす。
嬉しいけどね。
弟も妹も可愛くて大好きだ。
「あれ、アウルムは?」
「ソルとルナと一緒に戻ってくるとさ。来週には来るはずだ」
閉寮は来週だからな。
アウルムはソルと一緒にもうちょっとセトとアルトリアをくっつけてくるとか言ってた。まったくオープンなダチと姉である。
ところで、レスターはこの世界でかなり長く過ごしているようだ。なんで俺の家庭教師の後輩ってことになっていたのかが分かった気がする。しかもしょっちゅうキョドるので、こいつはコミュ障認定してみた。
荷物をひとまず部屋にポイして着替え、シャワーを浴びたりなんなりやってその日は終わった。
翌日からは訓練の一環であるランニングやら素振りやらを再開して、その後はひたすら俺の自由研究を始めた。
♢
俺の自由研究というのは、単純な話、バッグの中に入れた工房を作ることである。諦めてなんかいません。
でもこれ、どうなんだろうな、別の空間に繋いだ方が楽なんかな。
じゃあその空間を別に作んなきゃいけないだろ?
適性はあるけど大丈夫かいな、って感じなのだ。
魔力めっちゃ使いそうじゃね?
維持にめっちゃ魔力要りそうじゃね?
そんなんない?
この世界では普通維持ってのにかなりの魔力を使うんですわ、ケッ!
来る日も来る日も研究に明け暮れてたら丁度ソルとルナ連れてアウルムが戻って来た。リオとデルちゃんとアストも一緒に戻って来たので一度研究について愚痴ってみることにした。
「デルちゃん、アスト、空間を中に作るのと、入り口に設定するだけってどっちが簡単?」
「「そこでなぜスペシャリストのリオに頼まない」」
「なんとなく」
リオが口元を押さえて笑っている。
ソルは俺に視線を向けた。
ルナは現在部屋で休んでいる。俺たちと一緒に身体を鍛える、と言い出したのはよかったが、体力がついて行かないらしい。
「ロキ、リオに喧嘩売ったらエライ目に遭いそうなんだけど」
「これは喧嘩じゃねえ、俺的にあんまりリオに頼りたくねーんだよ」
リオの属性であるとか、出現方法等から考えて、おそらくリオは闇属性の精霊で間違いない。
空間属性などの精霊はいない。
いるのは神々のみ。
基本の四大属性と双極属性以外、精霊は上位世界にしかいない。
そして、ゲーム設定を考え出すと、簡単に回答は浮かび上がる。
いいや、この結論に至ったのも、結構最近なんだけどさ。
たぶん、意識的にそうじゃないと否定していた自分はいたと思う。
けど、誤魔化しが効かないのである。
もうだいぶ前から分かっていた気もする。
「リオ、お前闇精霊の長ドルバロムだろ」
「あ、正解」
「デルちゃんはデスカル・ブラックオニキス」
「バレた~」
「アスト、お前はアスティウェイギア・メタリカーナ・オーロ」
「正解」
「――テメーらマジ何なの、いくらアウルムが大事にしてもガード堅過ぎね?」
この3人、イミドラをやってないと全くワケわからんキャラたちである。
まず、ドルバロム。
こいつは、闇属性の最高位キャラとして登場する。竜種、だがドラゴンでは敵わない。精神干渉、重力操作、さらには魔力の流れからマナに至るまで、すべてがこいつの思うまま!
まさに神!
敵に回った時点で人類滅亡ルート確定キャラでございます。
ちなみに、こいつは名前しか出てこない。
ゲーム内で戦うことはなかった。
理由は確か、倒せないから。
なんとなく、結構最初の方から分かっていた。親父さんが空間の神だって言ってたあたりから予想はついてたが、でもいざ認めると恐ろしい。
竜帝を一撃で捻るようなキャラだって話である。いやいやいや、この世界で最強って竜帝のはずでは?
死ぬ、人類滅亡の日が近い。
次、デスカル・ブラックオニキス。
いろんな名前があるらしいが、ゲーム内で出てくる名前はデスカルの名のみだったと思う。
属性は破壊、風、死。
まさしく死神!
不死傭兵団という呼称でしか呼ばれない傭兵団の分隊長格を張っているキャラで、武器は大きな鎌。戦闘は確定的にプレイヤーの敗北で終わる、絶対敗北。戦闘画面なんてありません、物語の様に死にます味方がボロボロ死にます、病気蒔かれて民がボロボロ死んでいく。
原因は、子供を傷つけられたからっていう身勝手な理由。
けれども。
今なら多少理由はわかる。
女将、がこいつであるというなら!
傷付けられた息子はアウルムのことだ!
アウルムに俺が気を遣ったのと同じだ。
俺が恐れた方法が恐らく実行されてしまうのだろう、そしてそのことにキレて彼女はその姿を現すのだろう。
風魔法の最高位である【真空空間】を広範囲に発動させ、敵味方の関係なく呼吸を奪い気圧を下げて破裂させてぶっ殺す。
そしてアスティウェイギア・メタリカーナ・オーロ。
こいつ、メタリカの元締めだ。
メタリカというのは、金属生成系の上位世界の種族のこと。
アウルムの苗字表記がメタルカになってたのを見て思い出した。
甥っ子だったって話だったよな。
その辺から推測して結び付けれたのがこいつだ。
武器はハンマー。ピッケル使ってたから忘れてたけど。
ヒント大量に置いてたよなこいつら、そもそも自分らの正体がばれても何もマイナスになる部分が無いのだ、憎たらしいことに。
と、いうわけで。
「お前らがいるだけで俺のライフはガリガリと削られるんだが」
「お前がアウルムのダチだって言って、アウルムがお前のために命をポイする素振りしてる間は大丈夫だぞ」
「待て、聞き捨てならない台詞が混じってた!」
「その反応してる間は安全だな」
「な、いいヤツだろ?」
アウルムはにかっと笑うから、この野郎、何言う気も削がれちまう。
「俺はお前が良いヤツ過ぎて辛いわ……」
「イミドラに詳しくないせいでほとんどついて行けなかったけど、ドルバロム基準で考えていいのかしら」
ソルの台詞に俺は首を左右に振った。
「アウルムに被害が及んだ時点でデルちゃんとアストは人類の敵だ」
「マジか」
「何言ってんだ、お前だって人間裏切る未来の選択肢の方が多いくせに」
「それ言うなよ! ソルとクルミ連れて逃げれるなら最初からそっち行くわ!」
「クルミヤバくない? 婚約者できたって話、マジみたいよ」
「げっ」
あああやっぱり!
クルミ守れなかったらどないしよ。
――まて、ソルお前何故帰ってきている。
「気負いすぎだな。クルミちゃんとやらは土属性だろう? 宝石魔術を扱っていたはずだ」
「よし、クルミちゃんこっちに引き込むか。ルビー、サファイア、ダイヤ、トパーズと、エメラルドでいいか?」
「アクアマリンとウォルフラムも協力してもらえた方がいいな」
「よしちょっと行ってくる」
あっという間に勝手に話進めていきやがって姿が掻き消えたアスト。クルミの婚約者、誰だったっけ。
アウルムが俺に跳び付いてくる。
「!?」
「俺、気に入ったやつには魂削れてでも尽くす主義なんだよ。てことで、契約しようぜ、ロキ(・・)!」
俺は耳を疑う。
ロキの名前で言ったか、今!?
ロキの神格。
それは、裏切りだ、嘘と闇で塗りつぶされたどす黒い神格だ。
でもその名を継いだこのロキという身体は神々に愛されたように力を溢れさせている。
もしかしたらロキは、この世界が、好きだったのかもしれない。
ゲームのロキと、今のロキである俺と。
「……裏切者の神の名を持っている私と、ですか」
「おう」
屈託のない笑みで笑うから、ああだからこいつ皆に好かれるんだなあと、そう、思う。
間髪入れずに即答するから。
すごく優しい目で俺たちを見ているから。
感覚が遠のいていく。
俺の中で何かが乖離していく。
それはずっと俺の傍に潜んでいたらしい、全く知らない何かであって。
「裏切るかもしれませんよ」
「俺はお前を裏切らねェ」
「――そういうことを、相手の目を見てまっすぐ言ってくる」
「――いつでもあなたはそうでした」
「――お久しぶりですね、シド。すぐにお別れになってしまって、とてもつまらないわ」
ぼんやりと、紡がれていく言葉を聞いていた。
アウルムは、いつの間にか令嬢に姿を変えていた俺を思いきり抱きしめる。
「――姫サン。キツかったっスね。でも、もうここで全部が終わるんスよ。安心して俺らに任せてくれ」
「あなたは私の欲しい言葉ばかりくださるわ。なのに、嘘じゃない。虚言ではないのね。いつだって私はあなたを信じてきたわ」
「何度も死んだ。姫サンも何度も死んだ。だから、あとはこの世界を死守するだけだ」
「ええ。リョウ様には、重荷を背負わせてしまうけれど」
「――闇竜ドルバロム、破壊神サッタレッカ、技巧神アスティウェイギア、魔金精霊アウルム。私の身勝手な呼びかけに応えていただいて、本当に……ありがとう」
ロキ・フォンブラウ、という人格。
そこにあった、もう1人の人格というものが。
俺たちの前に姿を現した。
「あなたがたに全てを託します。どうか、どうか。私の家族を。親友たちを――助けてください」
俺の身体を強くアウルムが抱き留めた。脚に力が入らなくなっている。
身体に負担がかかったらしい。
鍛えてたんだがな。関係ないかな。
「今、の……」
ソルの声に、俺は胸に広がる冷たいものを感じながら、言葉を紡いだ。
「今のは、もう1人のロキだ。正真正銘、女の人格」
アウルムが俺をお嬢、って呼んでいた理由が分かった気がした。
女のロキのことは姫って呼んでたのね。
なるほど。
「アウルム、今のって……」
「ああ、俺も初めて会ったけどな。逆行転生っつーの? 俺もこの転生の仕方はしたことなかったけど、要領は分かってる。はっきり言う、俺もこんなこと初めてだ。プレッシャー掛けたくねーけどさ、皆そんなもんだったから、今更って感じだろ」
アウルムは俺を抱き起こして、きっぱりと言い切った。
「この世界にはもう後がねェ。パラレルワールドも全部何もかもが! この一点に収束した。ここで戦争回避できなかったら国ごとどころか、この大陸の人類滅亡確定だ。どの世界も、決まってんのは、ライバル令嬢が蹴落とされた後。――ヒロインと結ばれた相手の家の没落」
「ライバル令嬢の身の安全は大前提、ヒロインが選んだ相手の家をボロボロにした時点で死徒側は勝利確定、もう後はねえやり直しもきかねえ姫サンは思いつく手は全部打ったし頑張った、俺が保証する」
「だから、頼む。涼、明。俺は姫サンを助けたい。自分が死ぬのより家族が死んでく方が辛いんだ。置いてかれんのってめちゃくちゃ寂しいんだよ……」
だんだん、泣き出して。
こいつが泣くのって、あんまなかったから。
それだけ、ロキに肩入れしてんだなと。
「俺の事は好きに使ってくれて構わない! この身だって削ろう。最高の材料が欲しいならいくらでも用意する! だから、」
あーあー、聞いてていたたまれなくなってきちまった。
俺は令嬢の姿から令息の姿に変わる。
んで、アウルムをどついて押し倒してやった。
「なーに湿気た面ァしてやがんだ、明羅」
「!」
俺の今の髪は銀色である。
ああ、お前がその気ならもう偽るのはやめてやろうじゃねーか。
ロキ嬢が自分を偽り続けて“ロキ神”になっていたのなら、俺は今ここで生きる“ロキ”である!
ここまで人格がキッパリ分かれんのも、珍しいかもな?
「らしくしろなんて俺には語れねーよ。お前が泣くほど辛かったのは分かった。でもな」
「弱気なお前なんてらしくねーよ。俺もいる、姉貴もいる、クルミだって他の皆だっている、何よりお前の保護者が堂々両親揃ってるじゃねーか」
破壊神様とか言われてたな、デルちゃんのやつ。
何気に秘密隠してたじゃねーの。
「何を怖がる必要があるんだよ。高校生脳で何ができるかなんざ知らねえ。だがまだこの身体は13歳だ! 物語が始まるまであと3年。俺たち自身の教育に3年掛けられる! 中学時代やり直し上等! 後がねえ、やり直しがきかねえ、上等だ、俺たちだってあの事故でいきなり死んでこの13年を生きてきた。2度目の涼はなかった。当然だわな、命ってのはそんなもんだろ」
転生しまくって、感覚がずれて、おかしくなっていったのかもしれない。
で?
それが何だ?
俺は。
「原作崩壊上等。このまま死徒列強のアクセサリフルコンプしてやるよ」
「じゃあ私はアレクセイ様の攻略に本腰入れよっかな。アレクセイ様はシドと同じ世代の攻略対象でしょ。アレクセイ様の将来の婚約者からはアレクセイ様を奪う形になるけど、まだ婚約の話出てないはずだし」
やる事は決まった。
アウルムのやつ、茫然と俺たちを見てやがる。
「……は、はは。コノヤロー、胸キュンしたわ」
「惚れんなよ?」
「くそ、してやられたぜ!」
アウルムが俺に掴みかかって来たのでうまいこと避けてターン。ソルと一緒にアウルムに跳び付く。
「ふ、ふふっ」
「くくっ」
「はははっ」
3人で笑い合う。
もう大丈夫。
さあて、シリアスバッチコイ。
怖がったって何も始まらないから。
ただ、これが俺にとっての地獄の始まりになるとは、誰も思ってすらいなかったのだった。
この話が原因でリメイク始めてたりします( ´∀` )
リメイクの更新はいつになるか分かりませんが、そちらが始まったらこの話とは別のパラレル的なものとしてお考え下さい。




