閑話 魔物学の教授
今回は魔物学で皆が返した魔物の整理がてら。
ハインドフット教授視点
魔物学、というのは、この世界で生きていくために必要な知識の一つであるため、必修科目となっている。
平民たちでも知っておいた方がいいため、教会などが運営している学校でも教えるようなこと。
魔物というのは、とてもとても大きな括りの名称だから。
魔物の中には、精霊に近いもの――半精霊、人間に敵対するもの――魔獣、人間に対して必ずしもは攻撃を仕掛けてこないもの――幻獣の3つが含まれている。
魔物たちには形態ごとにS~Fまでのランク付けがなされており、さらに個体によってもS~Fのランクがつけられているため、通常は最も弱い魔物をFFランク、最も強い魔物をSSランクと呼ぶ。
これらの解析は解析魔術または解析魔術を組み込んだ魔石を使用して解析せねばわからない。それでも隠蔽を使っている子や偽装を使っている子には効きにくいのが難点だ。
それにしても、今年の前期受講生、結構皆優秀だったなあ。
生徒たちについて思いを馳せる。
私のパートナーであるマンドラゴラのリリが目を土からのぞかせていた。そろそろ彼女から花を摘ませてもらわなきゃならない。
基本的に、規格外と呼べる子が複数いたのが気になる。
昔似たような事例があって、死徒の逆鱗に触れたって話も、教授界隈では有名なお話。
恋愛が絡むとやたら間抜けになると言うか。
ところで、人間が孵した魔物たちは生まれたときに大体主を決めてしまう。その後はもう逆らえなくなるものがほとんどなのだ。
しかし、今年に関しては、ずいぶんとプライドの高い魔物が多かった。
ケットシーが3人。
ケットシーは猫型の魔物で、いいや、幻獣と言った方が近いだろう。いわゆる獣人系に分類される。ランクはEで、これからどう化けていくのかが楽しみでもある。
鋼竜の幼竜。まだベビー。
鋼竜というのは、金属装甲を纏ったような奇妙な、飛行能力を捨てていないのにものすごく硬い竜種全般のことである。ランクはDで、これからどんなドラゴンに育っていくかが楽しみだ。
ゴールドドラゴンの幼竜。まだベビー。
金色に輝く、太陽の化身とも謳われる鋼竜種で、彼らの卵からは竜種しか生まれない。
逆に、よくぞこれを孵したものだと、この子を孵した生徒にうちのゼミにおいでと声まで掛けてしまった。ランクはBで、ベビーがパピーに、そしてキッドになって成体になればランクはS。将来がしっかり分かっているが、その分希少なものを孵した。
白蛇。これもまだベビー。
白い蛇、と言ってしまえばそこまでだが、竜種に転ぶ可能性がかなり高い。背中に小さな突起があったから、おそらく翼が生える可能性あり。
ランクはDだが、うまくいくと、とんでもないものに育つ可能性がある。
たとえば、現王家の紋章のククルカンとか。
アンフィスバエナの幼体。ベビーである。
双頭の蛇であり、竜種の一種。赤い身体を持っていて、2匹合わせていつも呼んでいるが、ご飯は別々に上げている模様。アンフィスバエナには最終形態が2つあるので、どちらに転ぶか見物だ。ランクはBで、最終形態はどちらもS寄りのAである。
ウロボロスの幼体。ベビー。
どれだけ竜種を孵すんだこのクラス。とてつもなく巨大な蛇形態の竜種なので、進化はお外でやってくださいと言いたい。いや、研究材料としてはかなりの価値がある。伝説級の魔物である。神話にポンと出現するレベルの魔物である。
ランクはA、子供だからなんだ。成長すれば間違いなく神クラスの大物。ランクはXとされる。Xは、測定不可能、のことだ。
ラドンの幼竜。ベビー。
もういい、何も言わない。
多頭が他にも出るとは思っていなかった。
ランクはBだが、成長すればこちらも神クラスの大物である。Sランク。
ワイバーンの幼体。ベビー。
今回は2匹。もう何も言わない、こんな子もいますよ。細身のドラゴンの下位種である。
ランクはD、成長してもB寄りのC程度。
アルミラージ。
やっと普通らしくなったなーと思いつつ観察していた。別名石角兎。角兎はホーンラビットという種になる。
よく群れる。今回は1匹しかいないが。
ランクはD。成長しても変わらないが、群れの規模によってはランクがAにまで跳ね上がる。意外と狂暴。
コボルド。
今回は2匹。ワンちゃん扱いを受けている。獣人区分なんだけどな。
鱗要員が多いせいか、もふもふは好かれている。
ランクはEで、群れてもC程度にしか見られない。ただし、強力な個体がいる場合は別。群れの指揮を執れるだけの力を持った個体がいる場合はアルミラージよりも武器の扱いが上手い分ややこしく、こちらもA判定が出る。
レッサースパイダー。
2匹。うん、典型的な嫌われ魔物。残念ながら今年は2匹とも女の子の許に生まれてしまった。ランクはEで、成長経路が沢山あるので何とも。最も強い進化経路だとAランクになる。
ジャック・オ・ランタン。
これは人型の魔物に区分されている。
ランクはCで、そこまで凶暴でないのが救いだ。進化経路によってはSランクになる。
これで17体、17人の生徒は皆無事に卵を孵してくれた。
本来の魔物の卵よりも二回りは小さいものを使ったのだが、孵る直前にはとても大きくなっていたり、卵の殻がぶ厚かったりと、私の知っている形で生まれない子たちが数体居たので成長が楽しみである。
魔物は最大でも6体連れるのがいいところである。本来は1体だが、やはり体の小さい個体ばかりだと群れた方がいいので、同種の魔物を6体連れている者などは見かけることがある。
私自身は3体だけだが。
後期から魔物学を取る生徒はどんな子たちだろうか。
私は後期は魔物学の延長である魔物学発展を開講することになる。今来ている17人は皆来てくれるだろうか。
たまに邪魔しないように、一部の生徒たち――ロキ嬢とその奴隷という立場に甘んじているシド君(本人はアウルムと名乗っているけれども)の魔物の観察に行く。
途中でシド君がかなり上位の精霊が直接降りてきたものだということに気付いてしまったけれど、気にしてはいけない。本人が話したくなったら話してくれればいいのだ。
だが――スレイプニルとか、白き鳥とか、何でそんな伝説級しかいないんだい、2人とも!
モデルは中学の先生という。




