前期終業パーティ
前期修了。
パーティだよ。
夜会じゃないんだけどね。
「ロキ~!」
「会いたかった!」
「久しぶりだの、ロキ」
順にプルトス兄上、フレイ兄上、スカジ姉上である。
今日の俺は紺色のドレスを着ている。淡い水色のレースの飾りは派手ではないし、斜めにぐるっとらせん状につけられているのが何とも、俺的にはストライクだった。
「これがアウルムのデザインしたドレスか……ロゼ嬢が言うだけあるな」
「ええ、本当に。……というか、好み伝えてなかったはずなのにこんなストライクゾーンど真ん中に投げ込まれると驚きますけどね」
「ははは、お前の好みなんざ分かってんだよ」
アウルムが笑って言う。
恐らく、あれだろう。
こないだちょっと話してくれた、“俺に殺されたことがある”ってやつだ。
パラレルワールドの集束点がアウルムであるとするなら、ない話じゃないだろう。
要するに、俺が女装してるのを知ってるアウルムも、知らないアウルムもいるってことだ。
「今度モノクロで作ってくれね?」
「黒銀と黒金選べ」
「黒金」
「……」
俯くな、赤くなるな。そこ意識すんじゃねーよ!
「おやおや?」
「ふむ」
「純情ですか?」
「迷わず俺の色言ってくれるとかちょっと……スンマセン頭冷やしてきます!」
行っちまった。
「ひゅぅ」
「いやー、ゴー……アウルムも随分と可愛い反応するようになったよな」
デルちゃんたちが居た。
デルちゃんたちも紛れておく気らしい。デルちゃんのドレスは暗いオリーブ色で、ずいぶん落ち着いている。アストの服はパーティ用ではなく、水色のバンダナ、黒のノースリーブ、先の絞られた黒ズボン、腰回りに長い黒布がつけられており、ブーツは黒。戦闘服らしい。
「俺たちはずっとバルコニーに居るから、なんかあったら呼びな」
「ああ、ありがとな」
「その声と顔に対する口調のギャップね」
「うるさい」
リオもいることに俺は驚いたが、まあいい。
ちなみに彼はがっつり紋付き袴だった。竜人は和装文化なのか、そうなのか!
♢
本日のエスコートは兄にお任せである。今日だけは奴隷の首輪を外してアウルムにソルを任せておいた。ルナはゼロにお任せされたようだが。エリスはまた別の騎士爵の令息と仲良くなっており、その子と組んでいた。
ソルは今日はいつもと違って華やかなものに仕上げられている。いつもワインレッドかダークレッドだからな。鮮やかなスカーレットのフリルで飾られたドレスは、なるほどソルを“ヒロイン”にしている。
ルナはまたみかん色、黄色を混ぜたふわふわのドレスである。パニエでもふもふしてそう。暑そうだ。
エリスはすっきりしたイメージにしたかったらしく、淡い水色のふわりとした軽そうなシルエットのドレスだ。
自分らで言うとあれだが、4人とも美少女ですよ。
ちなみにクルミは幼馴染の伯爵子息にエスコートされていた。
クルミ、今日は若竹色のドレスである。いつも緑と茶色しか着てないなとは思ってたが、今日も緑です。胸元のエメラルドがまぶしいぜ。
ちょっと踊れ、ということで、俺たちはさっそく誰かと踊ることになった。
誰と踊りますかね。
いや、ゼロでもアウルムでもいいんだぜ?
とか思ってたら、アウルム来たわ。
「お嬢、一曲どうです?」
「ええ、お願いいたしますわ」
カル殿下はロゼをエスコートしてやってきた。
ロゼは薔薇色と淡い桃色(桜色ではない。もっと赤っぽい)の豪奢なドレスである。金糸で刺繍とか、宝石が縫い付けられていたりとか、うわーいくらかかるんですそれ。
ちなみに、最も高いのは赤とか紫のドレスである。染料がなー。逆に青系はそこそこ安い。ビバ青い染料!
ちなみにたまにある設定と同じく、この世界でも毎回女性の着るドレスは違うものがいいって風になってるぜ?
家の財力を見せつけるための場でもあるからな……学園内では関係ない気がするが、実際の社会に出たときのための練習である。
俺はそれを全無視してお気楽に過ごしてるがな。
まあ服の作り変えだってできるし、そんなに苦労はしてない。ソルに手伝ってもらったりアウルムに手伝ってもらってたら向こうが主導権握ったりするけど。
俺とアウルムが躍るために中央へ行く。音楽が始まり、俺たち以外にもセトとアルトリア、リヒトとターニャ、カルとロゼなどのペアが中央に踏み込んできていた。
一緒に踊り始めるが、まあ、俺は男性用も女性用も踊れるので苦ではないし、身体を動かすのは好きだし。
なあ、頼むから俺の事娘を見守る視線で見るのやめないか、アウルム。
「アウルム、お前、子供いたことあんの」
「あるぞ。危うく嫁ごとアルグに葬られそうになったけどな」
「アルグそんなに病んでんのか……」
病みが進行し過ぎてる。
ヤンデレ可愛いとか言ってる方々!
リアルにいたらめっちゃ怖いぞ!
「そういうの、嬉しいか?」
「んー、微妙だわ。いや、殺すなら俺にしろと」
「分かった、お前も相当毒されてんのはよーく分かった」
踊りながらこんな会話してる俺らも大概だけどな。
「はは、女将と同じこと言うのな」
「女将? デルちゃんだっけ?」
「ああ。何かな、もう累計で女将より年上になっちまって、もう母さんなんて呼べなくてさ」
「親子だったんか……」
「養子だけどな」
ちょっと詳しく聞いたら、アウルムの苗字はオーロというそうで、アストの甥っ子だったらしい。
「俺の親父水銀でな」
「金の産出に水銀使うとこあったらしいな」
「それな( ´∀` )」
俺らにこにこして会話に集中してんのにまだステップ踏み間違えないあたり、相当だな。
そんなこと思ってたら、ふいにロゼの紅の髪が見えた。
「!?」
げっ、近い!
ぶつかる!
俺はアウルムと目を合わせ、アウルムがカルと目を合わせた。俺とロゼの目も合った。
丁度曲のクライマックス、この野郎、タイミングよすぎねえ?
俺がアウルムの手を離れ、ロゼがカルの手を離れる。そのままパートナーチェンジして踊り続ける。
「うわーリアルにやったの初めて」
「私も初体験だよ」
苦笑するカルに俺は笑い返す。
カルは少し柔らかく笑った後、真剣な表情で話題を切り出してきた。
「先日の、エリオのことなんだが」
「ええ、あのスライムもエリオ様も、どうかなさいましたか?」
「ああ、あのスライム、ライというそうなんだが。限りなく、精霊に近かったそうだ」
あ、それ知ってる。
まだ知らなかったんだ。
「まぁ……」
「あ、知ってたな」
「あ、バレた」
「無表情だったよ、今」
笑ってごまかす。
カルもそれに乗ってくれたのでよしとする。
「それで?」
「まあ、そのライなんだが、ひどくアウルムを恋しがってるようでね」
アウルムが孵した卵から出てきたわけでもないのになんだそれは。
いや、疑似卵やってた気がするけど。
「で、エリオがアウルムを欲しがり出したと」
「うん。なんかその、すまない」
「いいえ、構いません。差し上げる気は毛頭ありませんが」
俺の親友は売らんぞ。
勘当されても構わん、生き残ってさえいれば戦争には間に合う。
「て、これはエリオ殿下に直接申し上げなくてはなりませんね」
「ああ、頼む。ただ、どうにも、自分の欲目も入っているようでな」
頭を抱えたいだろう、カル。躍ってなければ。
恐らく、エリオは自分に直に掴みかかってきたアウルムに興味を持ったのだろう。
――あルェー?
このイベント、4年後ちゃうんですかい。
エリオとヒロインの出会いがこんな感じだった気がする。
ソルたちに確認取らなくちゃな。
じきに曲が終わり、俺たちはさっと壁際へ引く。無論まだ正式に発表された婚約者の居ないカルは令嬢たちの格好の的なわけで、まあ頑張れとしか言えなかった。はよロゼとの婚約発表してもらえ。
ちなみにアウルムも誘われていて本人が一番驚いていた。俺も声を掛けられ、きっぱりと断ってアウルムを回収しに向かう。
「シド、行きますよ」
「はい、お嬢」
地獄に仏というふうにこっちに来たアウルム。なんでまたこんなことに……あー、ロゼか。ロゼのエスコート完璧に決めたら紳士すぎて群がられたのか。
「たぶん親に半精霊なんバレた……」
「それプラス紳士見せて群がられた、と。パン屑と鳩」
「ひでぇ、その比喩ひでぇ」
割と的確だと思うが。
それかドッグフードと鯉で。
令嬢たちを笑顔で追い払って壁際へ向かい、ついでに料理を取ってきて、ソルたちを見つけた。ソルたちはもう躍ったらしい、俺たちが令嬢たちの相手してる間に。
「あ、何それおいしそう」
「いるかい?」
「大丈夫、自分で取って来るわ」
ソルが戻ってきてから気付いたが、クルミが同じ男性と2回躍っている。
さっきも踊ってた、エスコートしてきた男性と踊ってるってことは、婚約者決まっちゃったかな。
「あー、まずいなぁ」
「どうかしたの?」
「クルミ様の相手ですよ」
俺は改めてクルミに視線を向けた。
楽しげに躍っているクルミと、不愛想な男子。
「あの令息に何か?」
「ルナ情報だけどね、あの人攻略対象らしいわ。シドと同じ世代の」
と、いうことは、イミラブ後、イミラブ2が始まるまでの間の話。
なるほど?
クルミはそこのライバル令嬢に宛てられちまったか?
「名前はユリウス・シーズ」
「シーズ伯爵んとこの令息か」
「ええ」
ルナも彼を攻略したことはないらしいが、なんというのか。
クルミの卵から出てきたの、ラドンだったのよね。
もうね、俺の頭の中ではとある神話がぐるぐるしてるんですわ。
「ヒーローにペルセウスなんて出てこないことを祈ってるわ」
「クルミの名前がゴルゴンとかメドゥーサじゃないだけマシじゃね?」
話のキリがいいのでここまでにします。
話の整合性がとれてない部分が出て来てる気がしてびくびくしてます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




