悪役令嬢と属性判定
日常が書けない←
本日の俺の予定。
午前から午後、魔術の特訓。
夜、登城して王家主催のパーティに参加。
ふははは、だが俺は令嬢のカッコなんぞしないぞ。いや、しろと言われはしたんだが、嫌だ。はっきり言おう、コルセットとか痛すぎるわ。。
現在、魔術の先生待ってる状態。
魔術の先生はアンリエッタという。
現在、9歳。
10歳になるとお披露目パーティがあるので、そっちではどんなカッコするかねえ?
しばらくぼんやりしていたら、スカジ姉上と、それに引っ張られてフレイ兄上、プルトス兄上がやってきた。ちょっと遅れてトールとコレーも。
そして最後に先生がやってきた。
「もう皆さん揃っていますね」
「「「はい」」」
ちなみに、俺とトールとコレーは今日が初授業である。顔合わせは既に終わっている。
普通の貴族の子供は10歳になってからなので、俺たちは若干早い部類に入る。
「今日はロキ様、トール様、コレー様が初めてですので、属性判定をします。その前に、魔力を扱う感覚を覚えていただきます」
アンリエッタ先生はそう言って、ゴロンと、透き通った綺麗な石を俺たちの目の前に落とした。
「先生、これは?」
「それは魔力を通しやすく加工した魔石です。それに魔力を通す訓練をして、属性判定に移ります」
ということで、プルトス兄上、フレイ兄上、スカジ姉上、そしてアンリエッタ先生からいろいろと教わり、四苦八苦しながら魔力を石に通す訓練を始めた。
恐らく一番石と相性が悪いのはトールだとのことで、コレーから始めた。コレーは土属性だということを俺は知っているし、目と髪の色が物語っているが、それでも判定はしなくちゃならない。判定をするというよりは、魔術を扱うための第一歩が、この、魔力操作にあるためだと思う。
練習用の石は小さいものもあって、俺とトールは最初そちらで練習した。なんで大きい方が好まれるかというと、分かりやすいのだ。一度に流し込める魔力が多いため、内部でいろんな反応が楽しめるのだ。
コレーは午前中に始めて、昼食を挟んで一発目でできるようになった。
俺とトールはまだ時間が掛かりそうで、とりあえず一番下の妹に先越されたということでなんか燃え上がった。
「むむむむむっ……!」
「焦らなくてもできるって」
「ロキ姉様はお気楽ですか!」
「ん、お気楽だぞ、お気楽はいいぞ。あ」
石になんか通った、なんか抜けてった感覚があった。
「ロキねーさま、できた?」
「ん、できたっぽい」
俺は小さい練習用の石をそっと置いた。と、俺が手を放した瞬間、石が砕けて砂になってしまった。
「!?」
「ロキねーさますごーい」
コレーはこれがどういうことか分かってて言ってるんだろうか?
俺はいろいろと考えた末に、これはおそらく魔力のキャパオーバーを起こしたのだという考えに行きついた。
「どうなさいました、ロキ様?」
「アンリエッタ先生、お貸しいただいていた石が、砂になって崩れてしまいました」
「まぁ……!」
アンリエッタ先生の表情がぱあっと明るく輝いた。
「ロキ様、流石です……、素晴らしい魔力量ですわ」
「え、えっと、お褒め頂き、ありがとうございます」
男のカッコしておいてこの口調って変だけど、まあいい。
姉様って言われてるしな。
「あっ、できた!」
「お!」
トールもできたらしい。俺はまた石を崩壊させる可能性があるので、トールに先に練習の大きな石を使わせた。
俺まで終わる頃にはもう出発時間の1時間前だった。
「では、属性判定を行います」
この水晶に魔力を流して、と言われてコレー、トール、俺の順に魔力を測定していった。
ちなみに、大きな練習石は俺が砂にしてしまった。
やりたくてやったんじゃないよ、本当に(´・ω・`)
また壊す可能性が高かったため俺が最後。
コレーは土、トールは雷、俺は変化という属性判定をもらった。
「変化?」
「ああ、ロキ様は祖なのですね」
「えっ」
祖、というのは、初めて出てきた魔力属性を持つ人のことなのだけれど。
それが、俺。
まじか。
通常扱っている火、水、土、風は基本四属性、光と闇は双極属性と呼ばれ、それ以外のすべてを希少属性と呼ぶ。
火と水じゃないのか、と思ったけれども、これはおそらくこの名前が関係しているのだろう。
俺はロキ神の名前を賜っている。これは、ロキ神の祝福を受けているのと同じこと。
水は余裕で扱えるだろうな。ロキって霜の巨人だったろ?
でもゲームでは火と水を扱ってたんだよなあ。
まあ、なんとなくトリックスターっていったらロキだし、トリックスターは全部の属性扱えそうなイメージがある。
しかし、変化か。
なんか、某魔法学校物の小説で出てくる、何かを別の形に変える、敵なイメージが強い――あ、これいける?
もしかしていける?
俺、男に変身出来ちゃったりする?
わー!
なんかテンション上がってきた!
わーいわーい。
じゃねえわ、お腹空いたよ。
でもこれたぶんまだ帰してもらえないよな。
俺はアンリエッタ先生を見る。アンリエッタ先生は何か紙を俺たちに渡してきた。
「?」
「今日はここまでにしましょう。魔力を使って疲労が溜まっているはずですから。そして、この紙は魔力を通すと模様が浮かび上がって綺麗なんです。魔力操作の訓練のために毎日続けてください。それと、ロキ様には明後日、私の知人に居る祖に会っていただきます。よろしいですね?」
「はい」
そっか、明日じゃちょっと、パーティで皆どんちゃん騒いでるしな。
ってか、疲れてるのか、と思ってトールとコレーを見やったら、コレーは目を擦っている。眠たそうだ。
「ロキ様、さっそく男性の身体に、なんてことは考えないように」
「あ、はい、いきなりは流石に怖いです」
「やる気だったんですか」
「俺は男ですから」
男の身体になりたいでござる。
ちなみにアンリエッタ先生、父上の同級生で悪友だったらしい。だから父上も俺たちのことを任せようと思ったのかもね。
その場でお開き、そして俺たちは全速力でパーティのための服に着替えに走った.
プルトス兄上は青と白と銀、フレイ兄上は赤と黒と金のなんかカッコいい軍服チックなデザインの服。
スカジ姉上は濃い紫のドレス。しゅっとしたスタイルの分かるやつだ。もうちょっと大人になってから着ようぜ、スカジ姉上。宝石はサファイア。
トールは紫に水色と銀の軍服チックなデザイン。
コレーはふりっふりのフリルで柔らかく装飾された、茶色と緑の落ち着いたデザイン。クルミはストンとしてそうだが、コレーはひらひらが似合ってとても可愛い。
身内贔屓?
うるせえ。
俺は結局、令嬢の服装で行くことになってしまった。
「嫌です、それだけは嫌です!」
「どうしたのロキちゃん」
くっ、このパーティの後確かロキと第2王子の婚約が決まるんだぞ!
――いや、そもそもそれ、アレか。
ロキがごり押ししたとかそういうのなんじゃね?
嘘ですそんなことあるわけないですよね。
婚約ごり押ししてる悪役令嬢はマジで悪役じゃんか。
……俺は諦めた。
「……わかりました、令嬢の格好はします。でも、クルミ様とソル様にお会いしたいのです」
「ええ、分かりました。いいですよね、あなた?」
「ああ、構わないとも」
ウチの両親俺をみっちり甘やかしてくれますわ。
ああ、ゼロも着飾らせなくちゃ。
ゼロは既にイミットの礼装に身を包んでいたので、ウチの家紋を刻んだ純銀のスカーフ留めをつけてやった。
「……これは?」
「所属だけでもわかるようにしといたがいいと思っただけだ」
ゼロがなんか嬉しそうにスカーフ留めに触れた。待てコラ、既にお前の気持ちはロキに向いとるんですかい。
結局俺は黒いドレスに身を包んだ。
すっきりしたやつ。
俺の好みに一番近かったやつだ。
宝石はルビーをつけられそうになったが、そんなもんはいらんと真珠を4つ、その間に黒ガラスの棒状の物を垂らしたデザイン(俺のセンスですよ、ケッ)。これでいいわ。
「控えめになっちゃった」
「これでいいんです、目立ちたくないです」
(ああ、どうして最低限の装飾と薄化粧で済ませているのに美しくなるのかしら、ウチの娘は)
親馬鹿来たる。