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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 前期編
49/154

第3王子来る

あと1話投稿します。

赤い髪、黄色い瞳、なんでこの人がここに居るのという驚愕に包まれた赤毛のその人、エリオ・シード・リガルディア。

かの第3王子である。


攻略対象としての彼の情報は、まず、俺様系であること、我がままであること、兄とその婚約者が優秀すぎてひねていることが上げられる。

自分を見てほしいから暴力沙汰にすぐ発展する。

カルの愛情届いてない。


以上。


ちなみにこいつのシナリオを書いた担当者曰く、「好きな子ほど虐めたいんですよ」。

やめろエリオ可哀そう、婚約者本人さえひねちゃうような力持ってるロキマジヤバスとか言ってたあの頃に戻りたい。


俺がロキですもの。

ちなみに、王子が来る関係上今日は令嬢姿である。皆の前で変身魔術使ったら魔物たちから進化したと思われた。違うわい。


雨の日を狙ってくるエリオ殿下、ニクい。俺らが絶対籠ってると分かってて来るのだから。


ちなみに俺はほとんど会話したことが無い。


連れてくるように言っていたのでスライムはちゃんといるはずなのだが、どこだろう。

見当たりませんぞ、カルよ。


「今日はエリオ殿下が見学したいと仰られましたので、魔物たちとの触れ合いを見学していただきましょう」


もう全員卵は孵したので、ベビーモンスターたちをよちよちしてるだけである。

まあ、スーたちいないんだけどな。ナイトばっかり構ってたらスーとミィがひねちゃう。


「エリオ・シード・リガルディアだ」


護衛たちは教室の後ろで待機。

エリオ殿下はさっそくカル殿下に跳びかかっていった。


「何を見ればよいのかさっぱりです、兄上」

「何のための家庭教師だよ……」


年相応の反応するカルかわええとか言ってる男爵令嬢なウチの姉貴がスミマセン。


ゼロとアウルムは俺の後ろで隠れるようにベビドラたちを抱いている。ベビードラゴン、略してベビドラ。


おや、エリオ殿下のポケットから白い箱が覗いている。小っちゃい箱だが、動いているような気がする。


「エリオ殿下」

「なんだ、フォンブラウ令嬢」

「その、白い箱は何でしょうか?」


エリオ殿下は少し眉根を寄せて不機嫌をあらわにする。


「俺の魔物だ」


スライムちゃんですか。

箱に詰めて持って来たんですか。

可哀そうに。


「見せていただいても?」

「……好きにしろ」


箱をポイと投げやられ、嘘だろ、と思いつつキャッチする。

箱をよく見て仰天した。


うわ、うわありえねえ、ロックしてやがる、これスライムちゃん大丈夫か!?


「なッ、」


こちらを見たアウルムが真っ青になっていた。


「ちょっとそれ寄越せ!」

「はい」


大人しく渡すと、アウルムはすぐに舌打ちをした。


「くそ、火属性だ」

「私がやります」


解除の術式を見破ることはできても、どうしても解けないものってのは存在するもので、金属系だと土属性の中でも特に火に弱くなってしまう。

ここは水を使える俺が行くしかない。アレクセイでもいいけど。


アウルムは立ち上がってエリオに掴みかかった。

そっちの行動に皆が驚いた。


「無礼者!」

「うるせぇクソガキ! 水属性の弱い魔物を閉じ込めておいて何様のつもりだ!」


誰か、アウルム劇場を止めろ。

俺は第一段階を解除し、第二段階も解除した。

5つも掛けてやがる、どんだけ破られたくなかったんだろ。


でも、これで分かるのは、エリオは魔術の才能は別格、ということだ。

火属性は細かい調節が非常に難しく、それが扱えれば相当なものである。

ロゼが丁度それだった。


ルナ曰く、『イミラブエンハンス』という、イミラブのネットバージョンで正式にキャラクターとして名を明かされたロゼは別名“魅せる者”とあだ名されており、魔術で作り上げた炎を花の様に散らしたり動物のように周囲を舞わせたりすることができるのだ。

イミラブでは詳しく語られなかったが、エリオはそれに近い細かい操作ができる子だったようだ。


「たかが魔物であろう!」

「魔物だって生きてんだよ、頑張って生まれてきたのになんで孵してくれた奴にいきなり閉じ込められなきゃなんねーんだっ!」

「!」


カルが眉根を潜めた。

周りが、そこまでにしとけ、というのも聞かずにアウルムはまだエリオ殿下にくってかかる。


カルが問いかけた。


「エリオ、確かに魔物は魔物であって、我々の生活の障害になることもある、けれど、共生していくことだってできる。どうして閉じ込めたりしたんだ」

「……兄上に分かるものか。フォンブラウ嬢にだって分かるわけがない! 最初からペガサスやスレイプニルなんて神獣を孵したあなた方に、俺の惨めさが分かるか!!」


よし。全部外した。

箱の中にいたのは、ぷるっぷるの、どす黒いスライムだった。


「……お前、ずいぶんと長くここに居たんだな」


ぷるりとスライムが揺れる。あ、こいつ顔あるじゃん、可愛い。


「苦しかったなー。ちょっと待ってろ」


スライムをちょっと撫でてやって、俺はエリスとルナを呼ぶ。


「エリス、ルナ、あなた方、スライムには触れまして?」

「制服汚れるかな?」

「濡れるだけです」

「はーい」


クリーニング代いろいろと考えてる、意外とお金にがめついエリスちゃんだ。

俺の属性は水の中でも氷が強めだ。

これらは今の弱り切ったスライムには辛い。

来てくれたエリスにスライムを任せると、俺はアウルムの元へ向かう。


「アウルム、そこまでです」

「……、お嬢……」

「エリオ殿下も、私の従者が失礼いたしました」

「チッ……きちんと躾けておけ」


エリオの言葉と表情から見るに、あのスライム自体を嫌っているわけではないのは明らかだ。さっきの激昂もそうだしな。

気付いているから案外早くアウルムも止まったのだろうし。

そも、転生経験上このパターンがあった可能性もある。


「でも、エリオ殿下。魔物をあのように扱えば、皆魔獣になってしまいますわ」


あのスライムって、スライム・マナといって、エレメントにかなり近い種類なのだ。

日光浴するやつと月光浴をするやつがいる。


「ところで、あのスライム、何色が好きでした?」

「……え? 色?」

「エリオ殿下も、あの子が生まれてすぐに閉じ込めたわけではないでしょう。あの子は日光が好きか、月光が好きか、という話です。今日は雨ですから、近くで色を使って疑似浄化でもしてあげなくては、ヘドロ化しますわよ」


既に真っ黒だしな。


「え、と……赤とか、黄色」

「日光浴タイプか」

「光属性3人じゃ足りないぞ」

「火属性頑張ってみるか?」

「今火はダメだろ、めっちゃ弱ってるぞ」


クラスの皆に話が飛び火した。カルに頭を撫でられて、エリオ殿下は悔しそうに俯いた。


「ちょっと貸してくれ」

「アウルム?」


アウルムが、箱を手にスライムへ近付いて行く。

まさかそれに入れる気か。


「入れちゃうの!?」

「俺が長時間直に触れるとヤバいからな」


アウルムはそう言って箱に入るようスライムに言って摘み上げ、箱に入れた。

大人しく入るスライム可愛い。

そして教卓に背中を預けて卵を抱く体勢と同じような感じで構えたので、何するのかと不安になった。





ゆっくり時間が流れた気がした。箱の中身のスライムが超元気になって出てきたのは、それから30分くらい後で、アウルムは笑って「よく頑張ったな」と声を掛けていた。


スライムは鮮やかな黄緑色がベースで、黄色と青に色を変えながら俺たちの間をずっと這い回っていた。

ちなみに、跳ねることもできるようだ。


授業終了時に、ハインドフット教授がこう言った。


「皆さん、アウルム君が今日見せた力は、周りの大人、特に錬金術を齧っている人には伝えないでください。いいですね」

「「「?」」」

「「「はーい?」」」


皆で疑問符を並べつつ解散となった。

エリオ殿下はひとまず俺たちの魔物に対する反応に満足したらしく、俺たちに今度個人的に遊びに来る予約を入れられてしまった。


好きなキャラを虐めたいのは作者自身です←オイ

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