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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年生 前期編
38/154

散歩に行こう

本日はあと1話投稿して終わります('ω')

そういえば、神々の名前を持っている奴とばっかり俺は親しくなっている気がするな、と、そんなことを考えていた。


ソル、ルナ、エリス、セト、トールやスカジ姉上、プルトス兄上、フレイ兄上、コレーもそうだが、彼らも俺も、神々の名を持っている。


神々の名というのは、特殊な条件を満たした人間のみが名付けられることを許されるもので、名を冠された時、その人間には“印章”が付与される。

これは、かつていたという神々の眷属(ファミリア)の証明の慣れの果てという形である。


神々の眷属が地上に溢れていた時代があったとは実に神秘的な響きを持っているとカルは言うが、俺はよくわからない。


――話を戻すと、神々の印章というのは、神々の加護を付与するための子機みたいなものである。神々が与える加護はもはや現在ほとんど働かないものの、全く無意味であるというほどに弱体化してはいないのだ。


それは例えば、トールのように雷に耐性が高くなるであるとか、俺だと日の方が強く出る癖に水、特に氷に適性が高かったりとか、そう言った形で薄っすら表出する。


体内にあるが、取り出せば死に直結するというちょっと危ないものだ。

そんなことをつらつらと考えてぼんやりと皆を待っていた。





魔物宿舎の前で待ち合わせをしていた。ルナも替えの制服でやってきた。


「待った?」

「んにゃ」


皆で既に待ってたとか、そんなことは言いません。何より、カルはまだ来ていない。

俺がロゼを探し、ロゼに仲介を頼んでカルも誘ったので、来るとは言ってくれたのだが、御供がうるさいようである。


セト以外に御供居たんか……。


ちなみに、というか恐らく確定事項だが、エリスのあれはリヒトとのコンタクトをどこかで取ってしまったために起きたものだろう。でもまあ、世界が滅亡しない程度になら幸せになってもいいのよ?


「さて。行くか」

「「「おー!」」」


転移コードを使う許可証はちゃんと貰ったので、このまま平島へ突入だ。

スーとハクを繋いでいるロープを解いて、籠に入れられていたメイとミィと外に出す。


「みぃぃぃ!」

「――! ――!」


メイには声がないのでどうしようもない。何言ってるか全然わかんないけど狭いところは嫌、って感じだろうか。

俺にめっちゃすり寄ってくる。可愛い。

卵孵したのはアウルムのはずだが。


「こんなに懐いているのか……」

「卵から可愛がってるからな~」


転移装置のところまでいくと、警備の騎士が待っていた。

許可証を見せると、「鐘が鳴ったら戻って来なさい」と言われて送り出された。


装置に刻まれているコードは結構大規模だ。

大きめの魔石が光り、俺たちが真ん中に立つとコードに魔力が流れ、光り出した。


「スゲーな」

「こんな大規模なものがあったなんてな」

「戦争時にはここは要塞になるからな」

「なる」


こんくらい上流貴族なら皆知ってるけどな。

エリスら男爵家は知らなかったようである。まあしゃーないけどソルとルナは知ってたみたいだ。流石、武で取り立てられた家だっただけはあるってことだろう。


カルに御供はついて来なかったようだ。セトに任せることにしたらしい。

さて。

目を閉じた。すると、エレベーターで下がっていくときの感覚の直後、足元の感覚が消え、再び足に感覚が戻ったので目を開ける。


「……おー」

「うぐ……」

「エレベーターみたいだったわね」

「ホントそれ」


コードから抜け出すと、ぱか、と蹄の音。スーが走り出したようだ。


「スー、落ちるなよ!」

「なー」


なー、ってのは最近スーが覚えた音である。どうやって喋ってるのかはよくわからんが、最近念話みたいなのを使い始めているので、たぶん俺たちの会話を聞いて人間の言葉を覚えようとしているのだろうけれど。


「ハク、行って来い」

「ぴぃ」


ハクが飛び立つ。


「ここの芝生に寝っ転がったら気持ちよさそうだなァ」

「寝っ転がってみるか?」

「だな」


俺とアウルムは少し開けたところでごろっと芝生に寝転ぶ。卵は俺の腹の上。

コンゴウとメイは変わらずアウルムから離れようとしない。ミィも俺から離れやしない。


「皆も寝転んでみる?」

「はーい」

「さんせー」

「ふむ」

「よっし昼寝じゃー」


皆中央で頭を集める形で円状になって、空を見上げる。白い雲が流れていくのが見えた。風が気持ちいい。


そういや、ふわりと匂う藤の香り。眠たくなっちまうのはきっと、アウルムの魔力の所為だろう。

よく考えてみりゃ、何で金目なのに光属性だって思わなかったんだろう。

光、とは言えないのかもしれない。


光、というより、太陽。

日光。

そんな、限定的なモノ。


「……スゲー眠くなってきた……」

「俺も……」

「すやぁ……」


ふふ、と小さく笑ったソルは卵をしっかりと抱えている。


「卵に声掛けると、聞いてくれてんの、分かるぜ」

「ホント?」

「ああ」


胸にコンゴウを乗っけて笑っているアウルムを見ていると、ほんとこいつ、幼稚園の先生になりたいって言ってた時期あったなと思いながら、眠気に負けて目を閉じる。

銀色の俺の手の中の卵にちょっと気恥ずかしいが声を掛けてみる。


「待ってるからな。いつ出て来てもいいんだぞ」





ふと、目を開けた。

ああ、明羅の顔がある。

金色の優しい瞳が俺を映していて、ああなるほどと思う。


これは。


この目は。


最初に見たら、たまらない。


「おはよう、涼」

「……はよ、明羅」


ああ、俺なんでこいつの――おいちょっと待てコラ。


「待てアウルム、なぜ俺はお前の膝で寝てんだオイ」

「いや、皆こうだわ」

「?」


周りを見たら、なんぞ、皆揃いも揃ってこいつに抱き着いてる。


「……聖母」

「そこに直れ」


嫌だ雷落ちるお(;^ω^)


とりあえず身体を起こすと、皆もゆっくりと覚醒し始めた。

俺の腹の上で寝ていたらしいミィが転がり落ちそうになって慌てた。


「ん……」

「あら……?」

「ふわぁー……」


そして皆気付く。

なぜ自分はアウルムに抱き着いていたのか、と。


そしてみんな納得するのだ。


「「「溢れる母性」」」

「お前ら全員そこに直れええええっ!!!」


皆で揃って同じ轍を踏みました( ´∀` )


「なんか卵大きくなってる~」

「この卵めっちゃ重たい」


俺たちの卵は皆大きくなっている。てか、コツコツ音がするんですけど。


「どうした、ロキ」

「いや、コツコツ音がするなと思ってさ」

「ほうほう」


もうじき孵るな、というのは何となくわかる。座ってしっかり卵を抱きしめていると、パキパキと音がしだした。


「おお」

「あー、ロキのが先に孵っちゃった」


パキン、と大きな音がして、中から黒銀のドラゴンが現れた。羽ちっさ。手足が爪だけ、アオダイショウかテメーは。

鉄色というべきだろうか。

翠っぽい、綺麗な色。


「え、なんか青い?」

「長くねこれ」

「あー……今回はお前か……」


どうやら、アウルムは知っているようだ。


「アウルム、こいつなんか知ってんのか」

「おう、知ってるぜ。でも、種類名聞いたからって、捨てんなよ。捨てたら絶交だかんな」

「おう」


気合を入れるように息を吸ったアウルムは、実に綺麗な音でその名を紡いだ。


「――ヨルムンガンド」


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」


「なんか言え」

「おう」


予想?

うん、してたしてた。

そしてそれがそのまま答えで出てくるとビビる。

それを今実感したわ。


「ヨルムンガンド、だと? 神獣の類ではないのか」

「あー、そういうことか」


カルの問いに俺は今全部理解したわ。

うん、そういうことだよねきっと。


「?」

「えっとな、俺らのいた世界では、スレイプニルもヨルムンガンドも、ロキ神の子供ってことになってんだよ。だから、たぶんそのせいだ」

「……なんと」


カルとセトが驚愕に目を見開いていた。


「つーことはあれか。俺は次はフェンリルとかになっちゃうわけか」

「人型の女の子が出たらヘルで決まりだな」

「ふはははは、追放なんてさせねーぜ!! まとめてうちの子だ!」

「その意気やよし、だがバルドルになる気はねーから安心しろ!」

「魔物より頑丈じゃねお前」

「ついでに宿り木も効かねえわ」


ヨルムンガンド。ヨルでよくね。ひねれって?


「夜? ナイト?」

「じゃあKつけてknight」

「騎士(笑)」


ということで、ナイト・ヨルムンガンドに決定。


セトの卵も割れて、中からは鋼竜の幼竜が出てきた。


「鋼竜だ」

「鱗がアホみたいに硬くて鋭利な刃になるってあれか」


四足歩行なんだなー。

ぐるぐる言ってて可愛かったので撫でてやる。

名前はコウに決定。


「さ、散歩するかー」

「おー」


皆でワイワイとそのまま歩き始める。俺たちが寝ている間に遠くへ行ったスーには途中で会えた。


「でかなった」

「進化してるな。こりゃ綺麗な黒だ」


おめでとさん、とアウルムが言うと、スーは嬉しそうに目を細める。俺はスーを撫でてやる。


「進化してくれたのか。ありがとな、スー」


ホレ、きょうだいもできたぞ、とナイトを見せると、少し誇らしげに息を吐いた。ふんす。

スーは130センチくらいになっていた。でかくなり過ぎだと思ったが、実際のスレイプニルは体高が2メートルを超える超巨大戦馬なのだ。


「ねえ」

「?」

「あれ、何?」


ルナの言葉に俺たちはルナの示した方を見た。

そこには、見慣れない巣があった。


「……やベーな」

「ああ、やばいな」


俺とアウルムはすぐにこの巣が何の巣なのか理解してしまった。そして、どうしてこんなに離れたところでスーが止まっているのかにも理解が及んだ。


「向こうを鎮められるか?」

「俺鎮める力なんて持ってねーぜ」

「だよな。スー、戻ろう。ごめんな、怖かったよな」


ギャアギャアと頭上で騒ぐ声。

まったく、スーはとんだとばっちりである。


「どういうこと?」

「グリフォンの巣だ。スーは雄だし狙われるに決まってんじゃん」

「ま、ただの馬じゃないってのだけは向こうも理解してるようだが」

「でも、雌雄でいるの珍しいな」


見上げてみれば身体の大きい雌、それよりは小さい雄がゆっくりと降りてくる。

あ、もしかして。


「……子育て期間中か?」


カルが俺の結論と同じことを言った。


「卵を抱えているんだろうな」

「つーことは、即時撤退あるのみだな」

「ゆっくり戻ればいい。先生たちに知らせるか?」

「それが良かろう。ここをしばらく閉鎖してもらおう」


グリフォンは希少な魔物だ。グリフォンはグリフォンの卵からしか生まれない。そして乱獲されるわけですね。

でもプライドが高いから卵まで割って死ぬ親グリフォンが多い。


俺たちがもと来た道を戻っていくと、途中で同級生たちとすれ違った。大人が3名いるが、清掃服――何故清掃服があるのかなぞ知らん。

生徒は上着に付けている布の色が青なので同学年だ。

俺たちは青なので。


「お、もう帰るのか」

「ああ、先客が居たから帰るよ。ん?」


セトの知り合いだったようだ。セトは眉根を潜めた。


「どうした?」

「……いや、まさか」

「おい待てよ」


セトから事情を聴く前にアウルムが声を上げた。ということは。


「なんでわざわざそんなもん持って来た」


解析を掛けると、ボロボロ持ってやがる。大人の方がな。


――ディオニュソスとアポロンの印章を。


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