第2王子再来
書き溜めた分をチマチマ手直ししつつ投稿してゆきます。
今回は2話です。よろしくお願いします。
テラスに行ったら沢山の人が集まっていて、俺たちはさてどうしたものかと腕を組んで考え込む羽目になった。
何があったのかというと、まあごく簡単に説明すれば、第2王子がテラスでお茶をしていたらしい。
「見つかる前に逃げるぞ」
「おう」
俺とアウルムはすぐに逃げるために踵を返そうとして、誰かに肩を掴まれた。
「?」
「おいおいスズ、どこへ行く気だよ」
「……スズ、こいつ誰」
俺が振り返ると、俺の肩に手を置いているのは――てめーかセト!
「セト……」
「セーリスの令嬢たちが居たんでな、お前も来ると思っていたよ」
それで、と彼は言った。
「こっちの黒髪金目はどちら様?」
「こいつはアウルム。転生者、平民で合ってるはずだ」
たまに貴族の礼を知っていたりするので何とも言えない。
「そうか。俺はセト・バルフォット。よろしく」
「アウルムっス」
んじゃこれで、と言って立ち去ろうとしたらそのまま引き戻される。
「どこ行く気だよ」
「そんな分かりきったこと聞かないでくれよ。ここじゃねえどこかだ」
「殿下がロキ嬢を探してたぞ」
「それは俺じゃない」
「自分で二役やるって言ったじゃねーか」
くそ、なんでこいつに言ってしまったんだろう!
アウルムの方を見ると、仕方ねえなって顔をしていた。
ありがたい。参加してくれるらしい。
「アウルムも一緒なら行く」
「よし」
セトに引っ張られて俺とアウルムは大人しく第2王子カルのところへ顔を出したのだった。
「見えてたぞ」
「ちくしょー……なんかすっげえめんどくせえ教官に捕まった気分だぜ……」
「何でだよ」
「殿下が殿下だから」
「それはどうしようもないな(笑)」
ゆっくりとお茶してるカル殿下、4人席かコノヤロウ。
「セーリスの令嬢たちも見えたが、集まろうとしていたのか」
「ええ、まあ」
答えながら席に着くと、アウルムがさっさと茶を淹れてくれた。ゼロも勝手に出て来て椅子かっぱらってきてしまった。まあ仕方ない。イミットですから。
「ゼロ、久しぶりだな」
「ああ」
ゼロは相変わらず俺以外とあんまり喋ってるとこ見たことないな。こないだ盛大にアウルムと喧嘩っぽいことしたのには驚いたが。
そしてアウルム超強かった。半精霊が強いというより、アウルムが単体でアホみたいな強さをしているらしい。アストから聞いた。
アストによると、アウルムは金属の中でも特に“金”を持ち合わせている。銀河の方は“銀”らしい。
とにかく金属にとっての天敵である酸に強いことから、ドラゴンでもそうアウルムを倒すことはできないとか。勝ちに拘らなければ負けることは決して無いという。時間稼ぎに特化していると言っていた。
で、金属であるという特性は結果的に、防御に長けているという状況を作り出す。
さっきのシェロブの件然り、ということだ。
つかマジでこっち見てる人かなりいるんですけど。
困るな、本当に。
「目立ってるんですけど」
「そりゃお前ら美形が揃えばこうなんだろ」
「黒髪2人だしな」
「嫌厭されることはあったがよォ」
ロキがベースなだけあってカッコいい顔になってしまうのがスズである。お前らホントに13歳かって言いたくなるような色気振りまいてんのは王子だけで十分です。
「私は髪の色で決めつけるわけではないが、属性は?」
「ん」
カル殿下の問いかけには応えず、アウルムは首輪を示した。
「……そうか。スズ、彼は大事にするようにとロキに伝えておいてくれ」
「はいはい」
別人として振る舞わにゃならんからなー、もう今更感すげーけど、カルは体裁を守る方向で行く気らしい。
「まあ、いろいろ言わなくても、既に結構大事にされてる自覚ありますし。拾われてよかったっス」
お前連れてきたのデルちゃんたちだけどな!
ソルたちが近くの席に座った。
「ちょいと行ってくらァ」
「おう。あ、これ」
「ん」
セーリス男爵家の同郷はアウルムしかいないので、アウルムはわざわざソルとルナに茶を淹れに行ったりして何かと気に掛けてくれるので助かる。
「……優秀だな、彼は」
「んー、これ言っていいのかわかんないですが。彼、かなりの回数転生した記憶があるようです。とりあえず口外したら死ねお前ら」
「いきなりそんな呪詛ぶつけんなコラ。掛かったじゃねーか」
魔術防御が低いセトが悪い。カルには撥ね返されたし。
「ついうっかりにしちゃひでえネタバラシだな、スズ」
「悪いな、アウ」
「詳しくは聞かないよ」
笑ったカルはそのままちゃんと自己紹介をして、友達になってくれ、と言い出した。
まあ、いろんな派閥に顔が利くようになっておきたいってのはあるだろうなあ。でも、それで平民を選ぶのはどうよ。
「スズ、アウルム、ゼロ、私たちはこの辺で失礼するよ。呼び止めて悪かった」
「いえいえ。また何かあったらゆっくりと話しましょう」
「ああ」
そういやいつの間にかカルの一人称が私になってら。
アウルムは軽く会釈しただけだが、まあ礼儀がなってないって言われるのは時間の問題だろう。俺が居なけりゃあの2人の目に留まることもなかったわけだし、悪いことしたな。
♢
殿下たちが居なくなったことで周囲にいたうっとおしい人だかりが消えてくれて助かった。俺とアウルムとゼロはそのままソルたちのいる方へ移動する。
「おかー」
「ただまー」
出かけていたわけじゃないんですがね。
ソルのティーカップの中身がほとんどないことに気付いたアウルムが茶を淹れる支度を始めた。今俺たち全員私服……あれ、さっき殿下たち制服だったな?
なんかあるんかな。
違和感なさ過ぎた――なんも気付かなかったわ。
「ホイ、お嬢」
「あら、ありがと」
茶を淹れたアウルムも席に着いたところで、さっそくクルミがノートを取り出す。
「スズ、これ見て」
「はい」
見せられたノートのページには、ルナが伝えたらしい情報がびっしり並んでいた。
イミラブのネットゲームはほどなくしてちゃんと完結していたようだが、詳細なイミドラの後を追いかけていくゲームもあったようである。
「……アウルム」
「ん?」
「お前、親からは何て呼ばれてた」
「……わかってんじゃねーの? シドだよ」
やっぱりそうだよな。
最初からアウルムを名乗っているのかと思っていたが、どうも違うようだ。
“――シドはルートが3つある。第1ルート、ヒロインが王宮関係の人間を選んだ場合、死徒側につくけれど、追撃には参加してこない”
これは分かってた、イミドラにもこのルートあった。
つまり、イミドラ側も関わるイベント。
シドは死徒の最終決戦前に唐突に湧いて出るテイマーだったはずだ。
テイマー、確かに今も片鱗はあるわな。
でも結局敵なんですよねー。
“――第2ルート、王族以外を選んだ場合。味方側につく”
へー。トゥルーエンドはこれか。
イミドラのトゥルーエンドではとりあえず仲間だしな。
“――第3ルート、逆ハーレム。味方になった後裏切る。けど、乗っ取られてたっぽい。解決法なし、殺すしかない”
「うお、あらためて見ると俺の扱いひっでえ( ´∀` )」
「気楽だなお前……」
「こんだけ生きるともう流れていくのが一番気楽よ」
やたら実感の篭もった声でそう言われても困る、俺たちの前世の記憶あり転生はまだ1度目なのだから。
ノートを後ろから覗き込んでいたアウルムは俺の頭を撫でる。
「ま、お前らが足搔くほど俺の運命ってやつも狂ってくんだろ? なるようになってやるさ」
「お前そんなこと言いつつ平気でこっち庇いに来るから油断ならん」
「えー?」
「事故の時お前俺の事即死させに来たろ」
皆がギョッとしてアウルムを見た。
あ、バレた?
みたいな顔してやがる。
まあ、俺も今思い出したんだけどな。
「ちょ、なにそれ」
「俺とアキラ即死だったっぽいじゃん? あれ、こいつが少し俺たちのこと突き飛ばしたせいだぞ」
「え」
「だってあの位置じゃ頭かち割って痛い痛いって言いながら死ぬか即死かの2択じゃん、自動車ってこえーな」
俺とアウルム――というか、明羅の間には勲がいた。だからうまく届かない、庇えない、よし即死ルートだ、って考えだろう。
「まー痛くはなかったけど」
「ちなみに俺あの後しばらく引きずられたぞ」
「やめろその報告聞きたくねー」
んじゃ、この話は終わりだな、とアウルムは言って屈託なく笑った。
「あんま湿気た顔すんなよ、ダチ公。どうせなるようにしかならねえ。どうせなら、悩むよりも、やりたいように変えていきゃいい。別に内政チート目指してるわけじゃあるまいし!」
それもそうか、と、その言葉につられたのはまあ、仕方ないと思う。
こいつは人様の心情を読むのが上手くて実に困ったものだ。
書き溜めていて伏線の回収がとても遅いことに気が付きましたが、気にせず読んでください。スパン長すぎて忘れてるものは――放置で←嘘です全部回収頑張ります




